ニニの子猫達の事
「はあ、快適快適」
お風呂で温まった俺は脱衣所へ出て、一瞬でサクラが綺麗にしてくれたところで服を着てから部屋に戻った。一応、ミスリルの鎖帷子だけは身につけているよ。
「ニニ〜〜お待たせ〜〜〜さあ寝ようか〜〜〜〜!」
部屋に戻ると、すでにベッドに寝転がって待ち構えているニニとマックスの隙間へそう言いながらモゾモゾと潜り込んでいく。
「ご主人あったかい」
嬉しそうに目を細めたニニが、もの凄い音でゴロゴロと喉を鳴らしながら俺に頬擦りしてくる。
「そりゃあ、お風呂上がりだからな」
手を伸ばしてふわふわな首元を何度も撫でてやり、かなり大きくなったお腹をそっと撫でてやる。
「また大きくなった気がするなあ。おおい、早く生まれておいで。待っているからな」
優しく撫でながらお腹に向かってそう話し掛ける。
ほら、もしかしたらお腹の中の子猫達には、外の声くらいは聞こえているかもしれないからさ。
「生まれるまでもう少しね」
嬉しそうなニニの言葉に、俺はお腹には乗らない様に少し下がって後ろ脚の辺りにもたれかかった。
「重くないか?」
「全然大丈夫よ。そんなに心配しなくても、ご主人一人くらいならギリギリまで大丈夫だって」
笑ったニニの言葉に笑って頷き、もう一度大きくなったお腹の辺りをそっと撫でてやる。
ううん、今すぐ生まれてもいいんじゃあないかってくらいにパンパンになってきてるけど、本当に大丈夫かね、これ。
「なあベリー。ニニの子供って春までには生まれるって言ってたけど、具体的にはどれくらいとか分からないのか?」
なんだか心配になってきた俺は、ふと思いついてベッドの横でソレイユやフォール達と一緒に猫団子に参加していたベリーを振り返った。
「具体的な時期ですか? 以前、ニニちゃんの妊娠にケンが気付いた時に、産まれるまで二ヶ月弱ほどだろうと申し上げましたが、あの後何度かニニちゃんの様子を診ていまして、分かりました。この様子を見るに、恐らくですが予想よりももう少し早くなるだろうと思われますね。子供の成長も今のところ順調な様ですから心配はいりませんよ。産まれる具体的な時期を言うのなら、そうですねえ……早ければ来月の中頃くらいでしょうかね」
「ええ、来月の中頃? そんなのもう、すぐだよな?」
思わず上半身を起こしてベリーを見る。
「ええ、すぐですねえ。きっと可愛い子達になりますよ。ちなみに私には産まれる子達の数も性別も分かっていますが、聞きたいですか?」
にんまりと笑ってそう言われて、思わず絶句する。
「うわあ、絶対聞きたいけど、やっぱり聞きたくな〜〜〜〜い!」
頭を抱えて叫ぶ俺の言葉に、ベリーとフランマが揃って吹き出す。ニニまで一緒になって笑ってるよ。
「正直な叫び声ね。だけどご主人のその気持ちはすっごくよく分かるわ。実を言うと、私もベリーにそう言われたんだけど、聞いていないの。知りたいけど聞きたくないわよね〜〜〜!」
嬉々としたフランマの言葉に、タロンをはじめとした小さくなっている猫族軍団が一斉に頷く。
「あはは、同志がいっぱいいた! だよなあ。聞きたいけど、聞きたくないよなあ〜!」
笑った俺の言葉に、喉を鳴らしたニニが頭を擦り付けてくる。
「実を言うと、私もまだ聞いていませ〜〜ん! お腹の子供達は順調に育ってるよってベリーが教えてくれたから、もうそれだけで私は大満足よ」
「ああ、そうだよな。元気で生まれて来てくれたら、俺ももうそれだけで充分だよ」
笑ってニニを撫でてやりながら、なんだか自分が、孫が産まれる爺さんになった気がしてきたよ。ううん、ちょっと複雑……。
「じゃあそろそろ寝ましょうよ。ご主人!」
何となく話が途切れたのを見計らったフランマが、そう言いながら俺の腕の中にするっと入り込んで来て定位置を確保する。
「ああフランマ、ずるい〜〜〜!」
慌てたようにタロンがそう叫んで、俺とフランマの間に無理矢理頭を突っ込んできた。
「ほら、ここにおいで」
笑って腕を緩めてやると、もの凄い勢いで喉を鳴らしたタロンが俺とフランマの横に潜り込んできた。
「じゃあ定位置に収まりま〜〜す!」
跳ね飛んできて一瞬で巨大化したラパンとコニーが、いつもの俺の背中側に収まり、俺の足元、ニニとマックスの横にカッツェが若干無理矢理気味に収まる。
俺の裸足の足の裏は、意外にみっちりとしたカッツェの毛に埋もれたよ。ああ、これもよきもふもふだよ。
「はあ、幸せパラダイス空間の完成だな。じゃあおやすみ」
「はい、おやすみなさい。では明かりは消しますね」
ベリーの声と同時にランタンが全て一瞬で消えて、部屋の中は真っ暗になる。
小さく欠伸をした俺はそのまま気持ち良く眠りの国へ旅立っていったよ。
ううん、相変わらずうちの子達のもふもふの癒し効果、すげえ……。