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ベリーのうっかりと雪スライム達の……?

「じゃあ、あいつらが説得してくれるみたいだから、超レアなスライムをテイムしに行きましょうか」



 笑った俺の言葉に呆気に取られた全員が反応するよりも早く、ものすごい食いつきを見せたのはまさかのベリーだった。

「ケン! 雪スライムをテイムなさるのですか! あの、わがままを言うようで申し訳ありませんが、出来れば私にも一匹テイムしていただけないでしょうか!」

 突然目の前に姿を現して嬉々として俺の腕を取るケンタウロスに、リナさん一家とランドルさんが揃って飛び上がっている。

「な、な、な……」

 目を見開いて、壊れたおもちゃみたいに揃って口をぱくぱくさせているリナさん一家とランドルさんを見て、俺は大きなため息を吐いた。

「ベリー、いくら何でもはしゃぎ過ぎ。皆びっくりしてるじゃんか」

「え……?」

 俺の言葉にベリーが目を瞬き、自分の手を見て、自分の体を見下ろしてから思わずと言った感じで小さく吹き出す。

「おやおや、私とした事が、つい興奮してしまいましたね」

 こほんと咳払いをしてそう言ったベリーは、文字通りポカンと口を開けて自分を見つめているリナさん一家とランドルさんに向かってにっこりと笑った。

 おお、賢者の精霊が笑って誤魔化したぞ。

 俺がもう吹き出しそうになるのを必死で堪えながら、リナさん達を振り返った。

「ええと、彼はベリー。ご覧の通り賢者の精霊のケンタウロスです。実を言うと、ずっと前から俺達の旅の仲間です」

 もう、こうなってしまっては、ベリーの存在を隠す意味は無い。

 笑った俺の説明に、またしても全員の目が、揃って転がり落ちるんじゃあないかと突っ込みたくなるくらいに大きく見開かれる。

「はあ〜〜〜〜〜?」

「賢者の精霊が〜〜?」

「ずっと前から、旅の仲間〜〜〜?」

 アーケル君の悲鳴に続き、オリゴー君とカルン君の叫ぶ声が綺麗に続く。ううん、さすがは兄弟ア〜ンド双子。息ぴったりだね。

「ええと、俺がこっちの世界……樹海から出てきて間も無くさ。ギルドの依頼でとある事件を調べに辺境の村へ出向いた時に、衰弱して弱っていたベリーを発見して保護したわけ。それで、その後ずっとまあ……迷走する俺の旅にベリーが付き合ってくれているんだ。一応、まだ当分一緒にいてくれるみたいです!」

「それはもしや、あの岩食いの件があるからでしょうか?」

 真顔のランドルさんの質問に、ベリーが笑って首を振る。

「ああ、それとは関係ありません。ですがその一件なら、ケンタウロスの郷から大勢の仲間達が来てくれて、実を言うと今も警戒を続けてくれています。ですが、私がケンと一緒にいるのは、私がそうしたいからです。郷の長老も好きにすればいいと言ってくださいましたからね」

 にっこりと笑ったベリーの言葉に、岩食いの一件はもう終わったと思っていた俺は驚いてベリーを見た。

「ええ、岩食いの一件って、もしかしてまだ終わってなかったの?」

「まあ、今のところはごく小さな群れが散発的に現れる程度なので、問題は無いようですがね。一応、岩食いの出現限界期間である春の雪解けの時期までは、引き続きそれなりの警戒が必要です」

「お、おう。そうなんだ。よろしくお願いします」

 あの、恐ろしい真っ黒な岩食いを思い出して、思わず身震いする。

「まあ、それは彼らに任せておけばいいと思いますよ。それより、行かないんですか? 外ではスライムちゃん達が大張り切りして、何やら大変な事になっているようですけれども?」

 笑いを堪えた意味深なベリーの言葉に、俺は無言でテントの外を見る。

「大変な事って……?」

「まあ、それはどうぞご自分の目で見て確認してください」

 にっこりと笑ったベリーの言葉に、俺はハスフェル達と顔を見合わせる。

「うん、とりあえず片付けて外へ行ってみよう」

 頷き合った俺達は、とりあえず手早く散らかる食器やら何やらを片付け、全部まとめて俺が収納しておいた。

 ううん、俺の収納も何だかものすご〜く増えている気がするんだけど……?



「それで、一体何がどうなったんだ?」

 そう呟きながら揃ってテントの外へ出ていく。

 そして目の前に広がった光景に、俺たちは揃って思いっきり吹き出す羽目になったのだ。

「おいおい、ちょっと待てよ。これって一体……」

 何とか笑いを堪えた俺は、そう呟いて遠い目になる。

 何しろ目の前に広がっていたのは、全部で二十匹くらいはいそうな真っ白なスライム達と、その真っ白なスライム達を取り囲むようにして広がり、ドヤ顔で勢揃いしてこっちを見ているスライム達だったのだ。

「ご主人〜〜! とりあえず、この辺りにいる子達に集合をかけました〜〜〜! 一緒に遊びたいからテイムしてくださいってさ〜〜〜!」

 得意げなアクアの声に、俺はもう一回思い切り吹き出したのだった。



 まさかの、ヤミー以来の自主的なテイム希望。しかも超レアな子達。

 いいねえ。もちろん全力でもってテイムして差し上げようじゃああありませんか。

 あ、だけどさすがにこれ全部俺がテイムしたら、絶対に心臓止まるって……。


挿絵(By みてみん)

2022年12月15日、アーススターノベル様より発売となりました、もふむくの三巻の表紙です。

イラストは引き続き、れんた様が素敵に描いてくださいました。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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