ご機嫌なマックスと今日の予定
『おおい、俺達もう皆リビングに集まってるんだけどなあ』
『そろそろ起きて欲しいんだけどなあ』
カリーノとマニを抱きしめて目を閉じていた俺は、不意に聞こえたハスフェルとギイの念話の声にちょと慌てた。
『ごめんごめん。朝から従魔達と戯れていたよ。まだ顔も洗ってないんだ。準備したらすぐ行くから、もうちょっとだけ待っててくれよな』
『おう、まあごゆっくり』
『相変わらず仲が良くて結構な事だな。じゃあ待ってるから、よろしく〜〜!』
揶揄うように笑った二人の声が聞こえて、思わず横を向いて吹き出した俺だったよ。
「どうちたの? ごちゅじん」
急に笑った俺に驚いたマニが、俺の頬に顔をくっつけながらそう尋ねる。
「こらこら、髭が痛いからあまりくっつくなって。皆、もう起きてリビングにいるんだってさ。俺も腹ペコだからリビングへ行くよ。ええと、今日は誰が留守番役なんだっけ?」
マニの顔を捕まえて無意識におにぎりにしてやりつつ、コタツ周辺で寛いでいる他の子達を振り返る。
「はあい、今日は私がお留守番役だからね」
ニニの声に、起き上がった子猫達が一斉にニニのところへ集まって嬉しそうにニニを舐め始めた。ニニもご機嫌で喉を鳴らしながら子猫達を交互に舐め始める。
体はかなり大きくなったけど、あの様子を見ているとまだまだ甘えん坊の子猫達だよ。うん、引き離すなんて可哀想だよな!
「じゃあ、あとはいつもの留守番チームだな」
そこまで言って、俺はふとある事を思い出してマックスを見た。
「なあ、昨日は狩りに行ってきても良いって言ったけどさ。実を言うとあのムービングログで街まで行って帰ってくるのは、結構大変だったんだよ。だからさ、マックスもニニと一緒に時々留守番してくれたら嬉しいんだけどなあ」
腕を伸ばして、ベッドから起き上がって良い子座りしていたマックスにそうお願いしてみる。
「やっぱりそうですよね! あんな丸太ごときに私の代わりが務まるわけありませんよね! もちろん喜んでお留守番しますよ!」
いきなり尻尾扇風機状態になったマックスが、目を輝かせながらそう言って俺に飛びついてきた。真正面からの突撃に、もう堪える間も無く床に押し倒された上に超ご機嫌のマックスにベロベロともの凄い勢いで顔中舐められてしまい、割と本気で窒息しそうになった俺だったよ。
どうやらマックスの中では、狩りに行くよりも俺を乗せて走ってくれる方が嬉しいし楽しいみたいだ。
はあ、俺ももちろんマックスの事が大好きだから、そう思ってくれるのは純粋に嬉しいし愛おしいんだけど、相変わらずマックスの愛が重い! 重いぞ〜〜!
内心でそう叫びつつ、ものすごい勢いで俺を舐め回すマックスの頭を必死になって押さえて捕まえて、力一杯抱きしめてやったのだった。
なんとか落ち着いたマックスを引き剥がした俺は、大急ぎで水場へ行って顔を洗い、サクラに綺麗にしてもらってからいつものようにスライム達を水槽へ放り込んでやった。
それから、嬉々として水遊びを始めたマックス達と交代して部屋に戻り、大急ぎで身支度を整える。今日も街へ行くつもりだから、一通りの装備を身につけておくよ。
「お待たせ。じゃあ行こうか」
俺の言葉に留守番役のニニと子猫達は揃っていそいそと産室へ入って行き、それからいつもの留守番チームはコタツやソファーなど好きなところで転がって寛いでいる。
スライム達の入ったいつもの鞄を持った俺は、今日の狩りへ行く子達とマックスを連れて急いでリビングへ向かった。
「お待たせ〜〜。じゃあ、色々出すから好きに食ってくれよな」
到着したリビングには本当に全員揃っていて、慌てて謝りつつ大急ぎで買い置きや作り置きを色々と取り出して並べる。それを見て立ち上がったリナさん達やランドルさんが、また追加で色々と出してくれた。
「あれ? 今日はケンさんも狩りに行くんですか?」
しっかり装備を整えている俺を見て、アーケル君が嬉しそうにそう言って笑う。
「いやいや、ちょっと買い出しを兼ねて街へ行ったらギルドへ顔を出しておこうと思ってさ。狩りの方はお任せするから頑張って色々集めて来てください!」
ホットコーヒーのピッチャーを取り出しつつ、苦笑いして首を振る。
「おう、任せておけ。減った分しっかり集めて来てやるよ」
「だけどギルドマスター達なら、きっと今頃は揃って復旧作業に忙殺されているんじゃあないか?」
苦笑いするハスフェルとギイの言葉に、皆も揃って笑っている。
「確かに、賑やかな槌の音が街中に響いていたよ。ギルドマスターもそうだし、職人さん達も復旧作業に揃って参加していたから、もしかしたら職人通りの店にもギルドにも、誰もいないかもしれないな」
俺の言葉に、オンハルトの爺さんが笑っている。
「あはは、まあ火入れ作業をしている者達だっていただろうから、全員が復旧作業に出ている事はなかろう。だが、新規の受注を止めている奴はいるかもしれんな」
「ああ、確かにそれはあり得ますね。だけどその辺りの差配は、各ギルドが率先してやってくれるからおまかせしておけばいいですよ」
笑ったアーケル君の言葉に納得する。成る程、その辺りの差配もギルドマスターの仕事なんだ。そりゃあ今頃大忙しだろうな。
「まあ、その点流れ者の俺達は楽で良いよな」
笑ったハスフェルの言葉に、ギイや神様達も揃って苦笑いで頷いている。
「ううん、俺は一応ここに家を買っているんだけど、知らん顔でいいのかねえ」
小さくそう呟きながら、今朝はご飯が食べたい気分だったので、肉巻きおにぎりと梅干しとおかかのおにぎりをお皿に取ったのだった。
よし。やっぱり後日改めて話をしようかと思っていたけど、ベリー達が追加で渡してくれた、まだまだあるあの大量の超巨大なジェムは、バイゼンの復興支援の名目でギルドに押しつけ……もとい、ギルドへ全部まとめて寄付して来ようっと。俺が持っているよりも絶対に有効な使い道だと思うからな。
寄付だ寄附! 買い取りじゃなくて、絶対にこれは寄付なんだって!