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今度はジャガーをテイムする

『もうよろしいですか? まだ誰かテイムしますか?』

 俺の頭の中に、念話でベリーからの声が聞こえた。

『ああ、感謝するよ。おかげで俺もクーヘンも怪我もなくテイム出来たよ。本当にありがとうな』

『お役に立てて何よりです。じゃあ戻りますね』

「ベリーからで、もう戻って来るってさ」


 俺は、大人しく座って身繕いをしているマックス達に駆け寄った。

「なあ、かなり毛の塊とか飛び散っていたけど、どこか怪我とかしていないか?」

 今こそ万能薬の出番だろう。

 順番に、体や首回りなど、手を当てて見てやると、やはりあちこちに細かい傷が出来ていたみたいだ。

「その程度なら、軟膏タイプのを怪我をしている部分に直接塗り付けてやったら良いよ。魔獣は怪我には強いから、すぐに回復するよ」

 シャムエル様の言葉に従い、足元にいたアクアから万能薬の軟膏タイプを取り出してもらった。一応、万能薬はアクアとサクラの両方に均等に分割して持ってもらっている。

「ありがとうな」

 得意げに伸び上がって、万能薬の軟膏タイプを取り出してくれたアクアの頭を撫でてやる。うん、相変わらずツルツルぷよぷよしてて気持ち良いなあ。

 雑貨屋で買ったガラス瓶に入れた万能薬を、まずは一番怪我が多いマックスとシリウスに塗ってやる。身体が大きいから、二匹でほぼひと瓶使ったよ。新しい軟膏の瓶を出してもらい、ニニの身体も確認しながら塗ってやる。皆大人しくしていてくれるから、やり易いよ。

「ええと、プティラとピノは? 怪我してないか?」

 振り返ってそう尋ねると、二匹は揃って首を振った。

「私達は怪我なんてしないですよ」

 ピノがそう言い、プティラも頷いている。


 ん? ドユコト?


「ああ、魔獣と違って、ジェムモンスターは核になるジェムが無事なら実体の怪我なんて一瞬で治っちゃうよ。逆に、ジェムが傷付けられたら、回復するのは容易じゃないね」

「ああそうか。魔獣は元が普通の生き物だから怪我もするけど、ジェムモンスターは、ジェム自体が無事なら問題ないって事だな。じゃあ逆に、万一ジェムが傷ついた時ってどうすれば良いんだ?」

「一番早いのは、地脈の吹き出し口に置いてやる事だね。そうすればあっという間に元通りだよ」

 シャムエル様に言われて、軟膏の瓶の蓋を閉めながら、ふと疑問に思った。

「それってどこの地脈の吹き出し口でも良いのか? いやいや、その前に大問題だろう。地脈の吹き出し口って、どこもジェムモンスターの巣じゃないのか?」

「まあそうだけど、要は近くに行けば良いんだよ、吹き出し口と言っても、井戸みたいにここにあるっていう訳じゃなくて、この辺り、程度の認識だからね」

「つまり、だいたい近くに行けば良いのか?」

「そうだね、もちろん中心地に近ければ近いほど回復は早いよ」

「了解。万一の時の為に、近くの地脈の吹き出し口とかも、調べておくべきだな」

「地脈の吹き出し口は常に同じ場所じゃないからね、急に止まる事もあるし、ずっと同じ場所な事もあるよ」

「そっか、残念。じゃあとりあえず、その時にならないとわからないって事か」

 万一、従魔達に何かあった時の対処法だと思って、本気で調べるつもりになったんだが、地脈の吹き出し口は場所が変わる事もあるから、知っている場所に行っても、必ずしもそこがいつでも地脈の吹き出し口って訳じゃないのか。じゃあ仕方がないな。

