トリケラトプス狩りの狩りの終了と昼食タイム!
「よし、ここからならなんとかなりそうだ」
首を振り回して暴れるトリケラトプスの背後へ回った俺は、小さく深呼吸をしてから剣を腰だめに構えて一気に突っ込んで行った。
狙いは背骨の横、ちょうど肋の隙間部分だ。
突っ込んで背中に剣を突き刺す直前、それを見たハスフェルが横からもタイミングを合わせて攻撃してくれて、トリケラトプスの注意がそちらへ逸れる。
「うおお〜〜〜!」
大声を上げて力一杯突き刺す。予想以上に軽々と突き刺さって吸い込まれていく俺の剣。
その瞬間、巨大な大小三本の角とジェムが音を立てて地面に転がった。
「よし!」
「お見事!」
笑ったハスフェルとハイタッチを交わす。
「もう大丈夫そうだな。じゃあ次に行くか」
嬉しそうなハスフェルの言葉に俺も笑顔で頷き、そこからは交互にとどめを刺しながら大小のトリケラトプスを協力して狩り続けた。
ちなみに従魔達は俺がもう大丈夫だと思ったらしく、スライム達を残して離れた場所に走り去って行き、嬉々としてトリケラトプス達を狩り始めていた。
「はあ、もうそろそろ終わりにしてもいいんじゃあないか?」
深呼吸をした俺の言葉に、ハスフェルも手にしていた剣を鞘に収めながら頷く。既に俺だけでも両手で余るほどの数のトリケラトプスを倒しているから、もう充分だと思う。
「確かに、そろそろ一面クリアーだな。じゃあ腹も減った事だしグリーンスポットへ行くか。ここなら会議室が近いかな?」
「そうだなあ。食堂とどっちが近い?」
答えながら頭の中にある地図を確認した時、一瞬地面が震えるみたいな振動が響き全員の動きが止まる。
「何だ? 今の、地震か?」
思わず足元を見た瞬間、一気に頭の中にあった地図が広がり驚きに目を見開く。
「ああ、今はケンタウロス達も俺達のパーティーに入った状態になっているのか。それで例の地下の埋まっていた部分への穴を開けたから、彼らの持つ地図が共有されたのか」
納得したようにそう呟きながら、一気に広がった最下層のさらに下にある新しい部分を見て遠い目になったよ。
何あれ、特に水没している一番大きい場所。滅茶苦茶デカいんだけど……これって、全部合わせるとあの地下迷宮に匹敵するくらいにあるんじゃないか? ってか、ケンタウロス達の探知能力どれだけあるんだよ。穴を開けた瞬間に全部見えたって事は、彼らの探知能力って半径数キロレベルじゃね? さすがは賢者の精霊達。色々と規格外だよ。
「おお、これはまた楽しそうな場所が出来たもんだなあ。しかし、シルヴァ達がいなければさすがに俺達だけで水没部分へ行くのは無理があるなあ」
「だなあ。まあここは素直にお願いしてケンタウロス達の探索に同行させてもらうしかなかろう」
「そうだな。それが良さそうだ」
苦笑いしつつ相談しているハスフェルとギイの言葉を聞いて、割と本気で安堵した俺だったよ。
「それはもう、彼らと相談して好きにしてくれ。俺は遠慮しておくよ」
しかし、俺の言葉に二人が真顔で振り返る。
「何を言ってるんだ。ここの持ち主のお前が行かなくてどうするんだよ」
「そうだぞ。最低でもマッピングはしておけ」
「いやいや無茶言わないでくれって! あんな経験一度で充分だよ!」
必死になって首を振った俺だったけど、二人は苦笑いしているだけで何も言わない。
「あの! それなら俺達もご迷惑でなければ一緒に行きたいです!」
「俺もお願いします!」
「俺もお願いします!」
「あの、俺も行きたいです!」
「ご迷惑でなければ、私達もお願いします!」
突然の声に驚いて振り返ると、ランドルさんを先頭にリナさん一家が全員揃ってこっちへ走ってきて口々にそう言って俺達を見ている。
それを聞いてハスフェルとギイが同時に吹き出す。
「俺達は構わないが、まあそれはケンタウロス達に聞いてからだな。彼らが一度にどれくらいの人数を空気の玉で守れるのか、聞いてみないと安易な返事は出来ないよ」
「ああ、それは当然ですね。もちろん無理は言いません。ですがもしも可能であれば、順番に一人ずつでも構いませんので是非お願いします!」
目を輝かせるランドルさんの言葉に、全員揃って何度も頷くリナさん一家。だからどうしてそんなに君達は危険なところへ行きたがるんだよ!
脳内で思い切り突っ込みつつ、俺は諦めのため息を吐いて手にしていたヘラクレスオオカブトの剣を鞘に収めた。
「俺は腹が減ったよ。とりあえず、移動して飯にしよう」
またポツポツと増え始めているトリケラトプスを見ながらそう言うと全員から同意の声が上がり、顔を見合わせて笑い合った俺達は、ひとまず昼食を取るために会議室と呼んでいるグリーンスポットへ集まってきた従魔達と一緒に移動したのだった。
「到着。じゃあ、適当に作り置きを出すから好きに取ってくれよな」
無事会議室と呼ぶグリーンスポットに到着した俺は、まずはいつもの机と椅子を取り出し、机の上へいつもの作り置きを色々と取り出して並べた。
ランドルさんやアーケル君達も、それを見て色々と取り出してくれたので、またしても机の上は乗り切らないくらいのさまざまな料理であふれかえる事になったよ。もちろん、どれも美味そうだから問題無いけどね。
どう見ても置く場所がもう無かったので、小さい方の机の上に飲み物を一通りと味噌汁の入った鍋も取り出しておき、あとはいつものように好きに取ってもらう。
「俺は腹が減っているからご飯が食べたい。よし、肉巻きおにぎりとおかかおにぎり、それから三色おにぎりも取っておこう。焼いたソーセージと鶏ハムと温野菜と味噌汁かな。あ、だし巻き卵も取っておこう」
自分用のを一通り多めに取ってから、お皿を手にステップを踏んでいるシャムエル様を振り返った。
「ええと、あとは何かいるものあるか?」
「タマゴサンド! あとはケンが取ったのを半分ください!」
苦笑いした俺は、シャムエル様用のタマゴサンドを一切れと、鶏ハムとだし巻き卵と温野菜を追加で取ったのだった。
これってもしかして、俺の分を半分渡したらシャムエル様の方がタマゴサンドがある分多いぞ……。
味噌汁を小さなお椀に入れてやりながら衝撃の事実に気が付き、遠い目になる俺だったよ。