帰宅と子猫達の事
「到着〜〜〜〜!」
広い敷地も従魔達の全力疾走にかかると全然問題なし。あっという間にお城へ到着した。
「うわあ、オンハルトから広いとは聞いていたけど、冗談抜きですっげえ」
セーブルに乗ったエリゴールの呆れたような呟きに、すぐ後ろにいたテンペストに乗ったレオがもの凄い勢いで頷いている。そして、揃って歓喜の歓声を上げているのがシルヴァとグレイ。
「きゃあ〜〜〜! すごいわすごいわ。本当にお城だ〜〜〜!」
「きゃあ〜〜〜〜〜〜! 素敵素敵〜〜〜! お城でお姫様ごっこよ〜〜〜!」
「なんだよその、お姫様ごっこって!」
突っ込んだ俺は間違ってないよな?
背後では、俺のツッコミにハスフェル達が大爆笑していた。
「さあ、とにかく入ってくれよ」
マックスから飛び降りた俺は、笑顔でそう言って玄関の大扉の鍵を開ける。
オンハルトの爺さんがエルクのエラフィーを厩舎へ連れて行くのを見て、ギイが鞍を外したブラックラプトルのデネブがいそいそって感じで爺さんの後を追いかけていった。
いつもあの二匹は、仲良く厩舎にいたからな。
笑ったギイがその後を追いかけるのを見送り、俺達は揃って中へ入った。
俺達はもうこの豪華なお城の内装にもすっかり見慣れていて平気だったんだけど、シルヴァとグレイはもうどこを見ても大興奮状態。
そして、またしても何度も出るお姫様ごっこの言葉。
もう突っ込む隙もないくらいにずっと喋っている二人を見て、まあこんなに喜んでくれるのなら、このお城買って良かったかな、なんてのんびりと考えていたのだった。
「ほら、ここが俺の部屋。ニニの産室が置いてある場所だよ」
リナさん達とランドルさんは一度部屋に戻ってから来ると言うので、一旦廊下で別れてシルヴァ達を俺の部屋に案内する。
べ、別に変な下心があるわけじゃあないんだからな! と、心の中で誰かに向かって必死になって言い訳しつつ、部屋に入った俺はそのまま早足で産室に駆け寄った。
俺の背後から産室の中を覗き込んだ神様達の、歓喜の叫びが耳元で聞こえてしまい、俺は耳を押さえて飛び上がったのだった。
ちなみに生まれて二ヶ月をそろそろ超える子猫達は、そりゃあもう驚く程にガンガン大きくなっていて、あの、不自然なくらいに顔の横側についていた小さな耳も、ちゃんと綺麗な三角形になって猫として正しい定位置に収まっている。
毛の長短はあれど、シルエットもすっかり猫の形になっているよ。
目の色もなんとなくだけど変わってきていて、マニの目の色は、黄色に近い薄めのグリーン。黄緑色ってのが一番近いかな。
カリーノは、キトゥンブルーからどんどん白みと青みが増していて、もうほぼ水色で確定だと思っている。
虎柄のミニヨンは、いわゆる金眼だ。綺麗な黄色なんだけど、陽の光が当たると本当の金色みたいに見えてとても綺麗だ。
ちなみに三匹とも尻尾は長くて縞模様なんだけど、触って確かめたところ三匹全員が、若干折れ曲がった鍵尻尾になっていたよ。
ちなみに、ニニも毛が長いので全然分からないが、触ると先の方で雷模様みたいにギザギザに三箇所ほど折れ曲がっている。逆にカッツェの尻尾はどこにも曲がっている部分が無くて、とても綺麗な長くて真っ直ぐな尻尾をしている。
最近では、この長い尻尾で子猫達をじゃらかして遊んでやったりもしている。あれ、思いっきり噛まれていると思うんだけど、大丈夫なのかね?
静かだなと思って産室の中を覗き込むと、三匹並んでへそ天状態で転がっている。どうやらミルクをもらって大満足みたいだ。
食事はそろそろミルクが終了らしく、毎回ミルクではなく、ハイランドチキンの胸肉をミンチ状にしたものや、茹でて軽く指で裂いた物なんかを交代で食べさせたりしている。この辺りの匙加減はベリーが都度詳しく教えてくれるので、本当に助かっているよ。
子猫を育てた事なんてない俺だけだったら、絶対今頃詰んでる。
もう、ニニもカッツェも子猫達と一緒に寝ている時もあるが、生まれた頃のように四六時中一緒にいるわけではない。
大きくなった子猫達は、元気いっぱいって感じで広い部屋の中をものすごい勢いで走り回っている。それに釣られて、他の従魔達まで一緒になって走り回ったりするもんだから、たまに身の危険を感じて廊下に避難したりした事もあったよ。
それから、まだニニやマックスみたいな完全な言葉による意思疎通は出来ないけれど、一応俺の言う事もある程度は分かってきているみたいだ。なので子猫特有のふわふわな毛を撫でたり、少しだけ添い寝をしたり、かなり解放されてきている。
それでも走り回ったりじゃれ具合の勢いが半端ないので、さすがにまだ危険だからと従魔達全員に真顔で言われて子猫との遊びの全面解放にはまだ至っていない。
ううん、早く一緒に遊びたいよ!
まあ、そんな状態なので、大きくなった子猫とはある意味生まれたての頃よりも接する機会が駄々減りで、俺は実はかなり寂しい思いをしていた。怪我は絶対に駄目なんだけどさ。