相変わらずのご馳走三昧!
「ああ、お疲れさん。ほら、ちょうど料理が届くところだから、早く座ってくれ」
到着した広い部屋には聞いた通りにもう全員集まっていて、部屋に入った俺を振り返ったハスフェルの言葉に、笑顔で頷いて空いていた席に座った。
「お待たせいたしました!」
まるで俺達が到着するのを待っていたみたいに、座ったのとほぼ同時に大勢のスタッフさん達が料理を運んできた。
大きなお皿に乗っているのは山盛りのスペアリブ。うん、スパイシーでこれは美味しかったあれだな。
そして、ちょうど俺の目の前に置かれたコンロに、たっぷりのとろけたチーズの入った鍋が置かれる。
「ああ、これこれ。このチーズフォンデュが美味しかったんだよなあ」
次々に具材の並んだお皿も置かれ、ビーフシチューやサラダなんかもある。もう料理を見て全員のテンションが一気に上がったよ。
そして目の前に置かれる黒ビールのジョッキと、全員がジョッキを片手に俺に注目している。
「ええ、俺がするのかよ。まあいい。ええそれでは僭越ながら……一日中雪かきご苦労様でした! そしてお疲れ様でした〜〜! 愉快な仲間達に、乾杯!」
高々とジョッキを掲げた俺の乾杯の声に、笑いが起こって全員がそれに続いた。
さあ、ガッツリ食べるぞ〜〜!
「ええと、今日は空樽亭に来ています。このまま捧げますので、あとは好きに取ってください」
最近このパターン多いな。なんて密かに考えつつ取り出した敷布の上に、自分で冷やした黒ビールとスペアリブが二切れとチーズフォンデュの具材の並んだお皿を丸ごと並べる。
それから手を合わせてそっと目を閉じた。
いつもの収めの手が俺の頭を何度も撫でてくれ、それから黒ビールの入ったジョッキを撫で回して持ち上げる振りをしてから具材も順番に撫でていき、最後にぐつぐつと煮えたぎっているチーズの入った大鍋を撫で回して、持ち上げる振りをしてから消えていった。
「よし、ちゃんと届いたな。じゃあ俺もいただくか。ええと、どれが欲しいんだ?」
スペアリブを二切れ取ってあるのは、当然だけどシャムエル様と俺の分だよ。
「ええとね、そのお肉は一つください! このチーズフォンデュは、チーズたっぷりで色々ください! ああ、その黒ビールはここに入れてね!」
いつもよりも大きなお皿とグラスを手に高速ステップを踏むシャムエル様の予想通りの言葉に、俺は苦笑いして頷いてお皿を受け取り、スペアリブを丸ごと一切れ渡してやった。それから、まずはシャムエル様の分の具を取ってはチーズをたっぷりと絡めてお皿に並べていき、ちょっと苦労して黒ビールもグラスに分けてやった。他の料理も順番に少しずつ取り分けていったよ。
「ううん、いつもながら少食な自分の胃袋が悲しいぞ。まだ全部の具を食べていないのにそろそろ腹が一杯になってきた」
二杯目の黒ビールが半分くらいになった頃、追加で運ばれてきた具材がさっきのとはまた違っているのに気が付いて思わずそう呟いた俺だったよ。
具材が駆逐される前に、当然のように追加の具材が運ばれてきたんだけど、その時に何故か簡易コンロが幾つも一緒に運ばれてきていたんだ。
また別の料理が運ばれてきたのかと思って見ていると、コンロには鉄板が載せられて、その横には串に刺した生の肉やジャガイモなどが並んだお皿が置かれた。全部串に刺されているので、これもチーズフォンデュ用の具材なのだろう。
「成る程。串焼きの肉や野菜をここで焼いて、それでチーズフォンデュにして食うのか。ううん、打ち上げにはぴったりのメニューだなあ」
今までは、焼いてある肉やハムやベーコン、肉団子などが肉類のメインだったんだけど、確かにこれならもっと色々と楽しめそうだ。感心してそう呟き、とりあえず串焼き肉を何本か取り、じゃがいもやニンジン、それから野菜も適当に並べて焼き始めた。
向かい側の席では、鉄板を見て大喜びのアーケル君達が嬉々として肉を焼き始めている。しかもその鉄板には、いっそ清々しいくらいに肉しか並んでいない。うん、好きなだけ食っていいから野菜も食おうな。
内心でそう突っ込みつつ、見ると全員の鉄板にほぼ肉しか焼かれていないのを見て遠い目になった俺は、間違ってないよな?
「お待たせしました。チーズの追加で〜す!」
そして満面の笑みのスタッフさんの声とともに、目の前の鍋に三回目の追いチーズがたっぷりと入れられる。
そしてその隣には、またしても肉の追加のお皿が幾つもドドンと並べられた。しかし、悲しいかなこのメンバーの中では一番の小食な俺の胃袋は、もう冗談抜きでそろそろ限界を迎えつつある。
「ケンさん、手が止まってますよ。はいどうぞ。もう焼けてますから」
隣に座ったランドルさんが、手が止まっている俺に気を使って焼けた具材を色々と取ってくれるんだよ。ランドルさんって実はオカン属性だったのか。
「おう、ありがとうな。まあゆっくり食べるから、俺に構わず食べてくれよな」
誤魔化すように笑ってそう言って、お皿に乗せられた焦げ目の付いたお団子みたいなのを手に取る。
「あれ? これってもしかして……つくねじゃあなくておにぎりだ。うわあ、これもチーズフォンデュの具にしちゃうんだ」
ピンポン玉より少し大きいくらいのそれは、串に刺さった丸型に握った焼きおにぎりだったよ。思わず呆れたようにそう呟く。
「ええと、食べるんだな。はいはい、ちょっと待てくれよな」
目を輝かせて高速ステップを踏んで食べたいアピールするシャムエル様を見た俺は、苦笑いしつつたっぷりとその焼きおにぎりにチーズを絡めた。
「一口だけもらうから、ちょっと待ってくれよな」
これ一つは絶対に食えないので、ナイフで焦げたところを一口だけ切り取って残りは丸ごと渡してやったよ。
そのあとはもう、まだまだエンドレスで食べているシャムエル様のリクエストを聞いてお世話をしつつ、時々小さめの串焼き肉と一緒に残りの黒ビールをちびちびと飲んでいた俺だったよ。
ううん。毎回思うんだけど、やっぱりこの世界の人達は食う量がおかしいと思うぞ。俺はもう限界です!