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街への帰還と夕食

 真っ暗な中をもう少し走って、無事に東アポンの街へ到着した。

 それぞれギルドカードを見せて城門を通る。

「ギイもギルドカードを持っていたんだな」

「まあなこの世界では街を移動して暮らすなら、何らかのギルドカードは必須だぞ」

 当然のように収納の能力持ちのギイは、荷物は一切持たず、人型の時のみ腰に剣を指して同じくベルトに小さな小物入れを取り付けている。聞くと、この小物入れもほぼダミーらしい。まあ、収納の能力があれば、別に鞄は要らないよな。

 ギイが加わって更に注目度が上がった俺達は、何となく無言で足早にまずはギルドへ向かった。

 腹は減ってるけど、まずはギルドに行かないとな。


「おう、おかえり。ケン宛にミカオン農場から何やら大荷物が届いていたから、代理で受け取ったよ。代金は立て替えてあるから出来れば早めに払っておくれ」

 ディアマントさんにカウンター越しの笑顔で言われて、俺は慌てて鞄からお金を入れている巾着を取り出した。

「うわあやっぱり今日の配達だったよ。すみません! すみません! お幾らでしたか?」

「はい、これが領収書」

 受け取った俺は、領収書に目を通した。

「蜜桃90個納品。単価は銀貨一枚か。頭金で金貨一枚は払ってあるから、後8枚だな。よしよし、これでかなり在庫に余裕が出来たぞ」

 頷いた俺は、巾着から8枚の金貨を取り出した。

「ありがとうございます。じゃあこちら、お返しします」

「はい、確かに」

 笑って受け取ったディアマントさんは、俺の後ろに立つ金髪のギイに気がついた。

「ギイじゃないか! 久し振りだね。とんとお見かけしないから、何処かでのたれ死んでるんじゃないかってレオンと話していたところだったのに」

「いつも言ってるだろうが。夫婦揃って勝手に人を殺すんじゃねえよ」

 豪快にそう言って笑い合っている。

 あはは、怒鳴りあっているみたいに見えるけど、これは仲良しだからこそだな。

「ギイ! この薄情者が! 今更顔を出しやがって! 覚悟しろよ!」

 内容は物騒だが、どう聞いても笑う寸前の大声で、カウンターの奥からこれまた二人に勝るとも劣らないデカいのが出てきた。

 うわあ、ディアマントさんと並ぶと、何と言うか……超ゴージャス!

 ディアマントさんも、女性にしたらあり得ないくらいに大柄で筋骨隆々なんだけど、そっちの男性は、その彼女よりも更にひとまわりは全体にデカい。うん、これも確実に2メートル超えてるよな。

「貴方が噂の、魔獣使いですね。はじめまして。レオンと申します。ここの副ギルドマスターをしております」

 差し出された手は、これまたグローブみたいなデカい手だった。

「もしかしてこの方が? あの……」

 俺の疑問に振り返ったハスフェルが笑ってレオンさんの背中を叩いた。

「ああ、こいつがディアマントの旦那だよ」

「うわあ、なにこの超ゴージャス夫婦!」

 思わず叫んでから慌てて口を閉じる。

「し、失礼しました」

 慌てて謝ると、二人は堪え切れずに吹き出して大笑いしている。

「巨人夫婦だとか、岩石二つとか、嵩が高いの二人とか、色々今まで好きに言われたけど、超ゴージャスって言われたのは初めてだな。ありがとうよ。ケンさん」

 笑いすぎて涙を拭っているレオンさんにそう言われて、俺も思わず吹き出した。

「ええ、もうこれ以上ないくらいにゴージャスですよ。色々と眩し過ぎて直視出来ませんよ」

 その言葉を聞いて、また皆が吹き出した。


 しかし、何でこんなに俺の周りは、こんなに無駄にマッチョな野郎だらけなんだ?

 遠い目になる俺を放って、マッチョ三人とマッチョレディの四人は、仲良く今までどこに行っていたか、なんて話で盛り上がってました。


「ああそうだ。ケンとハスフェルに、船舶ギルドのナフから、準備が出来ているからいつでも都合の良い時に来てくれって伝言があったよ」

 ナフ? ああ、ナフティスさんだな。やっぱり船舶ギルドのあの人とも仲が良いんだ。

「ああ、分かった。じゃあ明日にでも顔を出してくるよ。それより追加の従魔登録を頼むよ」

 ハスフェルの言葉に、俺とクーヘンは慌ててカウンターに座った。

 それぞれ、レッドダブルホーンラビットのコニーとホワイティの登録を済ませて立ち上がった。

 ギイも宿泊所に泊まるらしい。


 って事で、手続きも終わったので、もう今日は疲れたからこのままいつもの屋台村へ行くことになった。

 俺は、いつものご飯と焼き魚に魚のつみれが入ったスープだ。しかも焼きおにぎりが有ったんだよ。残念ながら中に塩辛い魚のほぐし身が入った奴で、一瞬期待した醤油は有りませんでした。残念!

 だけど、やっぱりご飯は俺の満足度が違う。

 うん、やっぱりもうちょっとご飯も買っておこう。ここのご飯、美味しいもんな。


 満腹になったハスフェル達が一杯軽く飲んでいる間に、俺はいつもの飯屋に行って、また大量にご飯とおにぎり、それから焼き魚とつみれのスープも鍋に入れて貰って大量購入した。

 もう、最近すっかり慣れてきて、買い占める事に罪悪感を感じなくなってきたよ。

 だって、どの店も大量購入大歓迎だって言ってくれるからさ。



 お腹いっぱいになった俺達は、のんびりと宿泊所へ暗い道を戻って行った。

 途中の広場を抜けたところでクーヘンが立ち止まる。

「ん? どうしたんだ?」

 クーヘンの視線の先には、石造りの巨大な塔のある大きな建物があった。

 おお、塔の上に十字架は無いけど、この形は教会っぽい。

 内心密かに感心していると、立ち止まった俺達に気付いたハスフェルとギイも振り返って立ち止まってくれた。

「なあ、ここってもしかして……」

 小さな声で右肩に座っているシャムエル様に話し掛ける。

「そうだよ。ここが神殿。魔獣使いの紋章を登録する場所でもあるね」

 それを聞いた俺は、クーヘンを見た。

「あ、それなら作って貰えば? もう、従魔が五匹いるんだから、立派な魔獣使いだよな。あ、それとも夜はやってくれないとか?」

「いや、基本的に神殿は時間は関係無い。紋章の登録ならいつでも受けてくれるぞ。行ってこいよクーヘン」

 ハスフェルの声に、クーヘンは真剣な顔で頷いた。

「そうですね。行って参ります」

 顔を見合わせた俺とギイも、クーヘンとハスフェルの後路に続き、神殿の中へ入って行った。

 数え切れない程の蝋燭が灯された正面の祭壇には、いつかの夢で見たような、巨大な竜の彫像が飾られていた。

「へえ、これが御神体?」

「というか、私の代わりに置いてあるんだよ」

 右肩のシャムエル様の言葉に、俺はちょっと躓きそうになった。

 確かに、あの竜は初めて会った時に一瞬だけ見た竜っぽい。成る程、あれがシャムエル様の姿の一般認識な訳か。

 そりゃあ今の姿を見たら、知り合いはびっくりするよな。

 なんだか妙に納得して、俺はシャムエル様を見た。

「ん? なに?ケン」


 立ち上がって小首を傾げるシャムエル様は、正直言うと、もふもふおにぎりをやりたいくらいに超絶に可愛かったです。

 うん、怒られるからやらないけどね。

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