いつもとちょっと違う朝の光景
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
「うん……起きるよ……」
もふもふなニニの腹毛に顔を埋め、もふもふを抱きしめていた俺は、いつものモーニングコールに半ば無意識で返事をした。
だけど寝汚い俺の体は全然目を開けてくれなくて、結局そのまま二度寝の海へ墜落していったのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
「うん、起きるってば……」
「ほらね。毎回こんな感じで全然起きないのよ」
「だから私たちが起こしてあげているの」
「あなた達の爪はまだ鋭いから、ふみふみはもうちょっとしてからね」
「ほら、一緒に舐めてあげましょう！」
耳元で聞こえるのは、ソレイユとフォールの猛獣コンビの声。しかもなぜか巨大化している……そして、誰に説明しているんだ？
そこまで考えた時、胸元で笑う声が聞こえた。
「ご主人、悪い事言わないからそろそろ起きたほうがいいと思うわよ」
その声はフランマだ。おお、って事は……ううん、相変わらずフランマの尻尾は最高だなあ……。
若干寝ぼけた頭でそんなことを考えつつ、手を伸ばしてフランマの尻尾を撫でる。撫でる。撫でる。
無言で幸せ尻尾を満喫していた時、突然耳元にぬるい息を吹きかけられた。
「あ、やばい！」
慌てて起きようとしたその時、俺の右頬と右の瞼、それから額、そして両手の甲と鼻の頭をそれぞれ舐められたのだ。
ザリザリザリ！
ジョリジョリジョリ！
ゾリゾリゾリ！
ジョリ〜〜〜ン！
ショリショリショリ！
ショリショリショリ！
ショリショリショリ！
「うひゃ〜〜〜〜〜〜！！ げふう！」
突然の衝撃に堪えきれない悲鳴を上げる俺。
そして俺の腹を力一杯蹴飛ばして逃げていくフランマと、悶絶する俺。これ、絶対わざとだろう。と毎回言いたくなるぞ。
「ご主人起きた〜〜〜！」
「おちた〜〜！」
「おちたねえ」
「おちたね」
少し離れたところで聞こえる、ちょっと舌足らずな可愛らしい声。
「ああ、今の俺の腕を舐めたのって、もしかしてお前らか！」
なんとか起き上がった俺の言葉に、仲良く良い子座りしていた子猫達が揃って声のないニャーをくれる。
「うああ、なんて可愛いんだお前らは〜〜〜！」
両手を広げて三匹に飛びつく。
「きゃ〜〜」
「だれかたしゅけて〜〜」
「おそわりぇりゅ〜〜」
「誰が襲ってるんだよ！ これは愛情表現です〜〜〜！」
一旦手を止めて踏ん反り返った俺の言葉に、背後で大爆笑しているシャムエル様とベリー達。
「あはは、とうとう開き直った！」
大爆笑するシャムエル様の言葉に、俺もカリーノに抱きつきながら一緒になって大笑いしていたのだった。
「はあ、子猫達に起こしてもらえる日が来るなんて、最高だな」
ミニヨンとマニも順番に抱きついてなで回しながらそう呟くと、なぜかドヤ顔になる子猫達。
「チビ達ばっかりずるい〜〜〜！」
「私も私も〜〜〜！」
とうとう我慢出来なくなったらしいソレイユとフォールが、一応いつもの猫サイズに戻ってから俺の腕と体の間に、二匹揃って鼻先を突っ込んでくる。
「わかったわかった。起きるからちょっと待ってくれって」
子猫達を離して二匹を順番におにぎりしていると、同じく猫サイズになったティグとヤミー、それからマロンとタロンが揃って突っ込んできてまたニニの腹の上に押し倒される。
そこへ、大型犬サイズのセーブルが飛び込んでくる。
「どわあ、だからお前ら、いくら小さいからって同時に来るんじゃねえって！ つ〜〜ぶ〜〜れ〜〜る〜〜〜〜！」
幸せパラダイス空間に逆戻りした俺は、小さなもふもふ達に蹂躙されつつ何とか起きあがろうとした。
「ごちゅじん、だいちゅき！」
「ごちゅじん、だいちゅき！」
「ごちゅじん、だいちゅき！」
舌足らずな声とともに、ふわふわな毛玉達が突っ込んでくる。
「うああ、殺人毛玉攻撃に、抵抗なんて出来るわけない〜〜〜！」
飛びつかれたまま歓喜の悲鳴を上げた俺は、両手で捕まえたカリーノとマニを、二匹一緒に抱きしめながら二度寝ならぬ三度寝の海へ墜落していったのだった。
「はあ、この柔らかなふわふわの毛……幸せすぎる……」
2023年4月14日、アーススターノベル様より、もふむくの四巻が発売となりました！
表紙とイラストは引き続き、れんた様が素敵に描いてくださいました。
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
