初めての添い寝!
「はあ、大満足〜! それじゃあ今夜はここまでかな」
「そうね。それじゃあ休みましょうか」
散々子猫達に抱きついて満足したらしく、しばらくしてようやく立ち上がった彼女達がそう言ってくれたので、とりあえず今夜はここで解散になった。
空いている部屋は沢山あるので、一通り案内してシルヴァ達にはそれぞれ好きな部屋を使ってもらう事にした。
こっちの棟の部屋は、誰かが来た時に客間として使う事を考えて、一応一通りの部屋には掃除と片付け、それから最低限寝られるように新しいベッドやソファーなんかをお願いしてあったんだよ。大柄なエリゴールや、おそらくベッドで飛び跳ねたりしそうなシルヴァ達を見て、用意しておいてもらって良かったと、割と本気で思ったよ。
オンハルトの爺さんは、以前使っていた部屋をそのまま使うみたいで、手を上げて部屋に入っていき、レオとエリゴールは、それを見て爺さんの両隣の部屋に入っていった。うん、適当に選んだ感ありありだったぞ。
女性二人は、廊下を挟んだ向かい側のもう少し広い部屋をそれぞれ選び、キングサイズのベッドを見て、またお姫様ごっことか言って大はしゃぎしている。
まあ、別に誰に迷惑かけるわけでなし、好きにさせておこう……。
「それじゃあ俺も戻るよ。明日はもうお休みにする予定だから、ゆっくりしてくれよな」
「はあい、おやすみなさ〜い!」
「おやすみ、また明日ね」
並んでベッドに座っているシルヴァとグレイに手を振り、俺も急いで自分の部屋に戻った。
「はあ、本当に色々と大騒ぎだったなあ。まじで疲れたよ」
大きなあくびを一つした俺は、とにかく防具を脱いで身軽になる。そして、とにかくまずは風呂の準備をしたよ。
それを見て、部屋中に散らばって転がっていたスライム達が、いそいそと風呂場の前に集まってくる。
「じゃあ風呂に入ってくるからな」
マックスに抱きついてそう言い、それから産室の中にいるニニとカッツェ、それから子猫達も順番に撫でてやる。
ちなみに子猫達は疲れたらしく、撫でている間中ずっと爆睡中で無反応だったよ。
従魔達全員としっかり触れ合ってから、手早く着ているものを全部脱ぎいつものタオル用にしている手ぬぐいを持って風呂に入る。
「ううん、この湯気がいい感じだ」
部屋中に立ち込める真っ白な湯気に満足して深呼吸をひとつ。掛かり湯をしてから、ゆっくりと湯に浸かる。
「うああ、やっぱり風呂は最高だな」
そう呟き、待ち構えているスライム達には硬めに作った氷のボールを幾つか用意してやる。
俺が湯船に浸かっている間は、洗い場でボール遊びを、俺が体を洗っている間は、さらに硬く凍らせたボールを使ってスライム達は湯船で水球タイム。ってのが最近の俺達のお風呂タイムのお約束だ。
しかもこの洗い場用に作るのは、いわゆるラグビーボールや楕円形、それから八面体など、普通の球体と違って真っ直ぐに転がらない形ばかりだ。
時にはランダムに変形した丸形とかも作っているから、もうスライム達は大はしゃぎで先を争うようにして転がるボールを追いかけている。
そのおかげで、湯船に遠慮なく足を伸ばして入れるし、俺の愚息と心の平安は保たれている。
しっかり温まって体も一応洗い、もう一回しっかり湯に浸かってから部屋に戻る。
サクラが一瞬で濡れた体をきれいにしてくれるから、そのまま服を着て部屋に戻る。
ちなみに、風呂から上がったあとは、街で買ってきたスリッパを履いているよ。
寝る時は冬でも裸足派だった俺は、こっちの世界でも部屋で寝る時はほぼ裸足だよ。だって、素足にマックスのむくむくな毛やニニのもふもふな毛が当たると、なんだかそれだけで幸せになれるんだよな。
「さて、今日の添い寝役は誰だったっけなあ」
ペタペタとスリッパを鳴らしながらベッドへ向かった俺は、目に飛び込んできた光景に思わず足を止めた。
だって、俺が風呂に入っていた間に、ニニとカッツェが子猫達を全員連れてベッドへ移動していたんだからさ。
ベッドの横にはドヤ顔のマックス達が座って俺を見ている。
「ええ、もしかして、もしかして子猫達と一緒に寝てもいいのか!」
目の前の光景が信じられなくてそう叫ぶように尋ねると、目を細めたニニが声のないニャーをくれた。
ああ、不整脈が……。
「いいのか? 本当にいいのか?」
既にベッドに横になっているニニのお腹には、いつものように子猫達が並んで寝転がっている。
「ほら、ご主人はここ」
ニニの声に頷き、スリッパを脱いでいそいそとニニのお腹へ潜り込む。
入った場所は、カリーノとマニの間だ。
「おお、幸せパラダイス空間がさらにレベルアップしたぞ。これ」
子猫特有の、ふわふわの柔らかい毛並み、カリーノはニニほどではないが毛が長いので柔らかさは抜群だし、短毛種そのままって感じのマニの毛も、これまたふわふわで最高の触り心地だよ。
「ああ、もうこのまま昇天しそうだ……」
両手を伸ばして子猫達を撫でまくる俺。
そしてそのまま自分の顔の前にいたマニに抱きつき、さっきのシルヴァ達のように胸元に顔を埋める。
スーハースーハースーハースーハー……。
「ああ、幸せ……」
ふわふわな毛に顔を埋めて小さくそう呟いた俺は、そのまま気持ちよく眠りの国へ旅立っていったのだった。