雪スライムの名前と今後の予定?
「ええと、じゃあまずは俺からだな」
笑ってそう呟いた俺は、今か今かと待ち構えている雪スライム達に手を伸ばして、一列目の先頭にいる雪スライムをそっと掴んだ。
ちなみに、もしも確保していない野生のスライムにこんな事をしたら、伸びて来て体にくっつかれて大変な事になるよ。そのまま放置したら服だけでなく最終的には体も溶かされてしまうし、口や鼻を塞がれたらもちろん窒息の危険だってあるので、実は地味に危険なジェムモンスターだったりするのだ。
まあ、簡単に叩き潰せるし剣で斬る事も、火で焼く事も出来るので倒すのは簡単なんだけどね。
だけど、俺の手に掴まれた雪スライムは、抵抗する事もなくプルプルと震えているだけだ。
「俺の仲間になるか?」
掴んだ雪スライムを見つめながらそう尋ねると、ピカっと光った。
「はあい、従います!」
嬉々としたその声は、子供みたいな可愛い声をしている。
「おう、よろしくな。ええと、紋章はどこに付ける?」
掴んでいたスライムを離してやり、右手の手袋を外しながらそう尋ねる。
ずらっと勢揃いしてこっちを見ている紋章付きのスライム達を見た雪スライムは、ビヨンと伸び上がった。
「皆と同じところにお願いしま〜〜す!」
「了解。お前の名前は、アワユキだよ。よろしくな、アワユキ」
上側に手を当ててやり名前を教えると、またピカっと光ってバスケットボールサイズになった。
「わあい、名前もらった〜〜〜!」
もちろん、名前の由来は淡雪のカタカナ表現だ。
嬉しそうに跳ね飛んだアワユキは、アクア達のところへ行ってモゴモゴとくっつきあって挨拶を始めた。
「仲良くな」
それを見た俺は笑ってそう言うと、待ちきれずに進み出てきた二匹目の子を掴んだ。
ちなみに、俺がテイムした雪スライムの名前は、アワユキ、ササメユキ、コナユキ、ボタンユキ、タマユキ、ハイユキだ。もう、途中からは必死になって考えたよ。
ランドルさんと場所を交代して、改めて六匹の雪スライム達を撫でてやる。
「ええと、色は全部白だけど、表面のざらつき具合や手触りが微妙に違うなあ。何がどう違うんだ?」
メタルスライムみたいに元になるものが違うわけじゃあない。全部雪だからな。
思わずそう尋ねると、何故かプルプルと震えた雪スライム達が無言になった。これは多分考えているのだろう。
「えっと、アワユキ達は生まれ出た場所の雪と同じになるの」
「だからサラサラの雪の場所ならサラサラになるし」
「硬くてツルツルの雪の上だとそんな風になるんだよ」
口々に答えてくれた内容に納得する。新雪のパウダースノーと、万年雪のカチカチの場所なら当然雪質は全く違う。そうなると、そこにいる雪スライムの手触りもそれに準ずるわけか。成る程成る程。
うんうんと頷いていると、退屈したらしいハスフェルとギイが集まってきた。
「ほお、確かにいつものスライム達とはまた手触りが違うなあ」
笑いながらアワユキ達を撫でる彼らを見て俺も笑いながら、たった今聞いた手触りの違いの理由を説明をしてやる。
「ああ、成る程な。確かに理にかなっているなあ。それでシャムエルによると種類が十種類あるのか」
「みたいだな。だから多分だけど全種類集めたら、また金色合成みたいなのをするんじゃあないかと思っているんだけどなあ」
そう言いながら、雪スライム達を順番に撫でているシャムエル様を見る。
「まあ、それは集めてみてのお楽しみだね。ええと、いつものように収納と浄化の能力を授けておいたからね!」
笑ったシャムエル様はそう言って俺の右肩の定位置に戻って来た。
