ご馳走様とアレンジ弁当作りの開始!
「ごちそうさまでした。いやあ、お腹いっぱいです!」
大満足のシャムエル様の言葉に、俺はもう笑うしかない。
だって、明らかに一人前以上余裕であった、取り分けてあったシャムエル様用のお弁当をかけらも残さず綺麗に全部平らげ、さらにはデザートはしっかり半分平らげているんだからさ。
もちろん俺のデザートは、果物が少しだけ。
「まあ、そのデザートの段はそのまま全部まとめて進呈するから、どうぞ好きに食べてください」
「いいの! ありがとう。やっぱりケンは私の心の友だね!」
目を輝かせるシャムエル様の言葉に、乾いた笑いで頷く俺だったよ。
「さて、それじゃあこれを飲んだら始めるとするか」
少し残った食後のコーヒーを飲みながらそう呟いて考える。
「水中で食いながら戦っているのなら、やっぱり片手でも簡単に食べられるようにしてやるべきだな。じゃあ、具入りのおにぎりとか、手でつまめるおかずとかにすればいいか。ううん、どうするかなあ」
腕を組んで考えながら、残りのコーヒーを飲み干す。
俺の呟きが聞こえたのか、食べてる間はアクアゴールドになっていたスライム達が、一瞬でバラけて床に散らばり次々に集まってきた。
今ここは俺以外に人はいないので、クロッシェも出てきてご機嫌で一緒になって伸び上がって自己主張している。
全員揃ってやる気満々だよ。
「あはは、もう待ちきれないってか? よし、それじゃあキッチンへ行って作業を始めようか。サクラ、配達してもらった鉱夫飯を出してくれるか」
立ち上がってキッチンへ移動しながらそうお願いする。
「はあい、いくつ出しますか?」
俺の隣を元気よく転がるサクラの言葉に少し考える。
「ええと、地下へ行ってるのは俺以外だから、シルヴァ達を入れると十三人か。じゃあ十三個頼むよ」
「はあい、ちょっと待ってね」
そう言ってキッチンの机の上に飛び上がったサクラが、鉱夫飯を取り出していく。
「それから、調理用のバットの空いているのを出してくれるか。それで、鉱夫飯を開けて、こんなふうにおかずを種類ごとに仕分けして欲しいんだ」
一つ、一番手前側にあったのを手に取り蓋を開ける。
「これはさっき食ったのと同じおかずだな。もしかして全部同じなのかなあ?」
その可能性は大きいけど、とりあえずまずはこの十三個を片付けよう。これは明日の弁当用だ。
二種類あるおにぎりは別々のバットに並べ、巨大唐揚げ、巨大ウインナー、ブロッコリーも、それぞれ別のバットに並べていく。
どうアレンジするか考えながら一つ見本に仕分けて見せると、あとはもう張り切ったスライム達があっという間に片付けてくれた。
「その空いた弁当箱は返す分だから綺麗にしてまとめておいてくれるか」
「はあい、じゃあ預かっておきま〜〜す!」
アクアが元気よく返事をして、空になった弁当箱を次々に収納していく。
「ご主人、こっちはおかずがちょっと違うよ。どうしますか?」
アルファの声に振り返ると、五個分のお弁当箱だけ別にされている。
「ああ、やっぱり色々あるんだ」
見ると、そこに入っていたのは超分厚い厚切りベーコン。俺の認識ではこれはブロックベーコン丸ごと一本だよ。それを焦げ目がつくまでしっかりと焼いてある。付け合わせはさっきのよりは少し細めのウインナーが一本と、一体化した目玉焼き二個分と太めの揚げポテトがどっさり。そしてこれまた彩り役以外考えられないブロッコリーが隙間に押し込まれている。
「目玉焼きかあ、しかも二個分。まあいいや。じゃあもう先に全部開けておかずを整理してしまうか。それからアレンジを考えた方が楽そうだな」
「はあい、じゃあ全部出すね〜〜〜!」
俺の呟きを聞いたサクラが張り切って鉱夫飯を取り出し始め、テーブルの上に整列したスライム達の手によって、そりゃあもう流れ作業であっという間に全部解体されてしまった。
いやあ、ちょっと見とれるくらいの見事な手際の良さだったよ。
「あはは、お見事。それじゃあまずはこれからだな」
笑って巨大な胸肉丸ごと一枚分の唐揚げを見る。
結局、今回の鉱夫飯を全部開けた結果、巨大唐揚げバージョンが六割くらいとブロックベーコン丸ごと焼きと目玉焼き二個分バージョン四割くらいの二種類のみだった。
「他は何とかなるけど、二個分の目玉焼きはどうするかなあ……」
これを簡単に食べられそうにするアレンジを考えていたが、不意に我に返って手を打つ。
「ああそうか。アレンジなんだから、別にこれ全部一度に使う必要は無いよな。よし、目玉焼きは別に置いておいてパンに挟んでサンドイッチにしてやろう。それで、こっちには手持ちの別のおかずを足せばいいんだよな」
うんうんと頷いた俺は、そう呟いて目玉焼きのバットはサクラに収納してもらった。
「唐揚げは、一口大に切って塩むすびと握り直して唐揚げおにぎりにする。ベーコンは分厚く切って温野菜と一緒に串に刺せばいいな。それなら、以前セレブ買いで見つけた竹串が役に立つぞ」
実際の素材は竹とは違うのかもしれないが、見る限り俺の知る竹串と変わらない。やや太めの串はしっかりとしていて、少々分厚い肉を刺しても大丈夫そうだからこれを使うよ。
「まあ、あいつらなら食いながら暴れても喉をつく心配は無かろう」
苦笑いしてそう呟き、まずは一口大に切ってもらった唐揚げを押し込んで、塩むすびを握り直す。これも見本を見せればあとはスライム達が全部やってくれた。
唐揚げとおにぎりを収納してモゴモゴしたら、すぐに唐揚げ握りが大量生産されたんだから、びっくりだよ。
どうやら、切ったり混ぜたりするだけじゃあなくて、おにぎりも出来たみたいだ。
いや、マジでスライム達の中がどうなっているのか見てみたいよ。
分厚く切ったブロックベーコンと取り出した温野菜を交互に串に突き刺しながら、のんびりとそんな事を考えていた俺だったよ。