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スライムトランポリンの開始とスタッフ弁当

「危ないので、会場内は走らないでくださ〜〜い!」

「ご希望のスライムトランポリンにお並びください。チケットは共通ですので、大きさは関係ありませんよ〜〜〜!」

「スライムトランポリンにお並びの際には、出来るだけ前の方との距離を詰めてお並びください!」

「横入りはいけませんから、きちんと並んでください!」

「小さなお子様の手は、必ず繋いで離さないようにしてください!」

 開始早々、スタッフさん達の注意喚起の声が広い会場内に響いている。



 倉庫の巨大な扉が全開になると同時に、どっともの凄い数の人達が一斉に入って来た。だけど、一応注意されていることもあり、無理に押し合いしたりするような事にはなっていない。

 スタッフさん達の走らないでと注意する大声に、最前線で走りかけていた人達が誤魔化すように苦笑いしながら早足で歩いて行く。

 高いところから眺めていると、人の動きや出来事がよく見えて面白いよ。



 俺の近くのスライムトランポリンも、あっという間に行列が出来ていき、手早くスタッフさんが出てきて行列している人達を整列させていた。

 ううん、見るからに大人数を捌くのにも慣れているみたいだ。さすがは商業ギルドのイベンターだね!

 密かに感心しつつ、会場を順番に眺めていたが、特に問題はないみたいでどこも無事にスライムトランポリンが始まっている。

 見ていると、次々にスライムトランポリンに入った人達が、スタートの合図と共にポヨンポヨンと空を舞っている。この辺りの跳ねるさじ加減はスライム達に一任しているから、普通に飛んでいたのに急に突然一回だけものすごく高くまで飛んだり、いきなり素早い上下運動になったりもしていて、その度に笑い声や楽しそうな悲鳴が上がっていたよ。

 あちこちから聞こえる楽しそうな笑い声と、同じくらいに楽しそうな甲高い悲鳴。そして時折響き渡るなんとも言えない野郎の野太い悲鳴。こちらはマジで怖がってるっぽい。

 だけどその度に行列している人達からも笑い声が起こり、手拍子が起こっている場所もあったよ。

 なんだか会場全体が妙な一体感に包まれていて、ちょっと笑っちゃったね。



 まあ、そんな感じで概ね平和だったんだけど、やっぱりどこにでも悪い事を考える奴はいるもので、時折スライムトランポリンの壁面に当たる土台部分を面白半分や好奇心から無理に引っ張ろうとしたり、隠し持っていた突起物で突っつこうとする人がいたりした。

 だけど、そんな時にはスライム達がすぐに俺に念話で知らせてくれるので、俺からハスフェルやギイに念話で知らせて、会場内に満遍なく散っている警備担当の人にすぐに出動願って現行犯で取り押さえてもらっている。

 その際にも、スライム達は大活躍していた。

 突っ込まれたナイフをスライムがこっそり確保して抜けないようにしたり、場合によっては足を触手で捕まえたりもしていて、駆けつけてくれた警備担当の冒険者達に引き渡していたんだって。

 今のところそんな感じの愉快犯数名がつまみ出されたくらいで、大した問題は起きていない。



「ううん、それにしてもここで四日間も座ったままって、結構退屈だなあ。だけど、さすがにここで何かするわけにもいかないしなあ。ああ、楽しそうだ。俺もスライムトランポリンで遊びたいよう」

 そろそろ昼食時になる頃には、もう俺は退屈し始めていた。

 まあ、問題が起こらないのは有り難い話なんだけど、ただ座ってるだけってのも結構つらいものがあるよ。

「せめて屋台飯くらい食べたいよお」

 時折風向きなのか、香ばしい肉を焼く香りや甘い香りがここまで漂ってくる。

「ううん、冗談抜きで腹が減ってきたぞ。明日はもうちょっとしっかり食ってこよう」

 この際だからこっそり何か食べようかと割と真剣に悩んだんだけど、会場全体を見回せるという事は、ある意味会場中から丸見えなんだって事実に気がついて、さすがにつまみ食いは自重したよ。



 椅子に座ったまま空きっ腹を抱えてしばらく黄昏ていると、ハスフェルが人混みの中をこっちへ来てくれた。

「お疲れ。そろそろ腹が減っているんじゃあないかと思って交代に来てやったぞ」

「あはは、待ってたよ。実を言うとさっきから腹が減って困っていたんだ。じゃあ、見張りをお願い出来るか」

「おう、まかせろ」

 笑って椅子から降り、交替して上がっていくハスフェルを見上げる。

「あっちの奥の扉からスタッフ用の部屋に入れるから、そっちに昼食を用意してくれているよ」

「了解。じゃあ行ってくるよ」

 ハスフェルが指差す方向には確かにスタッフ用の扉があって、俺も何度か人が出入りしているのを見ている。成る程、あっちに休憩スペースがあったわけか。

 さすがに朝一番ほどの人じゃあないのは、多分皆、外の屋台で食事をしているんだろう。

 せっかくなので外の様子も少しは見てみたいけど、まずは食事だ。

 人ごみをかき分けてゆっくりと進み、何とか休憩スペースに到着する。

「はあ、あんな人混みの中を一人で歩くのっていつ以来だろう。そっか、普段は従魔達が一緒だから、市場の人混みの中にいても俺達の周りだけ空間が空いていたのか。あはは、まさかこんなところまで従魔達に守ってもらっていたとはな」

 苦笑いしながらそう呟き、とりあえず入ってすぐのところにいたスタッフさんから、今日の弁当と飲み物をもらって適当な席についた。

 ううん、この弁当箱……どうみても二人前サイズなんだけどなあ。



 何はともあれ、まずはお弁当と飲み物を敷布の上に置いて手を合わせる。

「ええと、今日から四日間、俺達はスライムトランポリンのイベンター役です。事故や問題が起きませんようにお守りください。今日のお弁当は商人ギルド支給のスタッフ弁当です」

 小さくそう呟き、いつもの収めの手が俺を撫でてからお弁当箱と飲み物を順番に撫でてから持ち上げて消えていった。

「よし、届いたな。じゃあいただくとするか」

 そう呟いていそいそと弁当箱の蓋を開ける。

 今日の弁当はハンバーガーセットだったんだけど、子供の顔くらいありそうな巨大ハンバーガーでしかも分厚い上に中身がおかしい。

 到底かぶりつけないだろうサイズの巨大ハンバーガーに挟んであったのは、分厚い肉のパテが二枚に分厚いチーズと気持ちだけのレタスが一枚、それからこれまた分厚いベーコンが合計三枚と目玉焼きまで入っている。

 ううん、色々とスペシャルサイズだねえ。しかも付け合わせのフライドポテトもデカい上に大きい。これポテト四等分くらいじゃね? ってサイズだ。その上、これまたデカいナゲットみたいなのが全部で十個も入っていた。多分、俺だったらこのナゲットだけでも充分な気がする……。



 うん、思っていたけどこれは確定だな。やっぱり、この世界の人は食う量がおかしい。

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