買い出しと大急ぎの帰宅!
「さて、気を取り直して買い出しだ買い出し!」
なんだか色々と消耗したシャムエル様との会話の後、俺は気分を変えるように大きな声でそう言い、そのままマックスを進ませていつもの買い出しをしているお店が並ぶ通りへ出る。
そこでまずパン屋さんを数件まわって色々と買い込み、空いていた木箱を満タンにする。それから、ミルクやチーズなどの乳製品や卵なども見つけ次第色々と買い込んでいった。
「ああ、そうだ! ここにいる間にもう一回くらい、いろんな肉をまとめて捌いてもらうか。まだ在庫はあるけど、大量に仕込んでいるから減るのも早いもんなあ」
お肉屋さんで普通の牛肉や豚肉を買い込みながら、ふと思いついてそう呟く。
「それじゃあもう一回ギルドへ行って、まとめて肉を捌いてもらうようにお願いしておこう。鶏肉系以外は全部、熟成期間が必要だもんな」
うんうんと頷き、もう一回冒険者ギルドへ向かった。
もちろん途中にいい店があれば、立ち寄ってガッツリ買い込んだよ。
「よしよし。新玉ねぎも手に入ったし、戻ったら何からやろうかねえ」
そんな事を呟きながら、冒険者ギルドへ戻った。
「おう、どうした? 忘れ物か?」
ちょうど受付のカウンターの奥にいたギルドマスターのガンスさんが、俺に気づいてまた出てきてくれた。
「ああ、何度もすみません。肉の在庫が減ってきているんで、まとめてお願いしようかと思って」
アクア達の入った鞄を手にそう言うと、にっこり笑ったガンスさんに、またさっきの部屋へ連れて行かれた。
まあ、さっきと違うのは何人ものスタッフさんが、その後を追ってついて来た事だよ。
「ええと、それじゃあ順番に出しますね」
勢揃いして待ち構えるスタッフさん達に若干ビビりつつ、ハイランドチキンとグラスランドチキンに始まり、グラスランドブラウンブルと、ブラウンボア、もちろん岩豚もたっぷりと渡しておく。
「急ぎませんので、順番にお願いします。ちょくちょく街へ来ますので、捌き終わった分から順番に引き取ります。ああ、そうだ。これをお渡ししておきますので、熟成の終わった肉はここへ入れておいてください」
そう言って、高性能の時間遅延の性能付きの収納袋を全部で十個渡しておいた。これだけあれば、種類ごとに入れてもらえるだろうからな。
「おお、さすがは上位冒険者だなあ。景気良くて羨ましいよ」
収納袋を手にしたスタッフさんが、丁寧に確認して預かり表を記入しながらそう言って笑っている。
「あはは、仲間達と従魔達のおかげで、良い生活させてもらってますよ」
「いいじゃあないか。そのお仲間も従魔達も、全部ケンさんがケンさんだからこそ集まってきているんだからさ」
笑ったガンスさんの言葉に、スタッフさん達も笑顔で何度も頷いてくれる。
「いやいや、俺なんて怖がりのヘタレですって。皆さん俺にどんな幻想を抱いておられるんですか。俺、めっちゃ庶民ですよ!」
「まあ、本人がそう言うのなら、そういう事にしておいてやろう」
腕を組んで呆れたように笑うガンスさんの言葉に、何故かスタッフさん達が揃って大笑いしている。
「そうですね。本人が言うのならそうなんでしょう」
やや年配の女性スタッフさんの言葉に、なんだかおかしくなって俺も一緒になって大笑いしていたのだった。
「それじゃあ、よろしくお願いしますね」
揃って見送ってくれたガンスさんとスタッフさんに笑顔で手を振り、俺は大急ぎでいつもの屋台が出ている広場へ向かった。
「案外時間がかかっちゃったから、昼はお城へ戻ってから食べよう」
広場の屋台で、目についたものを大急ぎで買い込んでから、マックスの背に乗ってやや早足でお城へ向かった。
がらんとした貴族の別荘地を抜け、アッカー城壁に到着したところでいきなりマックスが走り出した。
「ご主人。食べものの匂いがしていますから、おそらくですがお弁当の配達の人がもうここまで来ているみたいですね」
走りながらのマックスの言葉に大いに焦る俺。
「お任せください! 匂いはごく近いですよ!」
一気に加速したマックスの背にしがみついていると、前方に二台の荷馬車が見えて俺は安堵のため息を吐いたよ。
「ああ、よかった。追いついたみたいだ。ありがとうな。マックス。おかげで失礼な事せずに済んだよ」
俺の言葉に一声吠えたマックスがさらに加速する。
「ご苦労様です! 先に行きますね!」
荷馬車に追いつき少し離れて一気に抜き去ったところで大きな声でそう叫ぶと、荷馬車に乗っていたスタッフさん達から歓声が上がった。
何故か拍手喝采になる中を、マックスは得意げに一声吠えて一気に加速して行ったのだった。
いやあ、マックスの全力疾走。マジで半端ねえよ!