のんびり食事とコーンスープ
「おはよう。ってかごめん。すっかり寝過ごしたよ」
廊下へ出てハスフェル達と合流したところで、アーケル君達が部屋から出て来たのに出くわしたので、とりあえず寝過ごした事を謝ってから一緒にリビングへ向かった。
アーケル君がリナさん達やランドルさんの部屋にも声をかけてくれたので、結局全員揃ってリビングへ行く事になったよ。
「お気になさらず。ケンさんは、あの従魔達とくっついて毎晩寝ているんでしょう。そりゃあ起きられないって。いいなあ、俺ももふもふでフッカフカな従魔達に埋もれて寝たい!」
「だよなあ。絶対気持ちいいよなあ。ああ羨ましい!」
無駄に広い廊下を歩きながら俺が寝過ごした事を謝ると、オリゴー君とカルン君が笑顔で首を振って何やら力説してくれている。
「ふふふ、良いだろう。従魔達とくっついて寝るのは、そりゃあもう幸せなんだからな!」
ドヤ顔で宣言するアーケル君と、悲鳴をあげて悔しがるオリゴー君とカルン君。それを聞いてリナさん達も笑っている。
草原エルフ三兄弟は、広い客間を三人一緒に使っているんだけど、追加のベッドは一つしか入れていない。聞けば寝る時にはアーケル君はスライムベッドで従魔達と一緒に寝て、後の二人がそれぞれベッドで寝ているみたいだ。
「是非とも、俺達にも一緒に寝られるもふもふな従魔もテイムしてください!」
「お願いします!」
「ええ〜〜〜どうしようかなあ〜〜」
わざとらしく考える振りをするアーケル君に、これまたわざとらしく二人がそう言いながら左右から腕を取る。
「よし、俺の秘蔵の例の本を見せてやる」
「よし、俺の秘蔵の例の本を見せてやる」
何故か突然二人が真顔で揃ってそう言い、三人揃って盛大に吹き出す。
「マジか! よし、じゃあその話乗った!」
そして何故か即答するアーケル君。どうやら兄弟間だけで分かる、何か意味のある本らしい。
「お前らなあ……ここにはリナもいるんだぞ。それに、朝から馬鹿な事言ってるんじゃあないよ」
呆れたようなアルデアさんの言葉を聞いて、例の本、の意味をなんとなくだけど察したよ。要するに、若い男性が見たがるような内容の本って事だよな。
ええ、異世界のそれ系の本なら、それはちょっと俺も興味あるかも……思わず口を開きそうになったところで、肩に座ったシャムエル様の呆れたような視線に気付き、誤魔化すようにして笑って知らんふりをしたのだった。ううん残念!
そんな話をしながらようやく到着したリビングに揃って入り、まずは置いてある暖房器具のスイッチを入れて回った。
真ん中に置いてある大型の達磨ストーブみたいなのは、上部でお湯が沸かせるようになっている優れものだ。
ギイが当然のように水場で水を汲んできてくれて、大きなやかんを上に乗せてくれる。
これがあるおかげで、リビングではいつでも熱いお茶が飲めるんだよな。
ちなみに、リビングにも一つだけ温風が吹き出すタイプの暖房器具を常につけっぱなしにしているので、真冬のこの時期でも部屋が底冷えするほどにまで冷え込むってほどではない。ジェムは塩漬けになるくらいにあるんだから、もったいないとか思わずにガンガン使っている。
「ええと、いつものメニューでいいな」
そう言いながらサクラが入っている鞄から、いつものサンドイッチや揚げ物、鶏ハムや野菜などいろいろと取り出していく。
それを見たランドルさんだけでなくアーケル君達までが手持ちの収納袋から色々と出してくれたから、なんだかもの凄い豪勢な食事になったよ。まあ、全体的に肉類がどう考えても多いのは……この面子なら当然なのかねえ。
シャムエル様用にいつものタマゴサンドと厚焼きタマゴサンドを取り、自分用に少し考えてカツサンドとタマゴサンド、それからアーケル君が出してくれた照り焼きチキンサンドっぽいのを取った。
「これ、最近街で評判のスープ専門店の人気メニューのコーンスープなんですけど、ケンさんを見習って鍋で買ってみました」
ドヤ顔のアーケル君が、そう言って大きめの片手鍋を取り出して見せてくれた。
鍋にたっぷりと入ったそれは、まだ湯気を立てている。
「おお、これは美味しそうだな。そうか、スープも売っているなら買えばいいな」
思わずそう呟くと、またしてもドヤ顔になるアーケル君。
「きっとそう言うだろうと思って、店主に言っておきましたよ。きっと祭りが終わったらまとめ買いに来る人がいると思うから、しっかり作っておいてくださいってね」
その言葉に吹き出した俺と大爆笑の後に拍手なんかしているハスフェル達とシャムエル様。
「そこまでしてくれたのなら行くに決まってるよ。じゃあ、明日の観劇の前に行ってみようかなあ」
笑いながら、うんうんと頷いてそう答える。
「よかったら、いくつかおすすめの店があるんで案内しますよ! でも今日はこれをどうぞ」
「ありがとうな。じゃあ今日はコーンスープ付きだな」
鍋を間ににっこりと笑って頷き合う。
って事で大きめのスープカップも取り出し、なんだかとっても豪華な朝昼兼用の食事になったよ。
いつものようにシルヴァ達にお供えした後、シャムエル様にも大きめの杯にたっぷりコーンスープを入れてやったら、熱い熱いと言いつつ大喜びでコーンスープに頭を突っ込んでいたよ。
見ているだけでも熱そうだから、頭を突っ込むのはやめた方がいいと思うぞ。
美味しさに大興奮していつもの三倍サイズになったもふもふ尻尾をもふりつつ、苦笑いした俺も久々のコーンスープを味わって頂いたのだった。
はあ、あったかいコーンスープ、美味〜〜〜。