子猫達と俺
「ああ、可愛い。そうよ、こうしたかったの〜〜〜!」
改めて子猫達に自己紹介したシルヴァとグレイは、ちゃんと子猫達にくっついてもいいか尋ねてから、歓喜の雄叫びとともに子猫に抱きついてまたしてもスーハーと深呼吸という名の猫吸いを始めていた。
一応言葉は通じるものの、まだ他の従魔達みたいな滑らかな会話は出来ない子猫達は、自分達に張り付くみたいにしてスーハースーハーしているシルヴァ達を見て、完全にドン引きしていた。
あ、可愛らしい耳が完全にイカ耳になってるし……。
これは、そろそろ助けてやらないと、今度は引っ掻き傷ではすまないだろうからな。
「だ〜か〜ら〜〜ちょっと落ち着けって」
二人とも、子猫達に抱きついたままで全く顔を上げる様子がないので、苦笑いした俺は適当なところで無理やりシルヴァとグレイを順番に引き剥がしてやった。
引き剥がした彼女達の体を、その反動を利用してゆっくりとソファーに放り投げた俺を見た子猫達の目がキラッキラになる。今多分、子猫達の俺への好感度が爆上がりした模様。ラッキー!
「ああ、もうちょっと吸いたかったのに〜〜」
「ケンったら、引き剥がすなんてひどいわ〜〜〜」
ハスフェル達でも寝られるくらいに大きなソファーに並んで転がった二人が、笑いながらそう言って置いてあったクッションに抱きつく。
文句を言ってはいるけれども、その顔はこれ以上ないくらいに楽しそうな笑顔だ。
「過度なスキンシップは子猫達が嫌がっているから駄目です。抱きつきたくなる気持ちは分かるけど、もうちょっと相手の様子を見てからやろうな」
笑いながらそう言ってやると、口を尖らせつつも二人揃って元気よく返事をしてくれたよ。
「ええとねえ、むっちゃはいやだけど」
「ごちゅじんにゃら、ちょっとくらいくっちゅいてもダイジョーブだよ〜」
「だよ〜〜」
聞きなれない舌足らずなその声に、俺は目を見開いてすごい勢いで振り返る。
そこには、キラキラに目を輝かせた子猫達三匹が、揃って俺を見つめていたのだ。
「ええ、いいのか?」
俺の叫びに、揃って喉を鳴らした子猫達が頷く。
その喉の鳴らし方一つとっても、ニニ達とは違ってなんというか下手くそだ。
だけど今はその下手さがたまらないくらいに愛おしい。
「ありがとうな! 大好きだよ!」
両手を広げてそう叫んだ俺は、今度こそ遠慮なく一番近くにいたマニの胸元へ飛び込んでいった。
「ごちゅじん、だいちゅき!」
嬉しそうにそう言ったマニが、抱きついている俺の額を舐める。
「うひゃあ〜〜痛いって。人間の皮膚は、お前達より遥かに薄くて柔らかいんだから、もっと優しく扱ってくれないと駄目なんだぞ〜〜」
「そうよ。こんなふうにするのよ。頑張って覚えてね」
優しい声でそう言ったティグが、一瞬で巨大化して俺のところへ来る。逃げようとしたけれど、残念ながらいつの間にか笑顔の従魔達に取り囲まれていて、逃げるのはもう不可能だったよ。
べろ〜〜〜〜〜〜ん!
「ふぎゃ〜〜〜〜!」
俺の左頬を巨大化したティグの舌先で舐められて、俺は情けない悲鳴を上げたのだった。