今回の料理の数々!
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「ありがとうございます! ああ嬉しい〜〜〜〜! 全部買えた〜〜〜!」
大量のグッズを全て手持ちの収納袋に収納したフクシアさんとファータさんは、先ほどからその収納袋を抱き締めながら、もうずっと満面の笑みでお礼を言い続けている。
リナさん一家もランドルさんも、もちろん俺達ももう揃って虚無の苦笑いだよ。
ううん、これも一種のオタ活ってやつなのかねえ。
一体いくら使ったんだろう。割と本気で聞いて見たい気がしたけど、嬉々として説明されてもどう反応していいか分からないので、大人しくしておく。
「あはは、まあ無事に希望の品物が買えたみたいだし、良かったですね。ええと、それでもう中に入れるのかな?」
気がつけばあれほど並んでいた人はかなり減っていて、代わりにお品書きには完売と書かれたメモがベタベタと貼られ始めていた。
「うわあ、あれ全部売り切れたんだ。すげえなあ」
思わず呟いた俺の言葉に、ハスフェル達も一緒になって苦笑いしていたよ。
「じゃあ、外は寒いしもう入るとするか」
ハスフェルがそう言い、入口でハスフェルが持っていた木札を見せてから全員揃って劇場の中へ入る。
何と今回の席は前回よりもさらに良い席で、用意されているテーブルの大きさも広いし椅子の座り心地が違う。しかも舞台の真正面。これっていわゆるVIP席ってやつですか?
俺達用にはテーブル二つ分が用意されていたのでリナさん一家が一つのテーブルに座り、ハスフェルとギイ、ランドルさんと俺とフクシアさんとファータさんが広い方のテーブルに座ったんだけど、何故か俺の両隣に当然のようにフクシアさんとファータさんが座ったよ。あれ、もしかしてこれって両手に花状態ですか? もしかして、俺にもモテ期到来ですか?
脱線しそうになる思考を無理やり引き戻してテーブルを見る。
前回同様にテーブルには大きめの傘がついたランプが置かれていて、食事をする手元は明るく、だけど会場内は薄暗い仕様になっている。
何だか落ち着かなくてチラチラと右や左を見つつ座っていると、次々に人が入り出してあっという間に満席になったよ。漏れ聞こえる話によると外はまた雪が降り出しているらしい。早めに来ておいて正解だったみたいだ。
しばらくするとワゴンを押した何人ものドワーフのスタッフさんが出て来て、各テーブルにワイングラスとワインボトルを並べ始めた。これも当然一人一本。
しかもこれ今気がついたけど、このワインもいわゆる劇団の名前と今日の演目入りのオリジナルのラベルになってる。道理で見た事ないわけだ。
「もしかして、このワインも……買った?」
小さな声で隣にいるフクシアさんに尋ねると、当然と言わんばかりに満面の笑みで頷かれたよ。
目の前で手早くワインの栓を抜いてグラスに注いでくれる。
すぐに別のドワーフ達がワゴンを押しながら出てきて、カトラリーの入ったカゴを置いてからこれまた大きなお皿に盛り付けられた料理を並べていく。
今回のメイン料理は鶏肉みたいで、分厚くて大きな胸肉が丸ごと一枚、ツヤツヤの照り焼きソースっぽいのに綺麗に絡められている。ううん、俺はこれ一枚食ったら他が絶対食えないレベル……。
それから掌くらいはありそうな大きなローストビーフのスライスが全部で六枚、綺麗な扇状に並べられている。その隣にあるのはふわふわのオムレツ、多分玉子三個分サイズは余裕である。それから20センチくらいはある焼いたソーセージが三本。
その隣の別のお皿に盛り付けられている温野菜と山盛りの揚げたポテトが、これが副菜なんて言わせないぞとばかりに存在感を醸し出している。
そして俺の感覚では三人前くらいはありそうな、大きなお椀に入っているたっぷりのポタージュスープ。
一人一つずつ置かれたカゴに山盛りになっているのは、スライスした多分一本分のフランスパンと、これも大量の柔らかい丸パンとクロワッサンの数々。
別のお皿には、燻製のチーズや燻製卵、それから一口サイズにカットされた燻製肉が山盛りになっている。これお酒のつまみ用かな?しかしちょっと待て、これ一体何人前だよ!
相変わらずの大量の料理の数々に、気が遠くなったけど俺は間違ってないよな?
だけどハスフェル達やリナさん一家は、この料理を見て大喜びしているし、両隣に座るフクシアさんとファータさんも笑顔で拍手なんかしてるよ。
ううん……毎回思うけど、やっぱりこの世界の人は食う量がおかしいと思うぞ。