食後のデザートタイムと調理開始!
「ごちそうさまでした。ううん、腹一杯だよ。もう食えません」
手を合わせた俺は小さくそう呟いて一つため息を吐いた。
ちなみにシャムエル様は、取り分けてやった分をかけらも残さず綺麗に完食して、今はデザートバイキング状態に突入している。
一応俺の分として真ん中のチョコレートブラウニーを4分の一くらいフォークで取り、あとはクッキーを数枚もらっただけで、好きなだけ食って良いぞと言って残りは全部まとめて弁当箱ごとシャムエル様に進呈したんだよ。
そうしたらそれを聞いたシャムエル様はもう歓喜の嵐。それはそれはものすごい勢いでステップを踏み始めて、ケーキバイキングだとか言って大はしゃぎだったんだよ。
まさかお菓子の段を丸ごとあげただけであそこまで喜ぶとは思わず、あまりのはしゃぎっぷりに内心では思い切りドン引きしてたんだけど、お菓子に夢中のシャムエル様は全然気付いていないみたいだったよ。
「いやあ、もう見ているだけで胸がいっぱいになるなあ」
あっという間にブラウニーを完食したシャムエル様は、今は自分の顔よりも大きなカップケーキにチョコレートをたっぷりかけたのを両手で鷲掴んで爆食中だ。冗談抜きで、見ただけで胸焼けがしてきそうだ。
「自慢の尻尾がベタベタになるぞ〜」
食後の緑茶を淹れた俺は、そういって笑いながら左手でシャムエル様の尻尾の先を掴んで軽く引っ張ってやる。
「ああ、いいね。ちょっとしばらくそのままね!」
あっという間にカップケーキを完食したシャムエル様は、顔だけこっちを向いて当然のようにそう言うと、もう次のケーキに突撃していた。
ちなみに次に引っ掴んだのは、某メーカーのチョコパイみたいな円形で全体にチョコレートをコーティングしてあるお菓子で、当然それを掴んだシャムエル様の手も、それから口の周りだけに留まらずほぼ顔全部がチョコレートとクリームまみれになっていたよ。
「はいはい、じゃあ遠慮なくもふらせていただきますよ」
緑茶の入ったマグカップを置いた俺は、両手でいつもの倍サイズになっているシャムエル様の尻尾をもみくちゃにしてやったのだった。
ああ、やっぱりシャムエル様の尻尾の手触りは最高だね。
「ううん、ごちそうさまでした。いやあ、美味しかったよ!」
なんとデザートの段に入っていた分、全部完食されてしまいました。マジか……。
空になった弁当箱を見て満足そうにそう言ったシャムエル様は、その場に座ってせっせと身繕いを始めた。ベタベタだった顔や胸元も一瞬で綺麗になり、次に尻尾のお手入れを始めた。
こちらは、それはそれは真剣にやっているから、邪魔しようものなら吹っ飛ばされるレベルで叱られるよ。残念ながらああなってしまっては、もう尻尾は触らせてもらえないからな。
苦笑いした俺は、残っていたちょっと冷めた緑茶を飲み干した。
「さてと、料理するなら何がいいかなあ?」
手早く取り出していた弁当の残りを片付け、全部まとめてサクラに預けておく。
「じゃあ、何を作るにしても、今日はガッツリ料理をしたいから広い厨房へ行くか」
立ち上がった俺は、寛いでいるウサギ達やアヴィ達を撫でたりもふったりしてから、スライム達を引き連れて厨房へ向かった。
「ええと、一応一通り掃除をお願いしてもいいかな」
厨房を見渡した俺は、置きっぱなしにしてあった暖房器具のスイッチを入れながらスライム達に掃除をお願いする。
「はあい、じゃあお掃除するよ〜〜!」
アクアの掛け声に、全員がバレーボールサイズくらいになって散らばっていった。
水回りや排水関係を中心にオーブンの中やコンロ周辺、それからもちろん調理台の上や冷蔵庫の中まで、あっという間に全部綺麗にしてくれた。
「さて、何から作るかなあ」
揚げ物系もかなり減っているし、味噌汁もかなり減っている。まあご飯はまだ大量にあるけど、おにぎりも少し減っているかな。
「作るならまずは一番よく食べる定番の揚げ物からだな。岩豚トンカツと岩豚のミルフィーユチーズトンカツは、絶対に大量に用意しておかないと。他のチキンカツやビーフカツ、唐揚げなんかもかなり減っているから、まとめて作っておかないと。それが終われば、岩豚で煮豚と角煮も作っておくか。あとはやっぱりお菓子の新作かなあ……」
腕を組んで何を作るか考えていると、掃除を終えたスライム達が集まって来た。今は俺しかいないので、クロッシェも出てきて皆と一緒にお手伝いをしてくれている。
「今日はお手伝いだな」
笑って手を伸ばしてクロッシェを撫でてやり、それから順番に全員をモミモミしてやったよ。
「じゃあ、まずは岩豚のロース肉とヒレ肉でトンカツからかなあ。サクラ、岩豚の肉をまとめてガッツリ出してくれるか」
「はあい、これだね。切り方はどうするんですか?」
調理台の上に一番大きなバットを並べ、そこにドドンと取り出した岩豚の塊肉が並べられていく。
「ううん、何度見ても普通じゃあない量だよなあ。これは」
苦笑いしてそう呟いた俺は、待ち構えていたスライム達を見た。
「じゃあ、まずはこれをトンカツにしていくから、いつものトンカツサイズで切ってくれるか」
トンカツに使う部位を見ながらそう言うと、心得ているスライム達は肉を切る子達と、トンカツの準備をする子達に別れて早速作業を始めた。
「じゃあ、味付けはするから、肉が切れたら言ってくれよな」
せっせと肉を切り始めたスライム達に声をかけてから、コンロに一番大きなフライパンを並べて油をいれて揚げる準備を始めた俺だったよ。
さて、今日はどこまで料理出来るかなあ。