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子猫達の行く末は安泰だよ!

「どうかよろしくお願いします!」

 ランドルさんとリナさんの声が揃い、左右から二人が揃って頭を下げてくれる。

 驚きのあまり固まった俺だったけど、もうこれ以上ないくらいの笑顔になって二人の肩を叩いた。

「あの、とにかく顔を上げてください!」

 俺の言葉に、二人がゆっくりと顔を上げて俺を見る。

「実は、その件はこちらからお願いしようかと思っていたんです。里親に立候補してくれて嬉しいです。もちろん喜んでお譲りします。どうかあの子達の事、よろしくお願いします!」

 俺もそう言って深々と頭を下げる。

 左右から奇妙な呻き声が聞こえた直後、甲高い歓声と低い歓声が同時に聞こえて俺は堪える間も無く吹き出したよ。



 それなりの付き合いになって、ランドルさんもリナさんも、どちらも信頼出来る人物であるのは分かっている。それから為人(ひととなり)についてもよく知っているつもりだ。

 もちろん二人とも有能な魔獣使いで、自分の従魔達をとても可愛がってくれている。そして命の重みをちゃんと理解してくれている。

 彼らの元へ行けば、きっとあの子達も幸せになれるだろう。

 それに、ミニヨンは今でも他の子達よりも体の大きな雄だから、きっとカッツェのような立派な強い雄になって、本当にルルちゃんのお婿さんになってくれるかもしれない。

 うわあ、そんな事になったら、ニニとカッツェに孫が産まれるって事だよ。

 ああ、もう今から歓喜の殺人毛玉達誕生の想像が止まらないよ!

 あれ? ちょっと待てよ。ニニは俺の子供みたいなもんだから……ミニヨン達は孫みたいなもので、

 って事は、ミニヨンに子供が生まれたら俺のひ孫〜〜〜? 異世界凄いぞ!

 口元のよだれをこっそり拭い、思考が変な方向に暴走しかけているので、一つ呼吸をして無理矢理現実に引き戻す。



 はあ、水が美味しい。



 そこで我に返って誤魔化すように咳払いひとつ。

「もちろん、お譲りするのはちゃんと乳離れしてテイム出来るようになってからですけれどね」

 まだまだ俺だって子猫達と遊びたいんだから、そこはしっかりと主張しておく。

「ああ、それはもちろんです。最低でも半年程度は、親の元で過ごさせたほうが子猫達の為にもいいでしょうからね」

 揃ってうんうんと頷き合ったところで、部屋にいた全員が振り返って大注目状態で俺達の会話を聞いているのに気付いた。

「おおう、びっくりした」

 わざとらしくのけ反り、誤魔化すように笑う。

「ええ、子猫ちゃん達手元に置かないの〜〜?」

 カリーノの胸元から顔を上げたグレイの声に、俺は笑って首を振った。

「無茶言うなよ。そりゃあ俺だってどの子も可愛いから叶うならずっと手元におきたいと思うよ。だけどジェムモンスターと違って魔獣は体の大きさを変えられないんだから。連れて歩くには、やっぱりある程度は数に制限があるよ」

 水筒を置いて立ち上がりながらそう言い、子猫達の側へ行ってカリーノをそっと撫でてやる。

「今はこんな大きさだけど、大きくなったらニニやカッツェと同じになるんだぞ」

「まあそうか。確かにちょっと無理かぁ」

 残念そうにそう言って、またカリーノに全身で抱きつくグレイ。

 隣では、ミニヨンにこちらも全身で抱きついたシルヴァが、同じように苦笑いしながらうんうんと頷いている。

「もちろん、里子に出したからってそれで縁が切れるわけじゃあないさ。仲の良い魔獣使いの冒険者が引き受けてくれるのなら、嬉しい事だよ」

「もちろん、最初にちゃんとケンさんがテイムしてから譲ってくださいね。そうすれば両方の紋章が刻まれるんですからね」

 リナさんの言葉に、俺達は笑顔で頷き合った。



 そうだよ。ハンプールの街でクーヘンにスライム達を譲った時に発見した、紋章の一件。

 魔獣使い同士で従魔を譲り合った場合、重ね掛けをして前の紋章が消えるのではなく、二つの紋章が混じり合って新たな紋章として刻まれるんだよ。あれはちょっと感動した。

 新たに次の紋章が刻まれるのではなく、ちゃんと前のご主人の紋章を残して……。

 そこまで考えて、不意にある事に気付いてしまった。

 セーブルの時は、前のご主人の紋章の上に俺が自分の紋章を刻んだ。あの時に俺が願ったのは、あの僅かに残った前のご主人の紋章を消さずに俺の紋章を刻みたいって事だった。

 実際にセーブルの紋章は、ごく薄い前のご主人の紋章の上から俺の紋章が刻まれた状態で、言ってみれば消えかけのスタンプの上から、別の柄の新しいスタンプを押したみたいな状態なんだよ。

 だけど今は、混じり合った紋章が刻まれている。この違いは何なんだ?

 無言でシャムエル様を見ると、にっこり笑って小さく首を縦に振った。

『よく気が付きました。そうだよ。ケンの考えている通りで、セーブルとヤミーの一件があってからさ、私的にも思うところがあって、ちょっとそこら辺の設定を変えたの。だけどこれの詳しい話は、さっきの話と一緒に人の子達が部屋に戻ってからね』

 笑ったシャムエル様の念話での説明に、俺も納得して頷いていたのだった。


挿絵(By みてみん)

2023年4月14日、アーススターノベル様より、もふむくの四巻が発売となりました!

表紙とイラストは引き続き、れんた様が素敵に描いてくださいました。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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