大満足の夕食!
「じゃあ、無事に一日目のスライムトランポリンが終了しました〜〜〜皆様お疲れ様でした〜〜〜! 引き続き明日もよろしくお願いしま〜〜〜す!」
「カンパ〜〜〜イ!」
俺の乾杯の声に、全員が笑顔で好きなお酒を瓶ごと持って乾杯してくれる。
立ったまま持っていた瓶にそのまま口をつけた俺は、勢いよくゴクゴクと白ビールを半分くらいを一気飲み干した。
「くあぁ〜〜〜冷えた白ビールが美味い!」
おっさんみたいな声が出たけど気にしない。気にしない。
労働の後のビールは最高に美味いんだよ。
とりあえず出しっぱなしになっていたマイグラスに残りのビールを全部注ぎ、二本目を取り出したところでお供えしていなかった事に気が付いて、慌てていつもの敷布を取り出して弁当を丸ごとと、味噌汁のお椀と冷えた白ビールの瓶とマイグラスを並べた。それから、一応小鉢に綺麗に盛ったサラダと師匠特製青じそドレッシングも添えておく。野菜は食わないとな。
「ええ、無事にスライムトランポリンの一日目の興行が終わりました。明日もどうぞ無事に済むようにお守りください。夕食は商人ギルド支給の弁当です。白ビールとワカメと豆腐のお味噌汁、一応サラダも用意しましたので、少しですが一緒にどうぞ」
いつものように目を閉じてそう呟くと、収めの手が現れて俺の頭を何度も撫でてから、順番に弁当やサラダを撫でては持ち上げて、最後に白ビールの瓶を持ち上げる振りをしてから消えていった。
「よし、無事に届いたな。じゃあいただくとするか」
収めの手が消えるまで見送ってから、急いで自分の弁当一式を戻して席へ戻る。
「ああ、待っててくれたんだな。ごめんごめん」
当たり前のように、俺がお祈りするのを待っていてくれた皆にお礼を言って、改めて手を合わせてからそっと弁当箱の蓋を開く。
「あ〜〜〜じっみ! あ〜〜〜っじみ! あ〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャ〜〜〜〜〜ン!」
なにやらちょっとだけいつもと違うリズムで歌って踊っていたシャムエル様。
手には当然のように大きなお皿とお椀が両手にあって、それを手旗信号みたいに豪快に上下に振り回しながら器用にステップを踏んで踊っている。当然のように何故かショットグラスを手にしたカリディアが隣にすっ飛んで来て、シャムエル様のダンスを完コピしてるよ。こちらも相変わらず見事なダンスだ。
最後は二人揃って左右対称になるように決めのポーズ。真ん中で仲良くくるんと絡まり合った尻尾が超可愛い。
「お見事〜〜〜! じゃあ、カリディアにはこれな」
サラダに入っていたプチトマトを一つ渡してやり、シャムエル様のお皿とお椀を受け取った俺はとりあえずそれを置いて、開けたままになっていた弁当箱の一段目を持ち上げ、二段目と三段目も順番に持ち上げて並べていく。
「うわあ、これまた超豪華な幕の内弁当みたいな感じだなあ。色々入ってていい感じだ」
一段目には、分厚いお肉をシンプル塩胡椒で焼いたのが全部で五枚入っていた。俺ならこれだけで、もう充分なくらいだよ。
それから長さ20センチの直径4センチは余裕である、大きなソーセージを焼いたのが丸ごと一本入っていた。ううん、これまた超美味しそうだけど、これも俺ならメインで充分なレベル……。
それ以外にも子供の拳くらいはありそうな肉団子や、鶏の骨つき唐揚げなどなど、どれも一種類で充分メインになれる量の肉料理がぎっしりと入っていた。
一面ほぼ茶色一色。一応って感じに角のところに無理やり一個だけ突っ込まれたブロッコリーが、かろうじて緑色の存在感を示していたよ。頑張れブロッコリー。
二段目には、半分にぎっしりとご飯が詰め込まれていて、これだけでお茶碗三杯分くらいは余裕でありそうだ。その横には大きな卵焼きが三切れと、ポテトサラダや豆とにんじんの煮たもの、ほうれん草の胡麻和えっぽいものなど、副菜がこれまたぎっしりと入っていた。うん、一応だけど根菜や野菜も少しは入っているな。よしよし。
そして予想通りに、三段目にはデザートがこれまたほぼ茶色一色でぎっしりと入っていた。
真ん中にどどんと入っていたのが、直径15センチくらいの丸いチョコレートの焼き菓子で、多分ガトーショコラっぽい。その周りにはマドレーヌやカットされたパウンドケーキっぽいものや、ミニマフィンなどが隙間なく突っ込まれている。
ううん、見ただけでお腹がいっぱいになりそうだよ。もうこれはそのままシャムエル様に丸ごと進呈だな。
「ええと、どれがいる?」
「一段目のメインのお肉は全種類一個ずつください! ソーセージはこの辺で切ってください!」
そう言って、ソーセージの三分の一辺りで切るふりをして見せる。
「それで、ご飯を少しとお味噌汁と二段目のおかずは適当にください! そっちのデザートは後でもらいます!」
雄々しく宣言されて、苦笑いした俺は言われた通りにメインの肉料理を順番にお皿に盛り付け、ナイフを取り出してソーセージも切ってやる。
「おお、肉汁が〜〜〜!」
予想通りに一気にあふれ出た肉汁は、下のご飯にばっちりと吸い込まれたよ。
こうなるだろうと予想して、二段目のご飯の上でわざわざソーセージを切った俺、グッジョブ!
肉汁がたっぷり染み込んだご飯もお肉の横にガッツリ盛り付け、おかずも色々取り分けてワンプレートに無理やり山盛りに盛り付けてやる。
「お待たせしました。はいどうぞ」
俺が料理を取り分けていた間に、シャムエル様はハスフェルのところで赤ワインをもらって来ていた。
「わあい、美味しそう! では、いっただっきま〜〜〜〜〜〜す!」
嬉々としてそう宣言して、お肉の山に頭から突っ込んでいくシャムエル様。
まあ、好きに食ってください。
「じゃあ、俺もいただくとしよう!」
笑ってマイ箸を取り出した俺は、ご飯の上に乗っていたソーセージに大きな口を開けてかぶりついた。
「なにこれ、めっちゃ濃厚で美味しい」
噛んだ歯ごたえはプリップリのパリパリ、中は超ジューシーで焼き加減もばっちり。冷めても美味しい辺りはさすがはプロが作った弁当って感じだ。
「いいねえ、肉食ってるって感じがするよ」
肉汁が染み込んだご飯も口に入れ、俺は予想以上に美味しい弁当を満喫したのだった。
はあ、働いた後の美味しいご飯。最高〜〜〜!