収納袋の取り分と今日の予定?
「ちなみに、こっちがご主人の従魔達が集めた分だよ」
もう寝ようと思って膝にいたタロンを抱き上げて立ち上がろうとした時、アクア達が得意げに積み上がっていた収納袋を見ていそいそと手分けして集め始めた。
そうか、あいつらには俺と従魔達が集めた分はわかるって事だもんな。
「俺が倒した分が十二個で、これが、マックス達が、集めた分……おいおい、どれだけあるんだよ」
多分、全量の三分の一くらいは余裕である目の前に積み上げられた収納袋の山を見て、俺は呆れたようなため息を吐く。
「だけどまあ、従魔の数からしたらこうなるのは当然か。特に俺の従魔達は、テイムした俺が言うのも何だけど、どの子もとんでもなく強くてデカいもんなあ……」
そう呟いて部屋で寛ぐ従魔達を見て遠い目になる俺。
「じゃあ、さっきの俺が自力で集めた収納袋は全部俺がもらうよ。それであとは構わないからひとまず全部一緒に集めて持っておいてくれるか。これはもう皆で山分けにしよう」
「これはご主人の分だけど、良いの?」
不思議そうなアクアゴールドの言葉に、苦笑いして頷く。
とりあえず、自力で集めた分くらいは使ってみたいから自分で持っておこう。特にあの、一つだけあったベルトに取り付けるタイプの小物入れ型の収納袋は、あのまま使ってもいいかも。
ひとまず自分の分だけを自分で収納しておき、あとはアクアに持っていてもらう事にした。
「さて、それじゃあ休むとするか。ニニ、マックス、皆も今夜もよろしくな!」
今度こそタロンを抱き上げて立ち上がった俺は、ベッドに寝転がったニニの腹毛に潜り込んだ。そそくさとマックスが定位置につき、他の子達もいつもの定位置に収まる。
「それにしても、大きくなって来たなあ。なあ、何匹いるのか知らないけど、待ってるから早く産まれておいで」
横になると、盛り上がるみたいに大きくなったニニのお腹の辺りを撫でながらそう言って、胸元に潜り込んできたタロンとフランマをまとめて抱きしめてやる。
「それじゃあおやすみ。明日も、よろしくな……」
ベリーが明かりを消してくれたので、一気に暗くなったところで俺がそう言って大きな欠伸をする。
そして、もふもふなニニの腹毛に顔を埋めた俺は目を閉じて、そのまま眠りの海へ落っこちていったのだった。
相変わらず、我ながら感心するレベルの墜落睡眠だよなあ……。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
ショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きるよ……」
翌朝、いつものモーニングコールに起こされた俺は、ニニの腹毛に潜り込みつつ何とかそれだけを言った。
だけど、そのままもう一回二度寝の海へドボン。
いつも思うけど、二度寝ってどうしてあんなに気持ちがいいんだろうなあ……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
ショリショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
胸元にいた子を抱きしめながら返事をした俺は、何だかいつもと違って抱き心地が妙に硬い事に気が付いて驚いて目を開いた。
「ああ、お前か……」
開いた目に飛び込んで来たのは、俺に抱きしめられてご機嫌で尻尾を振っているシンリンオオカミのビアンカの大きな顔だった。
どうやら横になっている俺の腕の中へ、下から鼻先を突っ込んでいたみたいだ。顔なら毛は短いからそりゃあ硬いって。
笑ってそう言った途端に羽音がして俺の耳と上唇、それから眉毛の横の辺りをガリッとやられたよ。
「ふぎゃ〜〜!」
情けない悲鳴を上げた瞬間、ブランカが驚いたように飛び上がって逃げていった。ごめんよ、耳元で思い切り叫んじゃったな。
「俺を噛んだのは誰だ〜〜!」
起き上がって、まずは腕に留まっていたメイプルを捕まえて笑いながらおにぎりの刑に処する。続いて、ブランとローザもにぎにぎと順番におにぎりの刑に処する。
三匹ともご機嫌で握られていたよ。ううん、羽毛のふわふわも良き、だなあ。
一通り他の子達とも戯れてから、顔を洗って身支度を整える。
「おおい、サクラ〜〜リビングへ行くから来てくれよ」
ご機嫌で水遊びをしているのを見て声をかけると、すぐ片付けて全員集合したよ。
「じゃあ行こうか。ええと、全員来るのか?」
当然のように、鱗チームとモモンガのアヴィ以外の全員が俺と一緒に行こうとするので驚いて足を止める。
「だって、今日も地下洞窟へ行くんでしょう?」
ニニに当然のようにそう言われて、誤魔化すように横を向く。
「ええ、どうだろう。今日は食事の後は、まずは収納袋を皆で分けて、それからケンタウルスの長老達が来るから、長老や他のケンタウロス達に雪スライムをテイムする予定なんだけどなあ」
「そんなのすぐに終わるじゃない。久しぶりに大暴れしたいんだから、今日も行きましょうよ!」
ご機嫌なニニに嬉々としてそんな事を言われてしまい、他の子達も当然とばかりに吠えたり羽ばたいたり飛び跳ねたりしているのを見て遠い目になる俺だったよ。
ううん、相変わらず食事以外の事については俺に決定権は無いみたいだよ。しょんぼり。