夕食は肉と魚〜〜!
『おおい、そろそろ戻るから夕飯よろしくな〜〜!』
『よろしくお願いしま〜〜す!』
弁当の在庫がかなり出来たところで、タイミングよくハスフェルとギイから念話が届いた。
『おう、お疲れさん。じゃあリビング集合な』
『りょーかい。それじゃあよろしくな』
笑ったハスフェルの念話が途切れ、二人の気配も途切れる。
「さてと、それじゃあ今夜は何にしてやろうかなあ」
この前まとめて焼いた味付け肉が大量にあるから、あれをメインにしてご飯とパン、それからいつものお惣菜と味噌汁とスープがあれば良いかな。デザートは、まだまだ買い置きが大量にあるから、好きにとって貰えばいいよな。
夕食が若干ワンパターンになっているが、この大人数なんだからそこは許してもらおう。
苦笑いしてそう考えた俺は、リビングへ向かおうとして背後から無言で飛びついてきた子猫達に、豪快に押し倒されたよ。
「こら、後ろからは危ないから飛びつき禁止〜〜!」
即座に広がって守ってくれたスライム達に顔面から突っ込んだ俺は、苦笑いしてそう言いながら手をついて起き上がり、俺の背中にのしかかってご機嫌で喉を鳴らす子猫達を順番に押し倒して揉みくちゃにしてやったよ。
もちろん、本気で抵抗されたら今の俺ではもう子猫達には到底敵わない。だけどご機嫌で喉を鳴らす子猫達は、一切抵抗を見せずに押し倒されて喜んでいたよ。
ああ、この腹毛のもふもふの良きこと!
「じゃあ、リビングへ行くからお前らも一緒においで。ああ、助けてくれてありがとうな」
吸い込まれそうになるのを必死で我慢して起き上がったところで、助けてくれたスライムベッドにもお礼を言い、子猫達だけじゃあなくて留守番組の子達も全員連れてリビングへ向かった。
広い廊下を並んで歩いていると、列の先頭を歩く子猫達の尻尾は揃ってピンと立てられていて、若干曲がった尻尾の先だけがゆらゆらと揺れている。
もう最高に可愛い後ろ姿を眺めながら、ゆっくりとリビングへ向かったのだった。
リビングに到着したところで、手早くサクラからこの前焼いた味付け肉を大量に取り出して机の上に並べていく。
それから、おかずのバリエーションも必要だろうから岩豚トンカツや唐揚げ、少し残っていたジビエハンバーグなんかも出しておく。
野菜サラダや付け合わせになりそうな煮物、だし巻き卵や揚げ出し豆腐なんかもたっぷりと取り出して並べ、わかめと豆腐のお味噌汁と野菜スープとじゃがいものポタージュスープの入った鍋も取り出しておく。
「後はまあ、ご飯とパンがあれば大丈夫かな。あ、久々に西京焼きが食べたいから、ちょっと焼いてこよう」
肉ばかりだと俺の胃が負けそうなので、俺の大好きな西京漬けのお魚をリビング横のキッチンで手早く焼き始めた。
「ただいま〜〜!」
「ただいま〜〜! お腹空きました〜〜!」
その時、賑やかな笑い声と共にシルヴァとグレイ達が駆け込んでくる。
「おかえり。魚を焼いているから、ちょっとだけ待っててくれよな」
二つのフライパンいっぱいに並べた西京焼きを弱火で焼きつつ、キッチンから手を振る。
「わあ、いい香り。それは何?」
キッチンへ入ってきたシルヴァとグレイの二人に興味津々でフライパンの中を覗き込まれた俺は、無言でもうワンセットコンロとフライパンを取り出して西京焼きの追加を焼き始めたのだった。
「手伝うよ。さすがにフライパン三つは一人で焼くのは無理そうだ」
「ああ、それなら俺も手伝いますよ。焦がさないように焼けばいいんですよね」
笑ったレオとアーケル君が手伝いに来てくれたので、フライパンで西京焼きを焼く時の注意事項、触り過ぎない事を伝えておまかせしておく。
まあ、この二人なら焼くくらいは余裕だからね。
三人揃って無事に綺麗に焼き上がったところで、まとめて大皿に盛り付けてからリビングへ戻る。
「お待たせ。それじゃ後はお好きにどうぞ!」
いつもの、俺が楽するパターンだ。
嬉々としてお肉に群がる皆を尻目に、俺は西京焼きの大きめのを二切れお皿に取り、あとはだし巻き卵と揚げ出し豆腐もとり、お惣菜は適当に色々取り分けて行った。それからご飯と味噌汁な。
もちろん。シャムエル様用にお肉もがっつり取ってあるよ。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
俺が料理を手に席へ戻ると、それを見るなりご機嫌で横っ飛びステップを踏みつつ、右手に持ったお皿を何度も上げて若干不思議なステップを踏むシャムエル様。
そして当然のように横に並んで即座に踊りを完コピするカリディア。
ううん、相変わらずこっちも凄いよ。
踊り終えたカリディアには激うまブドウを一粒渡してやり、シャムエル様のお皿を受け取る。
「で、何がいるの?」
「お肉メインでいろいろください! その揚げ出し豆腐はこっちにお願いします!」
小ぶりのお椀まで渡されて、苦笑いしつつご希望のお肉を多めに取り分けてやった。
いらないと言われると思っていた西京焼きも、結局丸ごと一切れ取られてしまい若干涙目になった俺は、即座に立ちあがってもう一切れ取りに行ったよ。
うん、肉と一緒に出すと魚の売れ行きは少なめだ。よし、これからもこの方法でいこう!
肉に比べるとまだまだ残っている西京焼きを見て、密かにそんな事を考えていた俺だったよ。