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マナの波動とお宝アイテム

「じゃあ出すね。えっとね、まずこれがご主人が倒したジェムモンスターから出た分です!」

 そう言って、全部で十二個の大小の鞄を取り出す。

 若干大きさに違いはあるが、皆が持っているのと同じショルダータイプの鞄で、一つだけベルトに取り付ける小物入れタイプがある。これはウエストポーチくらいの大きさだ。

「えっと、これがステゴザウルスから出たので、こっちはトライロバイトから出た分だよ〜〜!」

 一番大きな鞄を触手で示しながらアクアが得意げにそう言ってくれたが、俺はもう驚き過ぎて言葉が出ない。

「待って。俺が倒した分で、これだけ出た?」

 なんとか深呼吸をして息を整えてからアクアを覗き込んだ。

「じゃあ、ちょと聞くけど、まだ他にある?」

 すると、またポヨンと跳ねたアクアの周りに、スライム達がソフトボールサイズになって集まり、一瞬でゴールドとクリスタルとダイヤモンドダスト合成をする。

「もっといっぱいあるよ〜〜〜!。ご主人の分だけじゃあなくて、他の人達の分も いっぱいありま〜〜す!」

「ええ? もしかして、全員の分の収納袋をお前らが持ってる?」

「もちろん残さず全部集めて来たよ!」

 ドヤ顔で言われて、大きなため息を吐いた。

「ここに全部出してくれる?」

 俺がそう言った途端、一瞬でバラけたスライム達が次々に収納袋を吐き出し始めた。もう、どこの鞄屋の倉庫だよってレベルに山積みになったところで終わったらしく、スライム達がまた合体する。

 予想の百倍多い在庫の山を見て俺は無言で頭を抱えた。



「ちょっと待てよ。そもそもどうしてお前らが他の人の分まで全部持ってるんだよ」

「だって、他の子達はジェムと素材を集めるのに必死で、これは全部落としてあったからアクア達が責任を持って拾いました〜〜!」

 当然と言わんばかりのその言葉に無言になる。

「なあ、シャムエル様。今のってどう言う意味だ? どうしてせっかくの貴重なドロップアイテムなのに、収納袋だけ放置されたわけ?」

 いつの間にか右肩に居座っていたシャムエル様を振り返ってそう尋ねる。

「ええとね、ケンとハスフェルとギイの連れているスライム達には収納の能力を持たせているけど、それ以外の子達には収納なんて無いでしょう?」

 シャムエル様の説明に、その通りなのでうんうんと頷く。

「だから、その三人の連れている以外のスライム達は、いつもやっている事だけどジェムや素材を集めたら、それをそのまま自分のご主人のところへ持って行って、ご主人が収納バッグに入れるんだ。ここまでOK?」

 まあ当然なので頷く。

「ちなみに、スライム達には自分の主人が倒したジェムや素材、それから同じ主人を持つ仲間の従魔達が倒したジェムや素材がどれなのかが分かるから、例えば今日のようにトライロバイトを皆で倒した場合、地面に転がるジェムや素材を見て、自分の主人や仲間の従魔の気配がある物だけをそれぞれが集めているんだ。特に、今は全員がそれぞれ自分のスライムを連れているので、結果として取りこぼさずに全部集められているの。ここまでもOK?」

 その話は、以前少し聞いた事があるのでこれも頷く。

 すると、シャムエル様は、大きなため息を吐きつつ頷いた。

「ケンが来てくれたおかげで地脈が整ってこの世界が救われた。その強くなった地脈のおかげで誰のか分かるようにもなったんだよね」

 何故かドヤ顔になるシャムエル様。

「ええと、ごめん。今の所の意味が分からない」

 困ったようにそう言うと、少し考えたシャムエル様は一つのジェムとトライロバイトの素材の角、それから小さめの収納袋を一つずつ取り出して見せた。

「ええと、じゃあこれで説明するね」

 うんうんと頷いて、今更ながらに立ったままだった事に気がついてソファーに座る。

 当然のようにタロンが膝の上へ飛び乗ってきたので、頭から背中のラインを何度も撫でてやる。

 それを見て、シャムエル様はソファーの前に置かれたローテーブルの上に現れた。

「まず、これはトライロバイトのジェムで、これが素材の角です」

 そう言って先程のジェムと角を並べて置く。

「で、これが今回出た収納袋だとします」

 未だかつて無いくらいに詳しい説明に、俺はまたうんうんと頷く。

「ここでさっきの地脈が回復したって話に繋がるんだけど、そもそもジェムモンスターとは地脈の吹き出し口に発生していたでしょう?」

 そう言ってジェムと素材から収納袋を少し離して置く。

「そうだな。確か以前ベリーが大量発生前のとんでもないジェムの塊を集めてくれた事があったよなあ」

 あの時の衝撃を思い出しつつ遠い目になる俺。

「そうそう。つまり、このジェムと素材は、言ってみれば地脈が噴き出す事によって発生したものなの。それを倒すと、その時に言ってみればジェムや素材にはある種の印がつくんだ。つまり、倒した人が持つ、その人特有のマナの波動が」

「またよく分からない言葉が出たぞ。マナの波動って何?」

 俺の質問に、シャムエル様が困ったように黙って考える。

「ええと、言葉にするのは難しいねえ。要するにその人個人が持っている色っていうか、匂いっていうか、手触りっていうか……」

「ごめん、聞いた俺が悪かった。要するに俺にはよく解らないけど、スライム達はそのマナの波動ってやつを見て、どれが自分のご主人や仲間の倒したジェムや素材なのかが分かるってことだな」

「そうそう、分かってるじゃん。さすがはケンだね」

 嬉しそうに頬をぷっくりさせてそんな事を言われてしまい、俺はもう、その頬っぺたを突っつきたくなる衝動と必死で戦っていたよ。

「だけど、たまに落ちるこのお宝の収納袋は、私が直接作って潜ませている物だから、そもそも地脈の影響を受けていないから、個別認識の印であるマナの波動がほとんど付かないんだ」

「ええとつまり……スライム達には、誰の物か分からないって事?」

 嫌な予感に冷や汗をかきつつそう尋ねると、シャムエル様は笑いながら首を振った。

「分からない訳じゃあないんだけど、あの子達にはそれを見て集められる程の強い印が無いってところだね」

 笑ったシャムエル様の言葉の意味を真剣に考える。

「ええとつまり……ランドルさんやリナさん一家が連れているスライム達は、ジェムや素材を集めるのに手一杯で、予定外に落ちた収納袋には極薄い印しかついていないから認識出来ないから自分の物じゃあないと判断するって事か。じゃあ例えば俺のスライム達が集めている収納袋をゆっくり落ち着いて見せれば、誰がどれを倒して手に入れた物なのかは分かる?」

「まあ、無理だろうね」

 取り出した収納袋をペシペシと叩かれて、俺はすぐ横でパタパタと飛び回っているアクアゴールド達を見る。

「今回はもう、黙って全部まとめてケンが貰っておくか、あるいは全員に聞いて山分けするかだねえ」

 苦笑いするシャムエル様の言葉に、ちょっと気が遠くなった。



「よし、明日の朝イチで全員に報告して、皆で山分けしよう」

 大きなため息を吐いて、とりあえず一番公平であろう分け方を必死になって考える俺だったよ。

挿絵(By みてみん)

三月九日より、コミックアース・スター様にて「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」のコミカライズが連載開始となります!

作画は、エイタツ様が担当してくださる事になりました。

どうぞ、公開までもうしばらくお待ちくださいm(_ _)m

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