いつもよりもちょっとハードな朝の光景?
「ふああ、良いお湯だったなあ」
もう一度しっかりと温まった後、サクラに綺麗にしてもらって着替えた俺は、麦茶を飲んで水分補給をしてから部屋に戻り、ニニとマックスが待ち構えているベッドにそのまま飛び込んでいった。
「ご主人、あったかい」
ニニが嬉しそうにもの凄い音で喉を鳴らし始める。
背中側には巨大化したラパンとコニーがいつものように収まり、俺の足元にはカッツェがくっついて丸くなる。
今日はタロンとフランマが並んで俺の腕の中へ潜り込んできた。さらに雪豹のヤミーが小さいままで俺の顔の横に丸くなってくっつき、ソレイユとフォールがその横に無理やり潜り込んでくる。
他の子達はベリーのところへ行ったみたいだ。おお、顔の横も腕の中もこれ以上ないくらいにふわふわだよ。
「毛布かけますね〜〜〜!」
サクラ達が、いつも使っている幅広の毛布を広げて掛けてくれる。
「では、おやすみなさい」
笑ったベリーの声がして、一瞬で部屋の明かりを消してくれた。
「うん、ありがとうな。おやすみ」
フランマのもふもふ尻尾を無意識に撫でさすりながら、目を閉じた俺は気持ち良く眠りの国へ墜落していったのだった。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん……起きる、よ……」
もふもふのニニの腹毛に埋もれて熟睡していた俺は、いつものモーニングコールに起こされてほぼ無意識で返事をした。
だけど当然目が覚める訳もなく、そのまま欠伸を一つして二度寝の海へドボン。
「相変わらず寝汚いねえ」
「まあ、ケンですからねえ」
呆れたようなシャムエル様とベリーの声が聞こえたけど、言い返す元気なんてある訳もない。
ふああ、二度寝最高〜〜〜!
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
腕の中のフランマのもふもふ尻尾を撫でさすりながら、二度目のモーニングコールに起こされて何とかそう返事をする。
「あはは、寝てるのに、起きてるとか言うし」
「どう見ても寝ていますから、もう起こして良いのでは?」
「そうよね〜〜〜!」
「では、久々に私達が起こしてあげるわ〜〜〜!」
頭上から聞こえる声に、一応頭の中では目を覚ましている俺は大いに焦った。
最近は何故かお空部隊の面々が最終モーニングコールをずっと担当していたんだけど、これは久々の巨大化した猛獣コンビじゃんか。
起きろ俺! マジで肉がもげるぞ!
「では起こしますね〜〜〜!」
「ご主人、起きて〜〜〜!」
「起きてくださ〜〜〜い」
「ごしゅじ〜〜〜〜ん!」
「お、き、て!」
語尾にハートマークがついていそうな甘い声が次々に頭上から聞こえてマジで冷や汗が出る。
今朝は久々の猫族軍団総出で、しかも巨大化バージョン! これはヤバいって! 起きろ俺!
ジョリジョリジョリ!
ザリザリザリ!
ジョリジョリジョリ!
ゾリゾリゾリ!
ベロ〜〜〜〜〜〜〜ン!
「うぎゃ〜〜〜〜〜〜〜!」
首筋と耳の後ろ、それから頬と額と服がめくれ上がった背中を思いっきり舐められて情けない悲鳴をあげて飛び起きる俺。
「げふう!」
胸の中にいたフランマとタロンが、俺の悲鳴に驚いてものすごい勢いですっ飛んで逃げていく。当然、俺の胸元を思い切り蹴ってね……。
仰向けに転がり、そのままニニの腹から転がり落ちてついでにベッドからも転がり落ちる。
「ご主人確保〜〜〜〜!」
一瞬で広がってくれたスライム達が、顔面から落っこちた俺を確保してくれる。
「確保からの〜〜〜〜返却〜〜〜〜!」
「どわあ〜〜〜! 返さなくていいって!」
慌てて止めたが時すでに遅し。
勢いよく吹っ飛ばされた俺は、ベッドで待ち構えていたカッツェの背中にうつ伏せの状態で落っこちて、そのまま横にずり落ちてカッツェの腹にずり落ちていく。
相変わらず有能なスライム達は、ちゃんと落とす位置も把握しているから身重なニニのお腹の上に落とすような事はしない。
「ふ、振り出しに戻った……」
ニニよりもかなり短いカッツェの腹に顔を突っ込んでそう呟くと、喉を鳴らしたカッツェが俺の首筋を後ろから思い切り舐めた。
「うぎゃ〜〜〜〜〜!」
またしても悲鳴を上げて転がりベッドから転がり落ちる俺。
「ご主人確保〜〜〜〜!」
「待った待った! 起きるからもう戻さなくていい!」
スライムベッドに顔を突っ込みながら、今度は戻される前に必死でそう叫んで二度目の出戻りは何とか回避したよ。
「はあ、朝から何でこんなハードな事になってるんだよ〜〜〜! 第一お前ら、どうして全員巨大化してるんだよ〜〜〜!」
腹筋の要領で起き上がった俺は、ご機嫌でこっちを見ている猫族軍団に飛びつき、大きな顔を抱きしめてやったり揉みくちゃにしてやったりした。
ううん、寝起きに舐められるのは勘弁だけど、大きくなった猫族軍団の撫で心地は最高だね。