今日の弁当準備とそれぞれの出発!
「じゃあ、詰めていきますか!」
空の鉱夫飯の弁当箱を人数分並べた俺は、取り出したおかずやおにぎり、それから惣菜パンやサンドイッチ、ガッツリ揚げ物や鶏ハムや燻製肉、サイドメニューに使えるサラダや煮物などがぎっしりと並んだ机の上を見て小さく吹き出した。
ランドルさんやアーケル君達が提供してくれた屋台飯も色々とあるので、これはもう張り切って詰めるしかないよな。
って事でお箸を手にした俺は、順番に数のあるものから綺麗に弁当箱の中へせっせと詰め込んでいった。
数のないのは別においておき、他の半端ものと合わせて不公平にならないようにバランスよく詰めていく。
鼻歌混じりに彩りや栄養バランスなんかも考えながらひたすら詰めていた俺は、全員が目を輝かせて俺の作業を見つめている事に全く気づかず。最後のデザートを詰め終わったところで拍手喝采になって割とマジで飛び上がったのだった。
「素晴らしいわ〜 もう最高よ! 食べる芸術品だわ。食の宝石箱よ〜〜! これは、これは食べる前に、じっくり鑑賞しておかないと!」
どこぞのグルメリポーターみたいな事を言ってるシルヴァが、弁当箱の蓋を閉めながら笑み崩れている。
まあ、確かにいつもの鉱夫飯よりは彩りも良くて野菜も多めに入っているよ。
「はいはい、まあしっかり食って稼いで来てくれ。そっちのジェムもかなり減ったんだろう?」
俺が提供したのは、あの巨大な恐竜のジェムだけだけど、リナさん達やランドルさんは、手持ちの各種恐竜のジェムを相当数提供してくれたんだって聞いている。
まあ、どれだけ集めるんだと割と本気で呆れていたんだけど、街の皆の役に立ったのなら、集めた甲斐があるって事だよな。
「いや、相当ありましたから、まだまだ大丈夫ですよ。ですが、せっかくですからもう少し集めさせていただきますね」
笑ったランドルさんは、従魔達を見た。
「皆さんは、揃って最下層の下にある水没地帯へ行かれるそうですので、俺はまた従魔達と一緒に地下洞窟内を巡回しますよ。こいつらが一緒にいれば、万一絶対王者に遭遇しても何ら問題ありませんからね」
にっこりと笑ったランドルさんのトンデモ発言に、俺以外の全員が大爆笑になる。
「いや待って! 絶対王者は駄目だろうが!」
確か、ハスフェルでもそれなりに苦労すると聞いていたんだけど、得意げに俺を見ている従魔達の顔ぶれを改めて見て、遠い目になった俺だったよ。
まさか、絶対王者に同情する日が来ようとはねえ……。
「それで、お城には誰が残るんだ?」
全員が弁当箱を収納したところで従魔達が起き上がって伸びをし始めた。
街へ行くので、俺の騎獣であるマックスは留守番決定。
冬の間はずっと留守番だった鱗チームの中で、イグアナ達は恐竜相手だと少々不利らしいので留守番組。セルパンは久々に暴れたいらしいので一緒に行ってもらうことにした。
お空部隊はプティラだけ参加で、他の子達はハスフェル達やランドルさんやリナさん達の子達も含めて全員留守番組。まあ、どう見てもあっちは戦力過剰だから無理はしなくていいって。
草食チームも、ランドルさんやリナさん達の子達も含めて全員留守番組。今日の子猫達の添い寝担当なんだってさ。
ニニは子猫達と一緒に残って、今日は久し振りにカッツェが狩りに行くらしい。で、明日は交代してカッツェが留守番でニニが狩りに行くらしい。
成る程、つまりもう明日も狩りに行くって決まっているって事だな。
まあ、もうほぼミルクは卒業しているし、ニニが常についている必要もなくなってきているって事だ。うん、いい感じに順調に成長しているな。
そこまで考えて、ふと我に返る。
あれ? 卒乳しちゃったら、いわゆる乳離れでもう里親に出してもいいって事じゃあ……。
いやいや、まだまだあいつらは子猫だよ。お外デビューをようやく果たしたところなんだから、無理は駄目だって!
脳内で思いっきり大きなばつ印を作って深呼吸をした俺は、嬉々として出発していくハスフェル達を見送ったのだった。
ちなみに今回はシルヴァ達が連れているスライム達もいるので、俺のスライム達は全員残ってくれているよ。
「さて、それじゃあ俺も行くとするか」
ひとしきり子猫達を撫で回して癒された俺は、出掛ける前に、留守番組の普段あまり触れ合わないイグアナ達を順番に撫でてやり、他の留守番の面々も順番におにぎりしてやる。
それから、ようやく気温が上がってきたとはいえ、まだ寒いみたいだから一応俺の部屋の暖房器具とコタツはいつも通りにつけておく事にする。
それから待っていたマックスに、手早く鞍と手綱を取り付けて外へ出ていった。
一緒に街へ行くのは、マックスとスライム達以外はファルコが来てくれるらしい。
「ううん、今日もいい天気だ。日に日に春めいてきているなあ。日差しが明らかに冬とは違うよ」
真っ青な空を見上げた俺は、一つ深呼吸をしてから戸締りをして、マックスに飛び乗って一人で街へ向かったのだった。