パワー考察と亜種との戦い!
「よし、二匹目ゲット〜〜〜!」
大きなジェムが転がるのを見て、思わずそう叫ぶ俺。
とりあえず一匹倒したおかげで何とか恐怖心は克服出来たみたいで、二匹目は自分でも驚くくらいに簡単に倒す事が出来た。
もちろんハスフェルと組んでいるってのは大きいと思う。何しろ、彼は一切の気配を消して、平然と俺とは反対側へ移動していくんだからさ。
しかも目標のトリケラトプスだけでなく、周囲にいる他のトリケラトプスも彼には全くの無反応。
あれは俺には絶対に出来ない。俺なんて、何もせずに立っているだけで、すでに警戒されているんだからさ。
しかし、こうなると声を出さずに念話で打ち合わせが出来るってのは、正直言ってありがたい。
なにしろ、今目の前にいる亜種のトリケラトプスのデカさは、尻尾の先まで入れると多分10メートル余裕で越してる。縦にも横にもとにかく全部がデカい。
絶対、普通なら人間では勝てない大きさだと思うぞ。
当然、向こう側にいるハスフェルの姿はここからは確認出来ないって。
それにしても今回の狩りで気がついた事がある。
いつも食事をしている時に、この世界の人は食べる量がおかしいと毎回思っているあれ、多分これとも関係しているんだと思うんだけど、間違いなく今の俺も含めて、付いている筋肉量と実際に出せる力が、俺の元いた世界とはちょっと、いやかなり違う気がする。
多分、こっちの世界の方が筋肉が超強い! パワー全開度が高すぎ!
だって、いくら武器の切れ味が鋭いって言ったって、俺の元いた世界では、さっきのステゴザウルスの尻尾をああも易々と、骨ごとバターみたいに切り落とせるような武器は無かったと思う。
少なくとも俺は知らない。
強さに関してはハスフェルやギイが特別強いのかと思っていたけど、実はランドルさんもかなりの腕力の持ち主だ。初対決だと言う割には、ステゴザウルスをバンバン狩っていたもんな……。
今だって、やる気満々でギイとタッグを組んで、既に五匹目に突入している。俺、今から三匹目なんですけど!
まあ、ギイも大張り切りで色々と教えているみたいだから、それもあるのかもしれないけどさあ。
それにリナさん達草原エルフだってそうだよ。どう見ても子供体型の彼らだけど、普通に武器を持って戦ったりもしている。アーケル君はヘラクレスオオカブトの剣を作ったくらいだしな。
当然あの体型で体重が軽いのにそれなりに戦えてるって事は、やっぱり腕力が相当あるって事だよな。
リナさんなんて、腕相撲めっちゃ強かったし……。
『おい、何よそ見しているんだ。次は亜種だぞ。気を抜くなよ』
そんな事を考えていると呆れたようなハスフェルにそう言われて、俺は慌てて返事をして少し進み出た。
『よし。しっかり前を見てろよ。まあ、分かってると思うが基本的に対処方法は同じだ。デカい角には絶対に気をつける事。正面には立たない。フリルへの攻撃禁止。それから、一撃離脱だ! いいな!』
『了解です!』
念話で改めてそう言われて、俺も念話で返事を返す。それから、ちょっと斜めになっていた兜を改めて被り直す。
この兜。これがあると、なんて言うか安心感が半端無い。頭部が守られてる感が凄いんだよな。
だけど、以前の世界にあった工事現場では必須のヘルメットみたいな顎バンドは無い。なので転んだりしたら吹っ飛ぶ可能性もあるので、そこは要注意だ。
一つ深呼吸をしてから、剣を構え直す。
「よし、次は亜種だ!」
小さくそう呟き目標を見る。
しかし間近で見ると、とにかくデカさが半端ない。とは言え、俺が冗談抜きで死にかけたあのとんでもない化け物レベルのトリケラトプスに比べれば、まあ大きいんじゃね? って冗談言える……かもしれないレベルだ。まあ、ハスフェルもいるし、何とかなるだろう。
『じゃあ、また後ろ脚への攻撃から始めるからよろしくな!』
『おう、じゃあいくぞ!』
『せ〜の〜でっ!』
掛け声と共に、俺は持っていたヘラクレスオオカブトの剣をトリケラトプスの後ろ足付け根の辺りに思い切り斬りつけた。
「よし!」
今回はいい角度で斬れたみたいで、悲鳴を上げて倒れ込むトリケラトプス。
即座に飛んで下がった俺のすぐ横を、思い切り振り回したデカい角が横切って行った。
「うわあ、危ねえ! おお、ありがとうな」
即座に広がって守ってくれたアクアゴールドにお礼を言ってもう一歩下がる。
ちょっと角の長さを甘く見たよ。念のためもう半歩下がっておく。
尻餅をついて座り込んでいるトリケラトプスは、もう半狂乱状態で、図太い声で吠えながら大きな頭をグリングリンと振り回している。
「ちょっと、怖くて攻撃出来ないって!」
何度かタイミングを見計らって攻撃しようとするんだけど、ただ暴れているみたいに見えるこのトリケラトプスだけど、実は結構こっちの様子を見てるみたいだ。
なので俺がちょっとでも近づく素振りを見せると、ものすごい勢いで首を振って威嚇してくるんだよな。
なので、ちょっと攻めあぐねている状態だ。
正直に言うと、とどめはハスフェルにやってもらっても俺的には全然構わないんだけど、彼はどうやら俺に戦わせたいらしい。仕方が無いので、様子を見ながら何か策がないか必死になって考える。
「迂闊に近寄って、あのデカい角にぶっすりやられるのは絶対に勘弁してほしい。となると、角が届かない位置からの攻撃か……ああ、あるじゃないか! 今なら蹴られる心配は無いもんな!」
どうして今まで気付かなかったのか、ちょっと我ながら笑えるぞ。
だって、今のトリケラトプスは後ろ足を投げ出すみたいにして座り込んでいるみたいな状態だ。ちなみに尻尾は思い切り根本で曲がって横に投げ出されているので、言ってみれば曲がった尻尾に座っているみたいな状態だ。
『それで良い。気をつけろよ』
『おう』
どうやら俺の考えている事が分かったらしいハスフェルの念話が届き、俺は密かに安堵のため息を吐きつつ短い返事だけをしてトリケラトプスの背後へ回ったのだった。
よし、これならなんとかなりそうだ。亜種もガッツリやっつけてやるぞ!