地下洞窟での昼食タイム!
「腹減ったな。じゃあ、まずは安全地帯へ移動して昼飯かな?」
盛大に鳴った腹の音を聞いて笑った俺の提案に、全員の同意の声が上がり大笑いになった。
「腹時計は、地下にいても正確ってか」
なんとか笑いを止めた俺の呟きにまたしても全員揃って吹き出してしまい、もういつまで経っても笑いが止まらない。そうこうしているうちに、気付けば広場にはまたしても大量のトライロバイトが出現して一面トライロバイトだらけになっていた。
だけど、笑ってそれに気付かない俺達を見た従魔達は、顔を見合わせて一斉に巨大化したのだ。そして嬉々としてトライロバイトに飛び掛かって行った。
「ああ、もう終わりだってば!」
気付いた俺が叫んだ時にはもう遅く、従魔達によるトライロバイト駆逐作戦が始まっていたよ。
ううん、俺達が近くにいないとあいつらも遠慮なく暴れられるみたいで、さっきよりもトライロバイトを叩き潰す速度が桁違いに早いし動きも激しい。
「まあ、あれならすぐに二面目もクリアーするな。仕方ないから気がすむまで待っててやるか」
諦めのため息を吐いた俺は、そう言って足元に転がるスライム達を見た。
スライム達は戦いには参加せずに全員俺達の近くにいる。
「そっか、お前らは攻撃は出来ないもんな。あいつらには防御は必要無いってか」
何となく手持ち無沙汰で足元にいたサクラに話しかける。
「ええとね、サクラ達も戦えって言われたら戦えないわけじゃあないけど……トライロバイトはちょっと難しいかなあ?」
モニョモニョと動きながら、申し訳なさそうにサクラがそう答えてくれる。だけどこの地下洞窟でトライロバイトが無理って事は、全部無理だって意味だよな。
苦笑いした俺は、小さく笑って足元に転がるスライム達を見た。
「うちは戦力過剰だから気にしなくていいぞ。なあ、ちょっと座りたいから誰か椅子になってくれるか」
「はあい!」
俺がそう言った瞬間、一瞬で集まったスライム達によるいつものスライムベッドが目の前に出来上がっていた。
「あはは、ここで寝ろってか」
笑いつつもとりあえず端っこに腰掛ける。ううん、いい座り心地だ。
それを見たハスフェル達も、自分のスライム達にベッドになってもらってのんびり座って寛ぎ始めた。
結局、従魔達による二面目が完全クリアーされるまで、俺達は空きっ腹を抱えて待つ羽目になったのだった。
しばらく待ってようやく二面目がクリアーされ、スライム達総出のジェム回収も終わったところで早々にその場を後にして、俺達は安全地帯である元食堂へつながる通路へ駆け込んで行った。
三面目クリアーするまで待たされたら空腹で倒れるって。
「到着〜〜!」
何となく早足で通路を進み到着した元食堂は、何もないがらんとした場所になっている。
ここは家具の類はほとんど残っていなくて、壁面に岩を掘って作られた三段の水槽が並々と水を湛えて流れ落ちているだけだ。床を二分するみたいに真ん中に水の流れる細い溝があるんだけど、多分これも元々排水を流すために掘られた水路っぽい。
奥側に集まり収納していたいつもの机と椅子を取り出して並べる。
「この後はしっかり戦うんだから食べておかないとな。さて、何にするかねえ」
少し考えて、この前スライムトランポリンをした時に弁当で出て美味しかった巨大ハンバーガーセットを取り出して並べた。
これはアーケル君達が差し入れてくれた分と、その後にも追加で買って来てくれた分もあるのでまだまだ大量にあるんだよな。
一応セットになっているので外で食べる時用にと思って、普段のお城での食事には出していないメニューだよ。
「セットになってるから好きなのをどうぞ。ええとこれがベーコンダブルバーガーで、これが照り焼きチキンバーガー、それでこっちがミンチカツのセットだよ。ちょっと冷えているからスープもな」
そう言って、取り出した寸胴鍋からいつもの片手鍋にコーンスープをたっぷりと入れて軽く火にかけておく。
「ああ、焦げないように見ておきます」
アーケル君が駆け寄って来てくれたので、スープはお任せしておく。
「おう、よろしくな。じゃあ後はコーヒーくらいかな?」
コーヒーの入ったピッチャーも取り出しておく。
「たまにはガッツリメニューもいいよな」
そう呟いた俺は、まだ食べた事の無いミンチカツバーガーセットを手にした。
マイカップにはホットコーヒーを、別に用意したお椀に温まったコーンスープもたっぷりと入れれば準備完了だ。
それぞれ好きなセットを手にして座るのを見て、俺は机の上に広げたいつもの敷布の上にミンチカツバーガーのセットとコーンスープとコーヒーを並べた。
「ミンチカツバーガーのセットとコーンスープとコーヒーをどうぞ。今、地下洞窟に来ています。午後からはステゴザウルスのところへ行くらしいので、どうぞお守りください」
手を合わせて小さくそう呟く。
いつもの収めの手が現れて俺を何度も撫でてくれた後に、嬉しそうに料理を順番に撫でてからミンチカツバーガーセットを包みごと持ち上げてから消えていった。
「あの大きさは、きっと喜んでもらえると思うなあ」
包みを開けて歓喜の声を上げるシルヴァ達を思って思わず吹き出す。
「さあ、俺も食べよう」
そう呟いて敷布を片付けたところで、お皿を持ったシャムエル様が突然登場して踊り始めた。
「食、べ、たい! 食、べ、たい! 食べたいよったら食べたいよ〜〜〜〜〜!」
当然、即座にカリディアもどこからともなくすっ飛んで来て一緒になって踊り始める。
「ご苦労様。カリディアにはこれだな」
一粒だけ取り出した激うまブドウをカリディアに渡してやり、お皿をこっちに突き出しているシャムエル様を見る。
「で、どれくらい食うんだ? ちなみにこんな感じな」
包みを開けて中を見せてやる。
「お、バンズもサイドメニューも、前回のとちょっと違うぞ」
そう言って、俺もまじまじと包みの中を見つめた。
雑穀風の少し色の違うバンズに挟まれているのは、デミグラスソースをまとった分厚いミンチカツだ。もうこれを見ただけでお腹がいっぱいになりそうだよ。そしてミンチカツの上には間違いなく二個サイズのこれまた分厚いオムレツが挟まれている。ミンチカツの下にはみ出しているのは、どうやらスライスした玉ねぎみたいだ。
成る程。前回のベーコンダブルバーガーの時は申し訳程度のレタスが入っていたけど、こっちはやや多めのスライス玉ねぎなのか。
しかも、サイドメニューのポテトは極細のカリカリタイプ。これが油紙に包まれて一緒に入っていたんだけど、絶対パーティーサイズだろうって言いたくなるくらいに大量に入っていた。
そしてこれまた大量に入っていたナゲットは、黒胡椒がたっぷりの大人の味タイプ。ううん、これは絶対お酒に合いそうだ。よし、残して置いて飲む時に食べよう。
しかし、さっきの包みの大きさと入っていた量にバグを感じるのは……俺だけか?
「全部半分ずつください!」
雄々しく宣言するシャムエル様のドヤ顔を見て、無言でナイフを取り出した俺だったよ。
ううん、シャムエル様の胃袋がどうなっているのか。冗談抜きでちょっと怖いぞ。