子猫達の愛情が重い!
「みんにゃでにゃかよく」
「ごちゅじんのおひざにゃの〜〜」
「にゃかよくにゃの〜〜」
「はいはい、皆仲良く一緒に、だよな」
ご機嫌な三匹の言葉に、苦笑いした俺はそう言いながらマニの顔をおにぎりにしてやった。
結局、あの後も俺の膝の上争奪戦は延々と続いたんだけど勝負はつかず、最後の妥協案となったのが今の状態だ。
まず、ソファーに座る俺の左右に陣取ったミニヨンとカリーノが、それぞれ俺の太ももに顎を乗せて寝そべるようにしてくっつき、一番体の小さなマニは、何故か床に良い子座りした状態で俺の股の間に陣取り、俺の腹の上に顎を乗せて甘えると言う、なんとも猫まみれな幸せ空間が出来上がっていたのだった。
しかし、残念だが俺の腕は二本しかない。
なので三匹の子猫達の頭を順番に交互に撫で回したり、おにぎりにしたりしてやったよ。
生まれた時に比べれば、倍以上に大きくなった子猫達。
大きさだけなら、大型犬どころかもうリアル馬サイズだ。
頭も大きくなっているから、割と本気でそろそろ俺の太ももの血流がお亡くなりになっているんだけどなあ……だけど、これをどかすのは絶対駄目だ。
何しろご機嫌な三匹は、俺の膝と腹をそれぞれ独り占めしてそのまま寝落ちしたんだからさ。
「無防備な顔で寝ちゃって。可愛いもんだなあ……」
アクアが届けてくれた、机の上に置きっぱなしになってすっかり冷めたコーヒーをグイッと飲み干す。
二杯目のコーヒーを入れるかどうか考えていると、頭の中に若干寝ぼけたハスフェルの念話の声が聞こえた。
『おはよう。もう起きてるか?』
『おう、おはようさん。まあ、もうおはようの時間じゃあないけどな。少し前に起きて、今はソファーで子猫達にくっつかれているよ。じゃあ何か食べるか?』
カリーノとミニヨンの頭を手を伸ばして撫でてやりながらそう言ってやる。実を言うと俺もちょっと腹が減ってきているんだよな。
だけどこの可愛い子達が起きてくれるまで、俺は動けないよ。
『あはは、幸せで結構な事じゃあないか。それならそっちへ行くから何か出してくれるか?』
『了解〜〜じゃあ、リナさん達やランドルさんも起こしてきてくれよな』
『分かった。それじゃあ後でな』
笑ったハスフェルの気配が消える。
「さて、動けないんだけど、どうしようかなあ」
笑いながら三匹の頭を順番に撫で回す。
ご機嫌で喉を鳴らし始めた三匹。おお、俺の太ももと腹にぶるぶると振動が響いているぞ……うん、マジで膝から下が痺れてきた。
これはヤバいかも……。
無言で悶絶していると、軽いノックの音が聞こえた。
「誰か開けてやって……」
正直それどころではない俺は、そう言ってソファーの背もたれに体を倒す。
ああ、痛い痛い、これは冗談抜きでヤバい。今誰か来ても、俺は全く動けないぞ。
「おはようございます」
スライムの誰かが開けてくれた扉から、リナさんの声とともに全員勢揃いで入ってくる。
「あらあら、すっかりケンさんに甘えて、可愛い!」
リナさんの声が割と近くで聞こえるんだけど、マジでもう膝から下の感覚が無い俺に応える余裕はない。
「あら、どうかしました?」
リナさんが、俺の様子が変なのに気づいたらしく、心配そうに覗き込んでくる。
「いや、あの、足がですね……」
「どうしたの? お腹空いてるんだけどな」
その時、シルヴァとグレイが、リナさんの背後から俺を覗き込む。
ああそっか、リナさん達やランドルさんがいるから、スライム達に勝手に出してもらうわけにはいかないのか。
納得はしたけど、だからと言って事態が好転するわけもない。
一瞬動いただけでとんでもない痺れの波が走り声も上げられずに悶絶していると、シルヴァが俺を覗き込むのに、よりにもよって俺の膝に手をついたんだよ!
「あんぎゃ〜〜〜〜!」
堪えきれない俺の悲鳴と、驚いた子猫達がすっ飛んで逃げていく。
そしてソファーに倒れてひくひくと痙攣する俺……。
突然の俺の悲鳴の理由が分かって、部屋が大爆笑になったのは言うまでもない。覚えてろよ、お前ら。
ううん、しかしそろそろ子猫達とのふれあいも命懸けになってきたよな。ははは……。
結局、しばらく待ってもらってようやく痺れが普通くらいになったところで、揃ってリビングへ移動。
俺の部屋のテーブルでは、この大人数が一緒には食べられなかったからだよ。
リビングに到着した俺は、鞄に入ってくれたサクラからいつものように作り置きを色々取り出し、ランドルさんやアーケル君達もそれぞれ出してくれた買い置きのいろんな料理と一緒に並べて、皆で美味しくいただいたよ。
まあ、あの岩食い騒ぎで大量に仕込んだ作り置きが一気に減ったから、この後はまた、俺は留守番して料理三昧だね。
作るのは大変だけど、人数も増えた事だし頑張って作るぞ〜〜〜!