ダイヤモンドダスト合成と明日の予定
「おお、予想以上にふわふわだなあ。これは美味しい」
もっとボリュームがあると勝手に思っていたんだけど、台湾カステラみたいなふわふわケーキは意外なほど軽くて、あっという間に食べちゃったよ。
「ううん、だけどさすがに肉をあれだけ食った後にこれを二個食う勇気は俺には無い」
苦笑いして、すでに二個目に突入しているアーケル君を見る。
「なあ、これ、俺も欲しいからどこで売っていたか教えてくれるか?」
「もちろん、それなら多分予約しておかないと駄目だと思いますね。一度に焼ける数が決まっているので、あまり一度に多くは渡せないって言われて、結局、俺は十個しか買えませんでした」
アーケル君、あれを十個も買えば充分だと思うけど……。
「じゃあ、ナイフのお店を教えてもらう時にそのケーキ屋さんに行けばいいな。それで予約しておいて後日引き取りに行けばいい」
「そうですね。じゃあそれでいきましょう」
三つ目に手を伸ばすアーケル君を見て苦笑いした俺は、少し考えて緑茶を全員分淹れておいたよ。
「さてと、ところで一つ報告があるんだけどいいかな?」
ケーキを完食して緑茶を飲んでまったりしていたところで、俺はそう言って足元に置いた鞄を手にする。
「おう、どうした?」
不思議そうなハスフェル達ににっこりと笑いかけ、分解した雪スライム達に出てきてもらう。
「雪スライム達だな。ふむ、改めて見るとなんとも不思議だなあ」
笑って手を伸ばしたハスフェルが、アワユキとササメユキを順番に撫でている。
「実はさあ、さっき見せてもらったんだけど、こいつらも合体するらしいぞ」
笑った俺の言葉に、ササメユキを撫でていたハスフェルが驚いたようにこっちを向く。
「おお、やっぱりそうか。どんな合成をするんだ?」
ハスフェルの質問にもう一度にんまりと笑った俺は、雪スライム達を見た。
「なあ、合体して見せてくれるか?」
「はあい! 見てくださ〜〜〜い!」
俺の言葉に元気な雪スライム達の返事が返り、全部で十匹の雪スライム達が一瞬で合体する。
「へえ、凄い! なんだかキラキラしてる!」
「いやいや、スライムだけじゃなくて、あの周りに飛び散っているキラキラしたのは何だ?」
「確かに細かい粒みたいなのが飛び散ってキラキラしているなあ。あれは何だ?」
アーケル君の叫ぶ声に、ハスフェルとギイの不思議そうな声が重なる。
「これは、ダイヤモンドダスト合成って言うらしい。しかも、まさかのダイヤモンドダスト付き!」
笑った俺の声にハスフェルとギイが同時に吹き出し、呆然としていたアーケル君達も遅れて吹き出して揃って大爆笑になったのだった。
「いやあ、全部揃えば合体してくれるかもとは思っていたが……」
「これは予想以上だなあ」
パタパタと羽ばたいてはキラキラのダイヤモンドダストを振り撒いているダイヤモンドアワユキを見て、笑い崩れるハスフェル達。
「しかもさ。ほら、まさかの称号までゲットしちゃったんだよなあ」
にんまりと笑った俺は、自分のギルドカードを取り出して裏返して皆に見せる。
そこにしっかりと書かれていたスノーマスターの文字を見て、またしても大爆笑になったのは当然だよな。
そして俺は、今日食べた岩豚の肉を引き取りに行った時のギルドマスターとのやりとりも報告しておいた。
どうせ、彼らも雪スライムをテイムしたらギルドへの登録は必要なんだからさ。って事は、彼らにも称号はつくわけだしね。
「あはは、確かに知らない称号がいつの間にか付与されていれば、ギルドマスターとしては知らん顔は出来んな。しかももし誰かに聞かれたら、勝手についた称号だから自分にもよく分からんって言えばいいって、平然と言うか。よく考えたらそれも凄いよなあ」
「確かになあ。だが、時々勝手に付いた謎の称号があるってのは聞くから、まあ。それでいいんじゃないか」
笑った二人の言葉に、リナさん達とランドルさんは笑い崩れている。
オリゴー君とカルン君は、どうやらアーケル君から、このスライム達の合体に関しての詳しい話は聞いていたみたいで、彼らも揃って大笑いしていたよ。
「これ、ベリーが知ったら多分また狂喜乱舞するだろうな。今だって、きっと外でテイムを待ってくれている雪スライム達を集めて、質問攻めにしていると思うぞ。さすがは知識を誇る賢者の精霊。自分の知らない事には、とにかくめっちゃ貪欲なんだよなあ」
思わず笑いながらそう呟くと、アーケル君達がまた揃って吹き出していたよ。
それから彼らからベリーの事で質問攻めにあい、結局、俺はベリーとの出会いから今日までの色んな出来事を、全部一から詳しく話す羽目になったのだった。
いやあ、改めて話すとなんとも不思議で我ながら感心するよ。
まさかの迷子のケンタウロスと出会って、そのままずっと一緒に旅をしていたなんてさ。
「まあ、そんな感じでベリーも俺達との旅を楽しんでくれているみたいだ。普段は姿を隠して一緒にいてくれるけど、あまり気にしないでやってくれよな。何か用があったり聞きたい事があれば、俺に言ってくれたら取り継ぐからさ」
揃ってうんうんと頷く彼らと笑い合い、今日はもう解散って事になった。
まあ、彼らには明日以降、順番に雪スライム達をテイムしてもらわないと駄目だもんな。
「それじゃあもう休みますね。ご馳走様でした」
「ご馳走様でした! すっごく美味しかったです!」
「ご馳走様でした! またお願いします!」
満面の笑みで部屋に戻っていくアーケル君達を見送り、俺達もそれぞれの部屋に戻った。
明日はとりあえず、もう出かけるのはやめにしてまずは雪スライム達をテイムする。それから、元気があれば、庭の地下洞窟に入ってみようって事になったよ。
よし、いよいよヘラクレスオオカブトの剣の実戦デビューだぞ!