「ふっふ〜〜ん。スノーマスターの称号は手に入るかなあ?」
得意げなその言葉に、俺達の目が見開かれる。
「おお、メタルマスターみたいに、雪スライムも集めると称号が手に入るんだ」
「まあ、頑張ってくれたまえ! だけどこれって、反則的な集め方だよねえ。スライム達が一緒に遊ぼうって説得して連れてくるってさ。雪スライムって、本来なら見つけるのすら困難な子達なのにさ!」
ケラケラと笑ったシャムエル様は、そう言って面白そうにスライム達を見た。
「まあだけど、それだってこれだけのスライム達をテイムしたからこその事だからね。まあ、いいんじゃない?」
「はあい、いい事にしておいてくださ〜〜い!」
「皆で一緒に遊ぶのが楽しみで〜〜〜す!」
アクアとサクラの声に続いて、他のスライム達までがポヨンポヨンと跳ね飛び始める。
ううん、改めて見るとすごい数だねえ。
苦笑いした俺は、残った二匹を見て進み出た。
「じゃあこの残り二匹はベリーの子だな。お前、俺の仲間になるか?」
掴んだ雪スライムにそう話しかける。
「「はあい、仲間になりま〜〜す!」」
掴んだ子だけでなく、二匹同時に即答されて小さく吹き出した俺は、残りの二匹にスズランとスイセンって名前を付けてやった。
「ほら、お前らは俺じゃあなくてこの人のところへ行くんだ。可愛がってもらえよ」
紋章を授けた二匹を手の上に乗せて、ベリーの目の前へ持っていく。
「はじめまして。ベリーと申します。よろしくお願いしますね。スズランとスイセン」
目を細めた嬉しそうなベリーの言葉に二匹が嬉しそうに伸び上がる。
「新しいご主人!」
「よろしくで〜〜す!」
ぴょんと跳ねてベリーの差し出した手に飛び移った二匹を見て、俺も笑顔になる。
嬉しそうに二匹を交互に撫でたベリーは、そっと自分の体の上、馬の胴体部分の背中の上に二匹を並べて乗せた。
「貴方達は普段はそこにいてくださいね」
「わあい、高いねえ〜」
「本当だ、高い高い!」
嬉々としてはしゃぎはじめた二匹の横に、一瞬でシャムエル様が現れた。どうやらあの子達にも収納と浄化の能力を授けてくれたみたいだ。
ベリーも、いつももの凄く沢山のジェムを集めてくれるから、あいつらもお手伝い出来ていいよな。
「ああ、ありがとうございます。これでジェム集めが楽になりますね」
嬉しそうに笑ったベリーの言葉に、また一瞬で右肩に戻って来たシャムエル様がドヤ顔になる。
「さてと、結構時間が経っちゃったなあ。冬の日暮れは早いし、そろそろ戻るか」
「そうだな。それならもう少し山側を戻って、もしも雪スライムがいたらテイムすれば良かろう」
「だな。ジェムは山程あるから無理に戦う必要も無しか。ううん、ヘラクレスオオカブトの剣のデビューはもうちょい先か。残念」
「それなら、何か探しましょうか?」
俺の呟きにベリーが即座に反応する。
「いやいや、別にそこまで無理しなくても良いって。あ、それなら庭の地下洞窟でもいいんだよな。あそこも恐竜が出るんだから、あそこで戦ってみればいいな。よし、天気が悪くて郊外へ出かけられない日に一度潜ってみるか」
「おう、言ってくれたらいつでも付き合うぞ」
俺の呟きに即座に反応するハスフェルとギイ。地下洞窟と聞いて目を輝かせるランドルさんとリナさん一家。
「あはは、じゃあまだまだ春までの間も、暇はしなくて済みそうだな」
誤魔化すように笑った俺の言葉に、皆が揃って大きく頷く。
「言ってくだされば、俺達もいつでも地下洞窟にお付き合いしますよ!」
目を輝かせたアーケル君の言葉に、俺は乾いた笑いをこぼしたのだった。