夕食は何?
「おおい、もうそろそろ戻って来いよ〜〜いい加減にしないと日が暮れちゃうぞ〜〜」
しかし、俺の呼びかけにも知らん顔で、広い庭を所狭しと嬉々として走り回っている子猫達と従魔達。
もう最初に遊んでいたオンハルトの爺さんが作ってくれた猫じゃらしは早々に崩壊してしまい、その後のハスフェルとレオが作ったのも同じく順番にバラバラになってしまい、今遊んでいるのは、エリゴールとギイが作ってくれた猫じゃらしだが、どちらももう風前の灯だよ。
ロープの先に作られた房の部分が、あちこちに抜けて散らばっていて崩壊寸前状態だ。
「ちゅかまえたにゃ!」
見事なジャンプを見せたミニヨンが、空中に放り投げられた猫じゃらしをキャッチする。
そのまま地面に着地して噛みつき攻撃プラス猫キックの連続攻撃をお見舞いしたのだが、残念ながらもうそれに持ち堪えるだけの強度が残っていなかったらしく、呆気なく短いロープが弾け飛んで崩壊してしまった。
もう一つの最後の猫じゃらしも、マニとカリーノが両端を咥えて引っ張り合いっこをしたおかげでこちらも崩壊してしまい、ここで追いかけっこは終了となった。
だけど子猫達は芝生の感触が気に入ったらしく、撤収の呼びかけにも知らん顔で三匹が一緒になって転がって戯れあっている。
興奮しすぎて尻尾も背中の毛も豪快に逆立っているんだけど、そんな様子も可愛くてついつい見惚れてしまう。
「ああ、いかんいかん。もう真っ暗じゃないか。もういい加減に戻るぞ。また明日遊ぼうって」
結局見学していただけの俺達は、実は地味に寒い。
最後には見兼ねたニニとカッツェ、それからティグが子猫達を確保してくれて、三匹並んで首を咥えられたまま部屋まで連行されて行ったのだった。
「いやあ、どんだけ体力あるんだよってくらいに元気一杯だったな」
「確かに凄かったな。だけど、あの尻尾を膨らませて、背中の毛まで尖らせながら走り回るのはめちゃくちゃ可愛かったな」
廊下を歩きながら笑ったハスフェルとギイの言葉に、その場にいた全員が全力で頷いてる。
「じゃあ、ちょっと寒くなった事だし、今夜はいろんな鍋にしよう。準備手伝ってくれるか」
「はあい! お手伝いしま〜〜す!」
足元に一緒に転がっていたスライム達が、一斉に跳ね回って自己主張している。
鍋料理は、すぐに食べられるように色々と用意してあるし、作り置きがなくなってもすぐに出来るようにお出汁やタレも色々と大量に作り置きしているんだよ。
肉や野菜は、スライム達が用意してくれるからすぐだしな。鍋料理は俺も楽出来るメニューだから、春になっても作るよ。まあ真夏はさすがにちょっと無理だろうけどさ。
「鍋料理なら、俺は味噌味の牡丹鍋が食べたいです!」
鍋料理と聞いて、ランドルさんが笑顔で手を挙げてそう言って笑う。
「はい! 俺はあの甘いすき焼きが食べたいです!」
そう言って手を挙げたのは、草原エルフ三兄弟。
「はい! キムチ鍋が食べたいです!」
満面の笑みのリナさんの言葉に、笑顔で一緒に手を挙げているアルデアさん。
「私はハイランドチキンの水炊きがいいな〜〜〜あの最後の雑炊が食べたい!」
右手を上げたシルヴァの言葉に、レオとエリゴールも手を挙げている。
「俺はあの、岩豚で作ったミルフィーユ鍋ってのが食いたいが、さすがに無理か?」
「ああ、あれは美味かったよな」
ハスフェルの言葉にギイとオンハルトの爺さんも頷いている。
「まかせろ。全部仕込んであるからすぐに用意出来るよ。それじゃあもうこのままリビングへ行こう」
ってことで、子猫達も、この際だからお外に続いてリビングもデビューだ。
ちなみに、今はもう子猫達は降ろしてもらって自分の足で廊下を歩いている。
初めて廊下に下ろされた時はめっちゃビビっていたんだけど、皆が平気そうにしているのを見てなんとか落ち着き、ニニとカッツェに張り付くみたいにしてなんとか歩き出したのだった。
尻尾全開状態でビビっている子猫達は、めちゃくちゃ可愛かった。マジでどうして、この手元にスマホもカメラも無いのか考えて本気で悲しかった俺だよ。
ああ、この世界に記録媒体が無いのが悔やまれる! フクシアさん! お願いだから今すぐにカメラとビデオを発明してください!