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お疲れの帰宅と朝市での買い物

 神殿を後にした俺達は、ギルドの宿泊所へようやく帰って来た。

 すっかり忘れていた蜜桃を、倉庫から全部回収してサクラに飲み込んでもらった。

 これだけあればしばらくは持つだろう。よしよし。


「お疲れさん。それじゃあまた明日な」

 手を振ってそれぞれの部屋へ戻ろうとして気が付いた。

「あ、ちょっと待った! 最近確保したジェムの整理をしてないぞ。クーヘンの分もまとめて一緒に預かっているけどどうする? もう明日でいいか?」

 正直言って、今すぐ熟睡出来る自信はあるけど、人の分までジェムを持っているんだから、一応言っておかないとな。

「ああ、そうですね。でももう今日は、正直言ってクタクタです。ジェムの整理は明日でも構いませんか?」

 今から整理して渡したら、収納の能力のないクーヘンは、そのままギルドへ持って行かなくちゃならないもんな。

 申し訳無さそうにそう言うクーヘンに、俺は笑って頷いた。

「了解、じゃあ明日、朝飯の後でジェムを整理する時間を作ろう。その後どうするかは明日考えよう。俺ももう今日は疲れたよ」

 俺とクーヘンは、顔を見合わせて同時に吹き出した。

「ではそういう事で。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

 手を振って、それぞれの部屋に今度こそ入って行った。



 部屋に備え付けのランタンに明かりを灯し、まずはタロンにいつもの鶏肉を出してやる。ベリーとフランマはまだ大丈夫らしいのでそのままにしておく。

「ああ疲れたよ。サクラ、綺麗にしてくれるか」

 俺が防具を脱ぎながらそう言うと、ニニの背中からサクラが飛んできて俺の横に綺麗に着地した。

「じゃあ、綺麗にするね!」

 そう言って、ニュルンと伸びて一瞬で俺を包む。

 これも最初は驚いたけど、もう別に驚かなくなったし、怖くもないよ。

「はい終わり! 防具も綺麗にしておくね!」

 脱いで置いてある防具も、次々と飲み込んでは吐き出していく。

「はい、全部綺麗になったよ!」

 縦に伸びているのは、胸を張ってるんだろう。

「いつも有難うな」

 笑って肉球マークを撫でてやると、嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねている。

 鞄から使っていた水筒を出して、残りの水を流して捨て、綺麗な水で洗っておく。


「さてと、これで準備完了だ。それじゃあ今夜もよろしくな」

 振り返ると、ベリーとフランマも姿を現してこっちを見ている。

「フランマは何処で寝る? 俺はここで寝るんだけどな」

 ベッドにニニが横になり、俺がいつものように腹側に潜り込む。その横にマックスがゴロンと横になって俺を挟んだ。タロンが俺の胸元に潜り込み、ラパンとコニーが揃って元の大きさになって俺の背中側に潜り込んだ。

 ニニの背中側、ベッドの下の床にベリーが足を折って座り、ニニの背中に寄り掛かった。

「おやおや、もうベッドは一杯のようですね。じゃあ私は、ベリーの横で一緒に寝ますね」

 そう言って、ベリーの胸元に潜り込んだ。

「ああ、よろしくです」

 嬉しそうに目を細めるベリー。あれ、平気な振りをしているけど、絶対内心大喜びしてるぞ。

 小さく笑って手を振った俺は、目を閉じてニニの腹毛の海に顔を埋めた。

「おやすみ。今日は本当に疲れたよ。明日は、少しはゆっくり出来るかな……」

 そう呟いて、そのまま気持ち良く眠りの国へ旅立って行ったよ。





 ぺしぺしぺしぺし……。

「ううん、もうちょっと……」

 ふみふみふみふみ。

「うん、起きるよ……」

 ぺしぺしぺしぺしぺし……

「うん……」

「ねえちょっと、もういい加減に起きれば?」

 耳元で聞こえた呆れたような声に、俺は眠い目を開く。

 目の前にはシャムエル様とタロンが揃って俺を覗き込んでいた。

「お腹空いたよ。ご主人」

 タロンにそう言われて、俺は起き上がって、まずはサクラからいつもの鶏肉を出してやる。

 ベリーとフランマ用には、大きな蜜桃や他の果物も色々と出してやる。

 喜んで食べているのを見て、俺は顔を洗いに水場へ向かった。


 顔を洗って、サクラに綺麗にしてもらってから、サクラとアクアを水の中に放り込んでやる。

 ファルコと一緒にミニラプトルのプティラもやって来て、揃って三段目の水槽から流れ落ちる水で水浴びをしている。汚れた水は、そのまま床に作られた穴の中に流れて行く。上下水道完備って凄い。


