新種のジェムモンスターとその素材!
「ただいま〜〜!」
岩豚トンカツ以外にも、サイドメニューになりそうなおかずを色々と取り出していたところで、にぎやかな笑い声と足音とともにシルヴァ達が戻ってきた。
そしてテーブルの上に並んでいる岩豚トンカツを見て一斉に歓声が上がる。
「おかえり。お腹空いたって聞いたから、今日のメインはガッツリ岩豚トンカツだよ。ご飯がいい人はこっちで、パンがいい人はこっち、色々あるから好きなのをどうぞ。味噌汁と野菜スープはここ。サイドメニューも色々あるから、どれでもお好きにどうぞ。ただし残すなよ〜〜!」
「そんな事絶対にしません!」
これまた綺麗に揃った返事が返る。
「わあい、いただきま〜〜す!」
満面の笑みで拍手されて、笑った俺はちょっとドヤ顔になる。
一緒に戻ってきた従魔達は、全員揃って部屋の隅に寝転がってすっかり寛ぎモードだ。
まあ、見るからに大暴れして大満足って感じだよ。
従魔達とのスキンシップは部屋に戻ってからにする事にして、俺もまずは食べる事にした。
「いつも、美味しい食事をありがとうございます!」
「じゃあ、絶対合うと思うので、この前街で見つけたこれも出しておきますね〜〜!」
そう言ってオリゴー君が出してくれたのは、大きなお椀いっぱいに山盛りになったポテトサラダっぽい。だけど、なんだかちょっと違うみたいだ。
カルン君が出してくれた焦げ茶色のそれは、おそらくだけどトンカツソースっぽい。
「これって、ポテトサラダ?」
大きなお皿に山盛り出してくれたそれを見ながらそう尋ねると、にっこり笑った二人は、大きめのコッペパンを手に取り、真ん中にナイフで水平に切り目を入れてから、それをスプーンですくって開いたコッペパンにたっぷりと塗り付け始めた。
「これ、メインはポテトサラダなんですけど、刻んだ燻製肉とか野菜も色々入っているし、味付けのハーブが効いててめっちゃ肉との相性がいいんですよ。惣菜屋の店主が、トンカツがあるなら絶対おいしいって教えてくれた食べ方がこれなんですよね」
「それで、仕上げにこのソースをたっぷり肉に塗るんですよ」
「絶対美味いですから、ケンさんもよかったらやってみてください!」
そう言って、岩豚トンカツを一枚そのまま間に挟んで、焦茶色のソースをたっぷり塗りつけてからサンドしたよ。
おお、これは確かに美味そうだ。
満面の笑みで頷き、もちろん俺もチャレンジした。
そして当然のごとく、それを見ていた全員がパンを手にハーブポテトサラダに殺到したのだった。
教えてもらった通りに作り、野菜スープも取ってくる。
「まあ、とりあえず食ってみるか。足りなかったらまた取ればいいよな」
実はおにぎりが食べたかったんだけど、美味しいと聞けば試さない手はないもんな。
若干昼飯と被ったメニューに苦笑いした俺は、きちんと手を合わせてから大きく口を開けてコッペパンにかぶりついた。
「なにこれ美味っ!」
濃厚岩豚トンカツの味を邪魔しない、爽やかなハーブの風味。そして予想通りのちょっと甘めのトンカツソース。俺が持っているトンカツソースよりも濃厚で甘めだ。
これは確かに、どちらも肉との相性抜群!
思わず、どこのお店なのかマジで聞いて教えてもらった俺だったよ。
よし、ポテトサラダとソースを売っていたのは同じ店らしいから、明日にでも見に行ってみよう。
結局俺は、今度は食パンを使ってもう一回同じ味で作って、シャムエル様に半分差し上げて残りを美味しくいただいたよ。
これ、たくさん買って作っておこう。多分、普通に焼いた肉で作っても美味しいと思うぞ。
「で、今日の収穫は?」
立ち寄る店が増えたので明日の予定を考えつつ、食後に出してもらった吟醸酒をちょびちょび呑みながら隣に座ったハスフェルに尋ねる。
一応俺が参加しない時でも、基本的に従魔達は一緒に狩りに行っているから、俺の取り分も相当あるんだよな。
「もちろん、ランドルと従魔達以外は、全員地底湖の底まで行って戻ってきたよ」
「いやあ、実に素晴らしかったよ。しかも、地底湖の下の場所で、これが出たんだ。全員一致で、これはケンに進呈しようって事で話がまとまったからな」
ハスフェルの言葉に頷いたギイが、にっこりと笑って大きな貝殻を取り出して俺の目の前に置いた。
それは直径1メートルくらいの、やや楕円型をした鮑っぽい片方だけの貝殻だ。
「ええと、まさか……」
鮑の内側を思い出した俺は、無言で貝殻をひっくり返した。
目、目が〜〜〜!
って、某キャラのように叫びたくなるくらいに、ひっくり返した途端にそりゃあもう部屋中キラッキラ!
内側部分の虹色の真珠層が、もうこれ以上ないくらいにピカピカに光り輝いていてめっちゃ綺麗だ。
「うわあすっげえ。これって初めて見るけどジェムモンスターなのか? それとも、淡水湖に住む巨大貝?」
初めて見るそれを手にそう尋ねると、二人だけでなくシルヴァ達までが揃って満面の笑みになった。
「最下層まで行ったら、湖底一面にこいつがいたんだよ。俺も初めて見たが、どうやら新しいジェムモンスターらしい。ジェムは全てラメ入りだ。素材の貝殻は、真っ白の真珠層を持つ個体と、やや少ないが虹色の真珠層を持つ個体がいた。この輝きの美しい事。最高だろう?」
にんまりと笑ったハスフェルがそう言って幾つか取り出して見せてくれた。
虹色の貝殻の大きさはやや小さめだが、それでもどれもとても綺麗だ。
「シルヴァ達が、張り切って集めていたぞ。少しコレクション用に貰って、あとは全部まとめてケンに進呈するとさ」
笑ったハスフェルの言葉に、シルヴァ達が満面の笑みで頷く。
ああ、また在庫が増える〜〜!
「確かに綺麗だな。じゃあ、これはここのギルドに売って、幾つかはクーヘンのところへ置いてこよう。それに、これならバッカスさんのお店でも装飾の際に使えそうだよな? ランドルさんは貰った?」
水の中に入っていないランドルさんを思い出して、慌てたようにそう尋ねる。
「ええ、ハスフェル達からもそう言われて、今回はシルヴァさん達からたくさん分けていただきました。ですが今お渡ししたそれは、他とは明らかに違いましたので、それはケンさんが貰ってください。おそらくは亜種の特殊個体なのでしょうね」
にっこり笑ったランドルさんも、自分の収納袋からいくつか取り出して見せてくれた。
半分押し付けようと思ったんだけど、もう貰っていたか。残念!