アクアゴールドのナイショのお仕事と新しいジビエ料理!
「おいおい、修理してもらったその日にまた破壊するとか。それはさすがに駄目だろう……」
呆れた俺の呟きに、顔を上げたカリーノとミニヨンが揃って起き上がった。
しかし、ミニヨンは前回のマニ以上の状態になっているよ。
頭から障子に突っ込み、そのまま貫通した障子が胴体部分の真ん中あたりで止まっている。そして、折り重なるみたいに真っ二つに折れた障子の上にどんと座っている。
そしてカリーノは障子と一緒に三回転したおかげで、ぶつかった障子を含めて全部で三枚見事なまでに破壊してくれている。
結果、二匹で合計六枚の障子が瞬殺されました。ハインツさん達、ごめんなさい!
「ごめんなちゃい、ごちゅじん」
「ごめんなちゃい、ぜんぜんだいじょうぶじゃなかったでちゅ」
二匹揃ってしょぼーんって感じになり、良い子座りで俺に向かって謝る。ミニヨンはウエストに障子がはまったままだ。
「まあ、部屋を走り回るのが楽しいんだって事は充分に分かった。ううん、これってもういっその事、障子を全部外しておくべきか?」
割と真剣にそう考えたのだが、ある事実に気がついて即座に却下する。
障子を全部取っ払ったら、残るのは和室の屋根を支えている四本の柱だけだ。
それなりに太い木を使ってくれているけれども、今のマニであっても勢い余って柱に正面衝突したら間違いなく柱が折れて屋根が崩落する。
室内でそんな事になったら、子猫達を含めて従魔達は即座に逃げるだけの反射神経と運動神経があるから大丈夫だろうけれども、俺は間違いなく巻き込まれる自信がある。
自分の家で圧死するのは絶対にゴメンだからな!
いろいろな諦めのため息を吐いた俺は、手を伸ばしてミニヨンとカリーノを撫でてやり、一応怪我しないように気をつけてミニヨンの体からすっぽりハマっていた障子を外してやった。
一回目以上に豪快な穴が空いた障子を見て、諦めのため息を一つ吐いたところで我に返る。
「あ、今気がついたけど、これって……」
今更ながらに、金色合成したスライム達が持つあの能力を思い出した。
「なあ、これって……」
「直せばいいの?」
全員揃って金色合成していたアクアゴールドの声に、苦笑いしつつ頷く。
「えっと、ちょっと時間がかかるから順番にするね〜〜〜!」
得意げにそう言って一枚目の障子を飲み込もうとするのを見て慌てて止める。
「待った待った。今始められちゃったら、俺が料理出来ないって」
「ああそっか〜〜ううんと、どうすればいいですか?」
困ったように、大穴が空いたり完全に二つ折りになっている破壊された障子の山を見たアクアゴールドの肉球がこっちを向く。
「夜にでも、シルヴァ達のスライムも借りて、一気に直してもらうよ。さすがに今日直してもらったばかりなのに、またすぐに修理を頼む勇気は俺には無いからな」
苦笑いしながらそう言い、アクアゴールドをおにぎりにしてやる。
それから、ようやく復活してきた子猫達を順番にこれもおにぎりの刑に処したのだった。
キッチンへ戻った俺は、少し考えて岩豚ミンチを作ってもらい、これにグラスランドブラウンブルのミンチを足してジビエハンバーグを作ってみた。
もちろん、味付けと玉ねぎを焦茶色になるまで炒めたのと、焼くの以外は、全部スライム達がやってくれたよ。
「おお、めっちゃ美味そうに出来たぞ。肉汁ジュージューだよ」
すでにこの時点で美味しそう以外の感想が出ない。
ってことで追加で最初の三倍量仕込んで、半分はチーズインハンバーグにした。
そして、定番ケチャップソースだけじゃあ無く、おろし大根の和風ハンバーグと、師匠のレシピを参考にして作った即席ドミグラスソースで煮込んだ、煮込みハンバーグも作ったよ。
よし、これで弁当も作っておいてやろう。シルヴァ達絶対に喜ぶぞ。
もう一回三倍量を仕込んで、弁当用のジビエハンバーグも作っておいた。
それからジビエ肉団子を仕込んだところで時間切れになったらしく、ハスフェルから念話が届いた。
『今地上へ向かっているところだよ』
『お腹が減っているから、帰ったら夕食をお願いします!』
ハスフェルの声にかぶさるように、シルヴァとグレイの念話の声が重なる。
『あはは、了解だ。じゃあ、リビングへ行くよ』
とりあえず仕込み中のジビエ肉団子はそのままサクラに収納しておいてもらい、俺はスライム達を引き連れてリビングへ向かったのだった。
「じゃあ、今夜は最初に作った岩豚トンカツかな。在庫が一気に無くならないように、種類は一度に出さずに一品ずつ出さないとな」
今日料理したのを一気に全部出したら、多分間違いなく全部食い尽くされる。
思いのほか人数が増えた今のメンバーの食事量を思い返して、ちょっと遠い目になる俺だったよ。
うん、また明日も街へ行って、色々と屋台やお店で作った料理も買い込んでこよう。
鉱夫飯の配達は、午後からでお願いしているので買い出しに行くのなら午前中だ。
明日の予定を頭の中で考えつつ、到着したリビングのテーブルの上に、ガッツリ作った岩豚トンカツを並べ始めたのだった。