いつもの朝の光景
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
ショリショリショリ……。
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
「うん……起きる、よ……」
翌朝、いつものモーニングコールチーム総出で起こされた俺は、だけどこれまたいつものごとく全く起きられずに、半ば無意識に生返事をして、そのまま気持ちよく二度寝の海へ落っこちていった。
はあ、このもふもふな腹毛が俺を駄目にするんだよ……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
ショリショリショリショリ……。
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
「うん、起きてるって……」
「あはは、寝たままのくせに起きてるとか言ってるし」
「相変わらず、朝は弱いみたいですねえ」
笑ったシャムエル様とベリーの声が聞こえる。
「だって……めっちゃ……寝心地がいいんだから……さあ。悪いのは、俺じゃあないってば……」
「はいはい、でも起きないご主人が、やっぱり一番悪い子だと思うなあ〜」
語尾にハートマークがついていそうな可愛らしい声が耳元で聞こえて、焦った俺は慌てて腕立ての要領で腕をついて一気に飛び起きた。
バサバサと大きな羽音がして、お空部隊の面々が慌てたように飛び立つ。
「もう、まだ起こしてないんだから、起きちゃ駄目じゃない〜〜！」
「私達のお仕事を取らないでくださ〜〜〜い！」
「そうだそうだ〜〜〜！」
笑った抗議の声の後、また羽ばたく音がして俺の頭の上と両肩にモモイロインコのローザと、キバタンって真っ白なオウムのブランとセキセイインコのメイプルが留まる。
「起こされて起きたからって、文句を言われるなんて、納得出来ないぞ〜〜〜！」
笑いながら腕を伸ばして、順番に捕まえておにぎりの刑に処する。
「きゃあ〜〜〜捕まっちゃった〜〜〜！」
嬉しそうな棒読みの悲鳴に思わず吹き出し、捕まえていたブランのお腹の辺りに顔を埋める。
「ふわあ、これまたもふもふだねえ。うん、よきよき」
もう一度撫でてやり、名残惜しいけどなんとか起きて顔を洗いに行く。
立ち上がったところで、お空部隊が羽ばたいて先に水場へ飛んでいくと、そのあとを起き上がったマックスや狼コンビ達が追いかけて来る。
「はいはい、だけどちょっと待ってくれよな」
大急ぎで顔を洗い、跳ね飛んできたサクラに一瞬で綺麗にしてもらう。
いつもながら見事なもんだねえ。ちょっと生えていた髭までツルツルだよ。
「よし、じゃあ行ってこい！」
まずはサクラを捕まえて水槽目掛けて放り投げてやり、順番に跳ね飛んでくるスライム達を次々に放り投げてやった。
まあ、これも毎朝のお約束だもんな。
夏場はここで水遊び状態になるんだけど、冬場は俺は寒いから水遊びには参加しないと言ってあるので、俺が水の近くにいる間は、他の子達は我慢して待ってくれている。
「じゃあ、後はお好きにどうぞ。こぼした水は綺麗にしておいてくれよ」
「はあい、ちゃんとお片付けしま〜〜す！」
ご機嫌なスライム達の返事の後、水槽から噴き上がる水を見て吹き出した俺は、濡れないように急いで部屋に戻った。
手早くいつもの身支度を済ませたところで、タイミングよくハスフェルから念話が届いた。
『おはよう、もう起きてるか？』
『ああ、おはよう。今起きて身支度を済ませたところだ。だけどまだスライム達が水遊びの真っ最中だから、もうちょっとだけ待ってくれよ。終わったらリビングへ行くからさ』
『了解だ。まあそれほど急いでいるわけじゃあないから、好きなだけ遊ばせてやれ。ちなみに俺の部屋でもまだスライム達が水遊びの真っ最中だよ』
『おはよう、こっちもまだ遊んでるぞ』
笑ったハスフェルの言葉の直後に、笑ったギイの声が乱入してきた。どうやら二人のスライム達も、まだ水遊びの真っ最中みたいだ。
『あはは、寒いのはスライム達には関係ないみたいだな。じゃあ後でな』
笑った気配が途切れるのがわかり、俺は小さく笑って水場を振り返り、まだにぎやかな水音を聞いて笑ってニニのお腹に潜り込んだ。はあ、やっぱりここが最高に幸せだよ〜〜〜。
「ご主人、お待たせしました〜〜〜！」
しばらくして、心なしかプルンプルン度が増したサクラ達が次々に跳ね飛んで戻って来る。
「よし来い！」
起き上がった俺は、笑って鞄の口を大きく開けてやる。すると見事な弧を描いたスライム達が、次々に俺の鞄の中へ飛び込んで行く。中で小さくなり、一瞬で合体するスライム達を見て、鞄を下ろして拍手をしてやる。
「これ知らない人が見たら、まんま手品だよなあ」
笑いながらそう呟き、鞄を持ってそのままリビングへ向かった。
マックス達は、とりあえず部屋で留守番しているみたいだ。
「おはよう。ああお待たせ。じゃあ、色々出すから好きに食ってくれよな」
リビングにはもう全員が起きて来ていて、慌てて作り置きや差し入れでもらったものを適当に取り出して並べた。だけど俺が取り出し始めたのを見て、ランドルさんやリナさん達もサンドイッチやバーガーだけでなく、串焼き肉や揚げ物など色々と取り出してくれた。
しかも俺が出したのとはまたちょっと違っていて、なんだかいつもよりもバリエーション豊かになったよ。
「ああ、ありがとう。これまたどれも美味しそうじゃん」
笑った俺の言葉に、皆がそれぞれ手にした収納袋を見せてくれた。
成る程、時間遅延の収納袋を手に入れたから街で屋台飯を色々と買い込んでいるわけか。
種類が増えるのは有り難いので、俺も美味しくいただくよ。
笑顔で手を叩き合い、それぞれお皿を手に好きなのを取っていった。
さて、今日のスライムトランポリンはどうなるんだろうね？