 しょんぼりする俺を見て、ちょっと考えたシャムエル様が嬉しい事を言ってくれた。

「じゃあ、大サービスね。君の地図に、変化の無い決まった地脈の吹き出し口の場所に印を付けておいてあげるよ。必ずその周辺には複数の地脈の吹き出し口が有るからね」

「おお、感謝するよ、ありがとうございます」

 使い終わった軟膏の瓶をアクアに返して、また新しい軟膏を作って入れておいてくれるように頼んでおいた。

「了解、綺麗にして新しいお薬作って入れておくね」

「おう、よろしく」

 もう一度ポンポンとアクアを軽く叩いてやり、自己主張するサクラも同じように撫でて叩いてやった。



「大きな怪我もなく、無事にテイム出来たな。で、どうする? このままジャガーの生息地へも行くか?」

 ニンマリと楽しそうに笑うハスフェルの言葉に、俺とクーヘンは無言で固まった。

 何その神様なのに悪そうな笑みは。嫌な予感しかしないぞ。

「確かに魅力的なお誘いですけれど、連戦は、マックスやシリウス、ニニ達の負担が大きいのでは?」

 申し訳なさそうなクーヘンの言葉に、マックス達が顔を上げて一斉に吠えた、ニニまでもが大きく自己主張するように鳴いた。

「ええ? 今なんて言ったんですか?」

 困ったように俺を振り返るので、俺は堪えきれずに吹き出した。

「今の鳴き声を翻訳すると、もう、全員やる気満々で今すぐ行くつもりになってるのに、止めるなんて言うなよ! だそうです」

 うん、はっきり言葉にした訳じゃないけど、今のはそれ以外には聞こえなかったぞ。

「さすがはご主人ですね。私達の気持ちをよくわかって下さってる」

 嬉しそうにマックスがそう言い、のし掛かってきて大きな舌で俺を思い切り舐めてきた。

「分かった分かった。こら待て!マックス、ステイ!」

 ピタリと止まって、少し離れて大人しく座るマックスを見て、全員呆気にとられて見ている。


 え? そんなに驚くような事か?


「お、お前……凄いな。今のは初めて聞くが何かの呪文か?」

 ギイが驚いた事を隠しもせずに聞いてくるので、どう答えるべきか考えた。

「こいつが小さかった頃に躾けたんだよ。大きくなって力が強くなった時に、きちんと躾けていると安心だろ? ステイ、は故郷の言葉で、待てって意味だよ」

 うん、嘘は言ってない。確かにマックスを躾けたのは小さかった時の事だ。

「凄いですね、そんな小さな頃からテイムしていたんですね」

 クーヘンがそう言い、皆にも揃って感心するように見られてしまい、なんだか照れ臭かった。


 それで、相談の結果、まだ時間も早いからと、このままレッドクロージャガーの生息地へ行く事になった。

 うん、ここでも全く同じ展開だったね。

 ベリーとフランマの幻獣コンビが追い込んでくれたところを、巨大化したサーバル二匹が加わって更に戦力アップした従魔軍団が迎え撃ち押さえ込む作戦だ。はい、そりゃあもう、とんでもない大騒ぎになったよ。

 しかしジャガーのパワー凄え。

 マックス、シリウス、ニニの魔獣達にミニラプトルのピノとプティラ、それにサーバルのグランツとソレイユまで加わってようやく押さえ込んだんだぞ。

 もう、歯を剥き出しにして威嚇する顔を網で抑え込むのが、どれだけ怖かったか。

 だけど俺達二人がかりでも力負けして押さえきれず、嫌がって首を振り回されて弾き飛ばされそうになり、見かねたハスフェルとギイまで手伝ってくれてようやく押さえ込んでテイムしたよ。


 名前は、クーヘンのジャガーが雄でシュタルク。俺のジャガーはやっぱり雌で、フォールと名付けた。うん、うちの従魔の女子率高いです。

 どちらも亜種だったらしく、一番デカくなったら何とマックスやシリウスと変わらないサイズだった。


 しかも、それを見たハスフェルとギイまで欲しいとか言い出したもんだから、二匹テイムした時点で、全員に万能薬入りのお茶を配って体力を強制的に回復させたよ。もちろんマックス達にも飲ませたよ、万能薬入りの水をね!

 今回は力不足で参加出来ない子達は、少し離れたところで大人しくひと塊りになって見学している。

「気にしなくて良いぞ、幾ら何でもジャガー相手にお前らに参加しろとは言わないって」

 サクラとアクアは防御役で参加したそうだったけど、ハスフェルに真顔で止められた。ジャガーの咬合力でまともに噛まれたら、スライムだと確実にジェムごと破壊されるらしい。


 何それ怖い!


 だけどそうだよな、確かジャガーってネコ科の中では最強の咬合力だったはずだ。人間の十倍くらいはあった筈だもんな。

 って事で、結局もう二戦戦いました。その結果、全員にジャガーの従魔が付いたよ。

 もちろん、ハスフェルとギイの分は彼らに捕まえてもらって俺がテイムしました。


 ヘトヘトになったけど、小さくなったジャガー模様の猫はめっちゃ可愛かった。

 ちょっと普通の猫よりも顔、と言うか、顎が大きい気がするけど……気にしない、気にしない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだろう、なんか動物園みたいになってきましたね笑 把握するのが大変になってきました。
[気になる点] え?じゃあ、普段ジェムモンスターを倒すってどうなってるの?攻撃しても実質無駄なんだよね?倒した時って全部、ジェムに攻撃が当たった時なの?
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