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打ち上げと岩豚万歳!

「なんだよそれ!順位が上がった方が難しくなるっておかしくないか?」

 思わず突っ込んだ俺の叫びに、ドッと笑いが起こる。

「まあ、気持ちは分かるが、そう言ってくれるな。このカラクリ細工は王都では大人気で、なかなか手に入らない品物なんだよ。せっかく頑張って準備してもらったんだからそう言わずに貰ってくれ」

「へえ、そんな貴重なものなんですか。では有り難く頂きます」

 苦笑いしたエーベルバッハさんにそう言われてしまい、苦笑いした俺も、笑ってその謎の銀細工を受け取った。

「へえ、これはまた凄いね。オンハルトが見たら大喜びしそうだね」

『あれ、いつの間に戻って来たんだ?』

 ついさっきまでいなかったはずなのに、相変わらず神出鬼没だねえ。まあ、神様なんだから当然なのか?

 驚いて念話でそう伝えると、笑ったシャムエル様は俺の右肩の上でピョンピョンと飛び跳ねながらステップを踏み始めた。

「今は、シュレムに留守番を頼んできたから大丈夫! だって表彰式の後は打ち上げだもんね!」

 またピョンピョンと飛び跳ねつつ足を交差させる器用なステップを踏んでいる。ううん、相変わらず見事なもんだね。

『表彰式も見に来てくれたのか。ありがとうな』

 これも念話で伝えておき、促されてゆっくりと踏み台の上から拍手に送られて降りる。

 カラクリ細工は、当然だけどオンハルトの爺さんの分もあったので、これはハスフェルが受け取って一緒に収納しておいてくれた。戻って来てくれたら、絶対に渡さないとな。

 ってか多分、オンハルトの爺さんに教えてもらわないと、このカラクリ細工は絶対に誰も開けられない気がするよ。



「という事で! 無事に表彰式も終わりましたので、お待たせいたしました〜〜〜! ただいまより無事のスライムトランポリンの終了と、降誕祭の終了を祝って打ち上げだ〜〜〜〜!」

「うお〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 ヴァイトンさんの大声に応えるように、地響きのような大歓声と拍手が沸き起こる。

「しかも聞け〜〜〜! スライムトランポリンの発案者で、雪まつりでも見事人気投票で初出場にして二位の栄冠に輝いた魔獣使いのケン殿が、岩豚の肉を差し入れしてくださったぞ! それだけじゃあない、ハイランドチキンとグラスランドチキンの肉まで! お前ら! 感謝して食えよ!」

「うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 さっきの数倍のものすごい歓声に、俺達は揃って飛び上がった。

「ちなみに岩豚があるのは、中央の一番デカい焼き台だ〜〜〜! ハイランドチキンはあの青い旗が上がっている焼き台、黄色の旗が上がっているのがグラスランドチキンの焼き台だ。ではスタート! 並べよ〜〜〜!」

「ケンさん、ありがとうございます〜〜〜!」

 ヴァイトンさんの大声に続き、会場中からものすごい大声のお礼の言葉の直後、ほぼ全員が中央の焼き台に突撃していった。

「うっわあ……あれ、絶対足りないぞ」

 一応、岩豚は10キロくらいの塊を二つ届けたんだけど、あんなに大人数だと多分一瞬だろう。苦笑いした俺は、サクラが入った鞄を持って追加の差し入れをする為に、肉焼き担当のスタッフさんに駆け寄って行ったのだった。



「よしよし、かなり減って来たぞ。追加で捌いてもらう分をまたギルドへ行ってお願いしておこう」

 あちこちから何度もお礼を言われながら、俺はもう遠慮なくガンガン岩豚の肉の塊を取り出したよ。

 そもそも軽自動車ぐらいある巨大な岩豚一匹からは、相当の量の肉が取れる。まだまだ相当数を狩ってきてくれているらしいから、ここは頑張って年末年始に働いてくれたスタッフさん達へのご褒美の意味も込めてたっぷりと渡しておいた。

 まあ、もちろん俺も食うけどね。

 って事で、他にもハイランドチキンとグラスランドチキンの肉も色々と渡しておき、あとはお任せして俺も遠慮なく食わせてもらったよ。

 だけど、他に用意されていた普通の肉もどれも美味しくて、バイゼンでも人気の居酒屋で使われている秘伝のタレに漬け込まれた肉を焼いたのが気に入った俺は、マジでどうすればこのタレを再現出来るか、割と真剣に考えていたのだった。

 シャムエル様も、タレでベタベタになりつつも嬉々として焼き肉を頬張っていたし、最初だけは敷布の上に乗せてお供えしたんだけど、いつものごとく後はご自由にどうぞって言っておいたら、収めの手はもう大はしゃぎであちこちの焼き台を回っては焼かれている肉や野菜を撫で回し、ついでにスタッフさん達も時々撫でたりしていた。

「ううん、相変わらずだねえ。手だけなのに、はしゃいでるのが分かるって面白いよなあ」

 追加でもらった肉の盛り合わせを地ビールと一緒に食べながら、まだまだ消える気配の無い収めの手をのんびりと眺めていた。

「シルヴァ達にも、また会いたいよ。バイゼンへも来てくれればいいんだけどなあ」

 簡単にここへは来られないとは聞いていたけど、やっぱり来て欲しいと思うのは仕方がないよな。

 小さく苦笑いした俺は、一つため息を吐いて残っていた地ビールをグイッと一息に飲み干した。

「はあ、この地ビールも美味しかった。よし、じゃあ次の地ビールを選んでから、追加の肉をもらいに行くとするか」

 すっかり空になったお皿を手に立ち上がった俺は、まだまだ大盛況の焼き台を見てそう呟く。

「頑張って〜〜〜〜! 次は岩豚の付けダレ焼きを希望しま〜〜〜す!」

 耳元のシャムエル様の声に小さく吹き出した俺は、もふもふ尻尾をこっそりと突っつき、まずは地ビールをもらいに大量の木箱が積み上がった一角へ向かい、スタッフさんおすすめの地ビールをもらう。

 それから、シャムエル様のリクエストを確保すべく中央の焼き台へ突撃していったのだった。

挿絵(By みてみん)

アーススターノベル様より、2022年7月15日に発売された、もふむく二巻の書影です。

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