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ギルドにて

「おお、待っていたぞ。ほら、こっちへどうぞ」

 テイマーの青年と別れた俺達は、当初の目的地である冒険者ギルドに到着していた。そして、満面の笑みで待ち構えていたギルドマスターのガンスさんとスタッフさん達に捕まり、そのまま俺は連行されるみたいにして別室へ連れて行かれたのだった。



「で、何を売ってくれるんだ?」

 以前、メタルブルーユリシスの翅を大量に売った時みたいに、スタッフさん達が総出で待ち構えているし、大小様々な木箱やトレー、台車に猫車ともう買い取り準備万端って感じだ。

「はいはい、何でもありますから、お好きなだけどうぞ。あ、メタルブルーユリシスの翅も要ります?」

「喜んで頂くぞ!」

 真顔のガンスさんの叫びに、スタッフさん達も満面の笑みで頷いている。

「ええと、じゃあまずはそこからですね」

 あまりの食いつきっぷりに若干ドン引きしつつ、まずは用意していたケースに入るだけメタルブルーユリシスの翅を取り出し始めた。



 今回は、俺だけじゃあなくてリナさん一家も手持ちのジェムや素材、ドロップアイテムなどを放出する予定だ。ランドルさんは、ハンプールの街へ戻って、バッカスさんの店に渡すつもりらしく、今回は辞退したみたいだ。

 まあ、今回はハスフェル達も手持ちをいくらか売るつもりみたいだから、さすがにちょっと供給過剰になるんじゃあないかと密かに心配しているくらいだからな。

 ドロップアイテムである収納袋は、それはもう大喜びされたよ。

 だけど聞いたところ、バイゼンの近くにある別の地下洞窟でも量自体はそれほどでもないが、幾つか出ていたらしく、若干収納袋の相場価格が全体に下がっているんだって。

 それを聞いて、アーケル君達が売った方が良いのか考え込んでいる。

「あ、それなら俺は価格は気にしていないから、ここは俺が出すよ。アーケル君達は、王都へ行った時にでも手持ちを売れば、ここよりは高値が付くんじゃないか?」

 そう言いながら、俺の手持ちの収納袋の中でも人気があるのだという、やや低めの倍率を中心にガンガン取り出していく。

「ああ、そうですね。じゃあ、ここはお願いしてもいいですか?」

 苦笑いして下がるアーケル君達に、サムズアップを返しておいたよ。




「いやあ、これはまた素晴らしい量と種類だな。ありがとうな。これで当分の間、何があっても大丈夫だ」

 目の前に積み上がったジェム各種の山を見て、ガンスさんが嬉しそうにそう言って笑っている。

「まだまだありますから、いつでも言ってくださいね、少しでもお役に立てるなら嬉しいですよ」

 そう言って笑いながらも、全部の買取価格がどれくらいになるのかちょっと遠い目になる俺だったよ。

「じゃあ、今回の引き渡しはこれくらいかな。いやあ、思った以上のすごい量になったなあ」

 預かり表を受け取り、改めて今回渡した分を確認してもう笑いしか出ない。

「春には、野焼き用の火炎放射器用の大きめのジェムが幾つも必要になるので、恐竜のジェムに余裕があるのは有難いよ」

 苦笑いするその言葉に思わず振り返る。

「ええ。野焼き?」

 意外な名前が出てきて、思わずそう尋ねる。

「おう、まだもう少し先だが、主に郊外の牧草地の辺りに春になったら火を入れるんだよ。もちろん、ちゃんと管理して燃やしていいところだけを燃やすのさ」

 どうやら俺の知る野焼きと大差ないみたいだ。

「へえ、火炎放射器ねえ。そんなのがあるんだ。確か、フクシアさんが初めて会った時にそんな事を言っていたよなあ。確か、畝焼き用の小型の火炎放射器って言ってたっけ」

 感心したようにそう呟くと、にっこりと笑ったガンスさんが俺の腕を軽く叩いた。

「ああ、もちろん畝焼用のジェムも大量に必要だよ。覚えていてくれたとは驚きだよ。そうそう、フクシアが作った、例の飛び地攻略用の新装備を見てやってくれるか?」

「おお、もしかしてあの硬いイバラを切り開く為の道具が出来上がったんですか?」

 目を輝かせる俺に、ガンスさんがにっこりと笑って頷く。

「おう、なかなか見事な出来栄えだったよ。ケンさん達のこの後の予定は? よかったらこの後ヴァイトン達が来るので一緒に飯を食って、その後にヴォルカン工房へ行くんだが、ケンさん達も一緒に行くかね?」

「いいんですか? じゃあせっかくなんで、ご一緒させてください。ああ、リナさん達はどうしますか?」

 即座に返事をしてから、慌ててリナさん達を振り返った。

 さっき、お城を出る前に立てていた予定では、ギルドでアイテムを引き取ってもらったらどこかで昼飯を食って、一旦解散する予定になっていたんだよ。アーケル君達は、何処か行きたい店があるらしいし、リナさん達もまた別の店に行きたいんだって言っていた。ランドルさんは適当に歩いて買い物でもしようかって言っていたんだけど、どうするんだろう?

 確認すると、リナさん達もアーケル君も買い物優先みたいなので、ここで解散となった。



「おお、物作りの最高峰と言われている噂に名高いヴォルカン工房ですか。お邪魔でなければ俺もご一緒させてください。バッカス達への土産話にしますよ」

 って事で、俺達とランドルさんは、ギルドマスター達と一緒にヴォルカン工房の見学に行く事にしたよ。

 ヴァイトンさんとエーベルバッハさんが来たところで、ギルドを後にまずは昼飯を食いに行く。

 ギルドの近くにあった居酒屋っぽい店に連れていかれたんだけど、ここの料理もすっごく美味しかった。

 ちなみに、どう見ても五人前くらいは余裕でありそうな大きな重箱っぽいのに詰められた豪華な昼定食は、ガンスさんの奢り。

 重箱の中身は、和食っぽい煮物や揚げ物も入ったなかなかに色とりどりな弁当だった。一応春をイメージして作られている季節限定メニューなんだって。

 もちろん、ガッツリお肉も大量に入っているよ。冗談抜きで、これ全部で一体何万キロカロリーだ? って真顔で突っ込みたくなるくらいにすごいボリュームだったよ。

 シャムエル様にもしっかりと食べてもらったんだけど、予想通りに俺には到底食べきれない量だったので、一応お店の人に聞いてから、手持ちの弁当箱に詰め直してお持ち帰りさせてもらったよ。まあ当然だな。

 その後、のんびりとお茶までいただき、一休みした俺達はマックス達を厩舎に待たせておいて、ムービングログを使ってヴォルカン工房へ向かったのだった。


挿絵(By みてみん)

2023年4月14日、アーススターノベル様より、もふむくの四巻が発売となりました!

表紙とイラストは引き続き、れんた様が素敵に描いてくださいました。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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