まさかの展開と岩豚の肉!
「それじゃあ、そろそろ帰るか」
手早くテントを片付けた俺の言葉に、皆も笑顔で頷きそれぞれの騎獣に飛び乗る。
オリゴー君とカルン君は俺のところへ走って来て、ここまでずっと彼らを乗せていたテンペストとファインに飛びついた。
「ここまで乗せてくれてありがとうな」
「ずっと乗せてくれてありがとうな。新しく仲間になった俺達の従魔とも、仲良くしてやってくれよな」
笑ってそう言った二人は、思いっきりテンペストとファインを抱きしめ、それから体を両手で撫でまくってから手を振って戻って行き、新しくテイムしたシンリンオオカミに飛び乗った。
おいて行かれたテンペストとファインの尻尾が、それを見てちょっと寂しそうにしょぼんって感じになっていたのがおかしくて、俺は手を伸ばして二匹を撫でてからマックスに飛び乗った。
「それで、帰る時にはちょっと山側を進んで、もしも雪スライムがいたらまた順番にテイムって事だな」
「そうですね。それでいきましょう」
笑ったランドルさんの言葉にリナさん達も笑って頷いている。
「俺達は、街へ戻ったら首輪と手綱の準備をしないとな」
「あ、それを言うなら従魔登録も忘れずにしないとな。ええと、雪スライム達の登録ってどうするべきだと思う?」
俺の言葉に全員が無言になる。
「ううん、どうするべきだろう……?」
困ったようなアーケル君の呟きに、ランドルさんも同じく困ったように腕を組んで考え込んでいる。
これはメタルスライムと違って誰でも捕まえられるわけじゃあないし、そもそも季節限定。超レアキャラ確定だよ。
それに正直言って、他のテイマーや魔獣使いが連れているスライム達でこれが出来るかどうかは、はっきり言って分からない。ううん、迂闊に赤の他人に見せて、譲ってくれとか売ってくれとか言われるのはごめんだよ。
「となると……いっそ、適当に身代わりを立てて名前だけ登録しておくか」
要するに以前レース模様のクロッシェを登録した時にやったやり方で、確かあの時はオンハルトの爺さんからスライムを借りて連れて行って登録したんだっけ。
「ああ、そうか。スライムはスライムとしか登録欄には書かないから色は関係無いのか。それはいいアイデアだな。じゃあそれでいくか」
「いい考えね。それなら自分達が連れている他のスライムを見せて、名前だけは登録しておけばいいわね」
アーケル君が俺の呟きに反応して大きく頷き、リナさんもその隣で小さく拍手をしながら頷いている。
って事で、スライム達の登録はそれでいく事になったよ。
ところが、ハスフェル達の案内でかなり山側の雪原地帯を走っていると、もう出るわ出るわ。大はしゃぎのスライム達が飛び出して行って呼びかけるたびに、わっさわっさと集まってくる雪スライム達。まるで突然平地に起こった雪崩みたいに雪が波の如く盛り上がってこっちに襲いかかってくる様子を見て、冗談抜きでマジ逃げしそうになったマックス達だったよ。
って事で、俺は残りの四匹をまずテイム。
名前は、ワタユキ、モチユキ、セッカとリッカだ。
綿雪ともち雪はそのまま雪の名前で、雪花と六花は雪の結晶の別名だよ。もう無理矢理なネーミングだ。
アーケル君とリナさん、それからランドルさんまでがそれぞれ残りをテイムして全員十匹になったところで、テイムの一日の限界数なので打ち止めになった。
リナさんとアーケル君は、大物のシンリンオオカミをテイムしているから無理はだめだ。
結局、テイムするこっちの方に数の限界が来てしまいテイム出来なくなってしまったので、集まった雪スライム達に謝り倒してテイムを待ってもらうハメになったよ。それで相談の結果、未テイムの雪スライム達には街の外で待っていてもらい、俺達がお城へ戻ったら勝手に山側からアッカー城壁を乗り越えて庭に入って来てもらう事になった。一応、彼らの監視はベリーが請け負ってくれたので任せておいた。
集まった雪スライムは全員に全種類テイムしてもまだ余るくらいにいるので、ベリーの頼みで他のケンタウロス達にも残りをテイムしてやる事になったよ。
ううん、雪スライムって超レアキャラのはずなのに、これだけいると有り難みゼロ。なんだかな〜〜〜〜。
まあそんな訳で、日が暮れる前に無事にバイゼンの街へ戻った俺達は、まずは従魔登録をする為に冒険者ギルドへ駆け込んでいたのだった。
そして、新しくテイムしたシンリンオオカミのビアンカと一緒に、定番の子達やレインボースライム達に出てもらい、またスライムを沢山テイムしたんだって事にして、無事に登録を済ませたのだった。
「じゃあ無事にオリゴー君とカルン君の騎獣になる従魔はテイム出来たし、予定外のスライム達もテイム出来たんだから、お祝いを兼ねてガッツリ肉でも焼こうかね」
登録を終えてそう言って笑った俺の言葉に、全員が拍手喝采になる。
「だけど岩豚の肉はまだだから、あるのでいいよな」
立ち上がりながらそう言うと、ちょうど近くにいたギルドマスターのガンスさんが振り返った。
「岩豚が欲しいのか? なら一匹だけでよければもう捌けているぞ。持っていくか?」
「お願いします!」
俺だけでなく、全員の声が重なる。
「あはは、了解だ、じゃあこっちへ」
ガンスさんの声に俺は嬉々としてついて行ったよ。
よし、今夜は岩豚ステーキだ。いや、ここは俺はガッツリ肉を切るだけにして、後は好きに焼く焼肉パーティーにしてもいいかもな!