破壊魔トリオ爆誕!
カッツェはここにはいませんでしたね。
申し訳ありません。作者の勘違いです。
当該箇所を訂正しました。
「マニ〜〜ミニヨンにカリーノ。もう大丈夫だぞ」
ハインツさん達を見送った俺は、急いで部屋に駆け戻って笑ってそう言いながら産室を覗き込む。
「もう、あの大きな音を立ててた人達は帰ったの?」
顔を上げたニニの言葉に笑顔で頷き、また小さくなってくっついたままの子猫達を見る。
「おう、見送ってきたよ。それでどうだ? ちょっとは落ち着いたかな?」
出来れば撫でて様子を見てやりたいんだけど、一応安全の為に手は出さず先にニニに尋ねる。
「まあ、少しは落ち着いたみたいだけど、安全だと思っていた場所にいきなりでしょう? しかもシルヴァさん達と違って、ご主人の匂いが一切なかったから、相当怖かったみたいね」
笑ったニニの言葉に首を傾げる。
「へえ、シルヴァ達って俺の匂いがするんだ」
思っても見なかった事を言われて、首を傾げる。
「そうね、私達には明らかにご主人の仲間なんだなって分かるわよ」
「そんなにくっついていたかな?」
「違うわ。彼女達も普段からご主人の作るものを食べているでしょう? だからおんなじ匂いがするの」
笑ったニニの言葉に納得して頷く。
「ああ、成る程。そっちか。へえ面白い」
俺も笑ってそう言いながら、少し動いた子猫を見る。
「もう大丈夫だぞ。誰かさんが壊した和室の障子も綺麗になったから、出て来て自分で見てごらん」
俺の言葉に真っ先に顔を上げたのは、三匹の中では体が一番大きい雄のミニヨンではなく、一番小さな体の和室破壊の張本人でもあるマニだった。
この前の庭に出た時もそうだったけど、実はオスで体が大きいミニヨンじゃあなくて、マニが一番勇敢だったりするのかな?
「それ、ほんとにゃ?」
「おう、俺は嘘なんかつかないよ。ほら、出ておいで」
笑って手招きしてやると、おずおずって感じに起き上がったマニが、まずはその場で大きく伸びをした。
おお、ニニに勝るとも劣らない見事な伸びっぷりだな。
密かに感心していると、今度は縦に伸びたマニはブルっと大きく体を震わせてから抜き足差し足で出てきたよ。
なんだよこの、可愛いしかない子は!
「ほらこっちだよ」
そっと手を伸ばして鼻先から首筋を撫でてやり、産室の入り口から和室を見せてやる。
「ああ! 本当だにゃ! きれいになってりゅ!」
ピンと伸ばした尻尾が一気に膨れる。
「おお、子猫期間限定の貴重な試験管ブラシ尻尾。いただきました〜〜!」
目の前で膨れたそれを見て、思わずそう叫んで手を伸ばす俺。
いつの間にかマニの頭の上に座っていたシャムエル様が吹き出すのを聞きつつ、ぽんぽんに膨らんだマニの尻尾をにぎにぎする。
「ああ、もうこの鍵尻尾さえも愛しいよ」
抱きつこうとしたその時、するりと尻尾が俺の手から抜け出し勢いよく走っていってしまった。
「ああ、俺の癒しが逃げた〜〜〜!」
ニニの笑い声を聞きつつ、元気よく部屋を走り回るマニを見る。
「せっかく直してもらったんだから、もう壊しちゃ駄目だぞ〜〜」
「はあい、だいじょうぶだにゃ!」
嬉しそうにそう答えたマニは、一瞬でデカくなってくれたラパンとコニーを追いかけて走り始めた。
ううん、ちゃんと仲間だって認識しているから別に大丈夫なんだろうけど、見ていてちょっと怖いぞ。まあ、ラパンもコニーも笑いながら走ってるから、そんな心配は必要ないんだろうけどさ。
「ああ、静かににゃってる!」
産室からミニヨンとカリーノの声がして振り返ると、並んで産室から顔を出している二匹と目が合ったよ。
「ほら、大丈夫だから出ておいで。怖がりさん達」
両手を広げながらそう言ってやると、これまた抜き足差し足で出てきたカリーノ。
おいおい、一番体の大きなミニヨンが、もしかして一番の怖がりなのか?
吹き出しそうになるのを必死で堪えつつ、なんとか二匹を産室の外まで連れ出す事に成功した。
「な? 大丈夫だろう?」
必死になってフンフンと周囲の匂いを嗅ぐミニヨンとカリーノ。
「うああ! これまた、可愛いが俺の目の前で大渋滞を引き起こしているんですけど、俺はどうすればいいんだ!」
頭を抱えて叫ぶと、吹き出して大爆笑しているシャムエル様。
「いっちょにあそぶにゃ!」
その時、走り回っていたマニが両手、じゃなくて両前脚を大きく広げてミニヨンとカリーノに飛びかかった。
「「フギャ〜〜!」」
二匹の悲鳴が綺麗に重なり、逃げるマニをミニヨンとカリーノが揃って追いかけ始める。
もうこうなったら俺は手出し出来ない。
笑って産室の入り口横に座ると、中から出てきたニニが俺にピッタリとくっついて丸くなった。
「お、こんなところにベッドが出現したぞ〜」
笑いながらそう言い、両腕を広げてニニに抱きつく。
大きな音で喉を鳴らし始めたニニに抱きついたまま、いつも寝ている時みたいにお腹の辺りに収まる。ああ幸せすぎるよ……。
その時、突然聞こえてきた大きな破壊音とともにまたしても和室の障子が吹っ飛び、今度は障子に頭から突っ込んだカリーノとミニヨンが、揃って障子ごと豪快に一緒に転がって三回転、と二回転。
せっかく修理してくれた障子に、見事なまでのとどめをさしてくれたのだった。
うん、これはお願いしてもうひと揃え、予備の予備を用意してもらったほうがいいかもしれない……。