修理の完了とおやすみなさい
食事のあとは吟醸酒をのんびりと飲みながら、今日修理に来てくれたドワーフさん達を見た子猫達がどれだけ怖がったかと言う話で思い切り盛り上がったよ。
いやあ、今思い出してもあれは本当に可愛かった。
まあ、本猫達に取っては笑い事じゃあなかったんだろうけれどさ。
それから、明日も俺は留守番で皆は狩りに行くって事で解散になったんだけど、当然のようにシルヴァ達は子猫を触りたがったので、リナさん一家とランドルさんとは廊下で別れて、俺は神様軍団を全員引き連れて部屋に戻った。
「ただいま〜〜良い子にしてたか〜〜?」
部屋に戻ると、コタツに潜り込んでいたらしい子猫達がすごい勢いで飛び出してきた。
「ごちゅじんおかえり〜〜!」
「みにゃもいっちょだ〜〜〜!」
「いっちょいっちょ〜〜!」
相変わらずの舌足らずな可愛い声で三匹がそう言って俺に飛び掛かってくる。
「うわあ、やられた〜〜〜!」
棒読みでそう叫んで、無抵抗で子猫達に押し倒される。
ご機嫌で鳴らし始めた下手くそな喉の音を聞きつつ、なんとか起き上がって順番におにぎりにしてやったよ。
それからシルヴァ達が交代で子猫と遊んでいる間にスライム達を借りて、とにかく壊れた障子を修理してもらった。
うん、さすがにこれだけの数の金色合成したスライムがいると、障子の修理はあっという間だったよ。
もちろんその前に、豪快に壊れた障子の山を見て大爆笑になったのは言うまでもない。
ゴールドスライム達の有り難さを思い知ったね。
和室が綺麗になって復活したところで、その日は解散になった。
「はあ、もう大騒ぎだったな。全くお前らは。元気がいいのは全然構わないんだけど、頼むから怪我にだけは気をつけろよ。お前達はジェムモンスターとは違って怪我したら大変だし、万が一の場合は死ぬ事だってあるんだからな」
甘えてくる子猫達を順番におにぎりにしてやりながら、何度も言い聞かせる。
「うん、きをちゅけまちゅ!」
マニがご機嫌に目を細めながらそう言って俺の手にセルフよしよししてくる。
ああ、可愛さで俺を殺しに来てるぞ。萌え鼻血が出そうになって慌てて顔を上げたよ。
「さあ、それじゃあもう寝るとするか」
大きく伸びをして、まずはサクラに綺麗にしてもらう。
靴と靴下を脱いで、ベッドで待ち構えていたニニの元へ飛び込む。
「いっちょにねるのにゃ〜〜!」
マニがそう叫び、ミニヨンとカリーノも一緒になって飛び込んでくる。
「どわあ! ちょっと待って! 潰れる!」
子猫三匹にまとめて腹の上に飛び掛かられて、マジでちょっと色々出そうになって慌てて押しやる。
「ご主人のお腹には乗っちゃあ駄目だよ。人間はお前達と違って弱いんだからね」
言い聞かせるように優しい声のカッツェが、そう言ってまだ俺のお腹の上にいたマニの首を咥えて降ろしてくれる。
「ああ、ありがとうな。はあ、まじで色々出そうになったよ」
起き上がって座ったところで、カッツェがマニを下ろして俺の背中に頭突きしてくる。だけど、ちょっとそれさえも遠慮がちですごくそっとだ。
カッツェは性格的な部分からなんだろうけど、ニニや子猫達みたいに開けっぴろげにこっちへの好意をあまり示さない。だけど、背中を向けていても俺の足に尻尾が絡まっていたり、今みたいに側に来るくせにべったりとは甘えないんだよな。
「ああもう、お前も可愛いぞ〜〜!」
もたれかかるみたいにして全身でくっつく。
もちろんがっしりとしたカッツェの体は、俺如きが全力でぶつかっても多分小揺るぎもしないと思う。
大きな音で喉を鳴らし始めたカッツェが、最初は遠慮がちに、だけどだんだんと大胆になって俺に頭突きをしながら頭や鼻先を擦り付ける。
「よしよし、お前もお父さんだけど良い子だな」
なんだか堪らなくなって、がっしりとした首に抱きつき鼻先にキスを贈った。
「本当に皆、可愛くて最高の従魔達だよ。改めてこれからもよろしくな」
低い音で始まったニニとカッツェの喉の音の二重奏。
並んでニニのお腹に潜り込んでいた子猫達だけでなく、集まって来たティグ達猫族軍団の面々も、揃って喉を鳴らし始めた。
そして、大型犬サイズくらいになったセーブルが、子猫達と一緒に潜り込んできた。
ミニヨン、カリーノ、俺、マニの順でニニのお腹に潜り込んでいるんだけど、セーブルはマニの横にくっついて横になった。
「そっか、今夜はセーブルが添い寝役か」
笑って手を伸ばした俺は、少し考えてカリーノに抱きついた。喉を鳴らしたカリーノが俺の胸元に鼻先を突っ込んでくる。
「おお、カリーノの長毛はもふもふだな。これってニニの毛より柔らかいんじゃあないか?」
笑いながらお腹から脇腹のあたりを何度も撫でてやり、胸元のもふもふの毛に顔を埋める。背中側にいたマニが、甘えるみたいに鳴いて俺の肩に顎を乗せて抱きつくみたいにしてくっついてくる。
「ああ、もう最高だな」
腕を反対に伸ばしてマニの頭も撫でてやってから、小さく深呼吸をして目を閉じる。
「おやすみなさい。では消しますね」
「うん、ありがとうな。おやすみ……」
笑ったベリーの声が聞こえてなんとか返事をした俺は、あっという間に眠りの海へ真っ逆さまに墜落していったのだった。
はあ、寝る時のこの、パワーアップしたもふもふのパラダイス空間、最高〜〜〜。