ディノニクス戦の終了!
「よし!これで十匹目〜〜!」
もう一人で戦えるだろうと笑ったハスフェルに放置されてしまい、俺はニニやフランマ達の援護を受けつつ、とりあえず続けて近くにいた二匹を倒す事が出来た。
とは言え、やっぱり怖いもんは怖い!
緊張のあまり若干息が荒くなりつつも気を取り直した俺は、さっきよりもかなり大きめのディノニクスに向かっていったのだった。
「ご主人、そいつは特に跳ねるから気をつけてね!」
ニニの声に咄嗟に横へ逃げた直後、俺が立っていたまさにその位置へ多分10メートルくらいを一気に跳ね飛んできたディノニクスが、まるで笑うみたいに少し口を開けてゆっくりとこっちを向いた。
「うわあ〜〜!」
悲鳴混じりの声をあげて、横から思い切り斬りつけるも即座に跳ね飛んで逃げられてしまい、空を切った剣が泳ぎ体勢が崩れる。
「ご主人危ない!」
ニニの声と同時に、俺は見えない何かに弾き飛ばされて後ろ向きに倒れ込んだ。
背中から濡れた地面に転がった俺が見たのは、倒れた俺を庇うみたいにして俺の上に立ちはだかるニニの大きく膨れたお腹だった。
直後に俺をアクアゴールドが包み込んでくれ一瞬で濡れた体が綺麗になる。そしてダッシュしたニニが俺の上からいなくなった。
「ニニ! 無茶するなって!」
慌てて起き上がった俺が見たのは、音を立てて転がる大きなジェムと俺の指より大きな鉤爪、そして振り返ったドヤ顔のニニだったよ。
「おいおい、大丈夫か?」
笑ったハスフェルが、駆け寄ってきて俺の腕を掴んで立たせてくれる。
「あ、ああ。大丈夫だよ。ううん、まだやっぱりビビってるなあ」
誤魔化すようにそう言って肩をすくめた俺は、手に持ったままだった抜き身の剣を改めて見つめる。
「うん。大丈夫だから、もうちょい頑張るよ」
なんとか笑ってそう言い、心配そうなハスフェルの腕を叩いてからニニのところへ走って行った。
「ニニ、助けてくれてありがとうな」
そう言って柔らかな首元を叩いてから前へ出る。
見れば広場のあちこちに、まだまだ大きなディノニクスが何匹もいる。
「よし、もうちょい頑張るぞ!」
自分に言い聞かせるみたいにして大きな声でそう言うと、剣を構えて近くにいたディノニクスの背後から突っ込んで行った。
「はあ、はあ、はあ。なんとか、これで、二十五匹、達成……もう、良いよな……」
どうやらそろそろ一面クリアーしたみたいで、さっきから出現数がガクッと少なくなってきている。
息を切らせた俺は、もう一度周囲を見回してもう近くには出ていない事を確認してから、ずっと抜きっぱなしだったヘラクレスオオカブトの剣を鞘に収めた。
「息は、切れてる、けど、腕は、あんまり、疲れて、ないんだよ、なあ……マジで、ヘラクレス、オオ、カブトの、剣、すげえ……」
そう言いながら肩で息をしていると、足元に来たアクアゴールドが一瞬でスライムベッドになってくれた。
「お疲れ様、ご主人! 座ってくださ〜い!」
「おう、ありがとう、な。ちょっと、座らせて、もらう、よ……はあ、疲れた!」
座ると言うか、後ろ向きに倒れるようにして座り、そのまま仰向けになる。
「お疲れさん。まあ二十五匹倒せたら充分優秀だよ」
笑ったハスフェルにそう言われて何とか腕を上げて返事をしておく。
今マジで、喋るのとか無理。何ならこのまま寝られそうだよ。そう考えた瞬間意識が遠くなったので、慌てて手をついて起き上がる。
「あぶね、マジで寝そうだったぞ、今」
首を振りながらそう呟き、座ったままため息を一つ吐いて周囲を見回す。
アクア達レインボースライムが俺のベッド兼椅子役を務めてくれているので、他の子達がバラけてジェムと素材集めをしてくれている。合間に時折収納袋が落ちているのも見えて遠い目になる俺。
「何、まだ出してくれていたのか?」
座った俺の膝にちょこんと乗っかって尻尾のお手入れに励んでいたシャムエル様が、ドヤ顔で振り返る。
「そりゃあ当然でしょうが。まあ一応、前回よりも収納の倍率は低めにしておいたからね」
「あはは、お気遣い感謝するよ。じゃあ、収納袋はまた後で山分けだな」
笑ってそう言いふかふかなシャムエル様の尻尾をそっと突っついた。
「ご主人が倒した恐竜から出たのは別にしてあるからね〜〜!」
プルプルと震えたアクアの声に、思わず座っているアクア達を見る。
「あれ、そうなんだ。まあ、今日は俺もかなり頑張ったからなあ」
そう呟いてから、今日の成果を思い出してにんまりする。
「まあ、自分で確保した分はまた俺が貰っておこう。あとは山分けだな」
もう一度大きなため息を吐いてから伸びをすると、同じタイミングで伸びをしたニニが、俺の膝の上に顎を乗せて寛ぎ体勢になる。
「ありがとうな。やっぱりニニは頼りになるよ」
ふわふわな頭をそっと撫でてやり、甘えるみたいに喉を鳴らすニニの大きな顔を、両手で思いっきり揉みくちゃにしてやったのだった。