「そうか、プティラは水がいっぱいあった洞窟出身だから、水浴びが好きなんだな」

 綺麗に身繕いしているファルコとプティラに向かってそう言うと、ファルコが翼を広げながら笑って答えた。

「私も水浴びは好きですよ」

「そうだな。綺麗にしないとな」

 順番に撫でてやり、まずは自分の身支度を整えた。


『ケン、もう起きているか?』

 その時、頭の中にハスフェルの声が聞こえた。

『ああ、おはよう。今起きて顔を洗ったところだよ。朝飯はどうする?』

『それならいつものように広場の屋台へ行こう』

『了解、じゃあ出るよ』

「広場の屋台へ朝飯に行くけど、お前らはどうする?」

 振り返ってそう聞くと、果物を食べていたベリーとフランマは留守番で、後は全員行く事になった。


 ほら見て良い子だぞ作戦第二弾、実行だ。


 廊下でハスフェル達と合流して、大人数で広場へ向かう。

 俺はいつものお粥を買いに行き、クーヘンも一緒に並んだ。ハスフェルとギイは、揃ってガッツリ肉を挟んだバーガーを買って来ている。朝からよく食うな。

 今日のお粥は、刻んだ野菜とエビの団子が入った雑炊みたいな感じだ。うん、これも美味いから残り一つだけある鍋に満杯まで入れてもらった。

 後で大きめの深鍋をもう少し買っておこう。


 広場の隅でそれぞれに買って来たものを食べて、コーヒーをカップに入れてもらってゆっくりと飲む。

 それから朝市を見に行く事にした。


「何を見るんだ?」

 ハスフェルに聞かれて、並んだ店を見ながら俺は肩を竦めた。

「野菜はもう大丈夫だと思うんだけど、後もうちょっと果物を買っておこうと思ってね。ベリーだけじゃなく。フランマも果物が主食だって言ってたからさ」

 目に付いた果物をいくつかまとめて買い、店の裏で、いつものように四次元鞄に入れてもらう。

「さてと、こんなもんかな……あ、葡萄発見! よしよし、これは買いだね」

 一軒の店に並んでいたのは、初めて見る真っ黒と真っ赤な葡萄だった。どちらも大粒で美味しそうだ。

「いらっしゃい、初物の黒葡萄と赤葡萄だよ。よかったら味見して行っとくれ、どっちも皮ごと食べられるよ」

 笑顔で差し出されたカゴから、一粒ずつ取って順番に食べてみる。

 黒い方は、果肉はトロトロで甘味が強くて濃厚な味だ。赤い方は、甘味と酸味があって果肉もやや硬めだ。

「どっちも美味しい! ええと、まとめて買っても問題ありませんか?」

 試食を出してくれたおばさんにそう尋ねると、満面の笑みで頷いてくれた。

「ああ、もちろん大歓迎だよ、なんなら店ごと買ってくれても良いよ」

 カラカラと笑ってそう言ってくれたので、思わず俺は頷いた。

「あ、じゃあそれでお願いします。ある分全部買いますので、よろしく。ケンと言います。冒険者ギルドの宿泊所に、全部まとめて届けてもらえますか」

 荷物入れから、前金で金貨10枚を渡すと、驚きのあまりおばさんは固まっちゃった。

「本当に、本当に全部買ってくれるのかい?」

 真顔で顔を寄せて来たので、仰け反りながら笑って頷いた。

「ええ、冗談じゃありませんよ。あ、もし留守だったら冒険者ギルドに金を預けておきますから、そっちから受け取ってください」

 大喜びのおばさんに手を振り、俺は以前、蜜桃の配達をお願いした店にも顔を出して、また大量に配達してもらうように頼んでおいた。


「よし、これで果物確保完了だ。それじゃあ、まずは宿泊所に戻ってジェムの整理をしよう」

「じゃあ、もうこのまま先に船舶ギルドに顔を出しておこう。お前が渡したジェムの清算もあるだろうからな」

 ハスフェルの言葉に頷いた俺は、まずは船舶ギルドへ向かう事にした。


 さて、例の乗り放題乗船券は上手く手に入ったのかね?

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