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中間順位とこの後の予定

「さて、順位に変動はあったのかなあ?」

 ちょとワクワクしながら巨大な掲示板を見上げる。

「おお! 俺達のチームが二位まで上がっているじゃんか! すげえすげえ!」

「うわあ〜〜! 上がってるけど三位! 抜かされた〜〜〜〜!」

 掲示板を見た俺の歓喜の叫びとアーケルくんの悲鳴が重なる。俺達の背後では、同じく掲示板を見たハスフェルとギイとランドルさんが大喜びで手を叩き合っているし、リナさん一家は苦笑いしつつムービングログにすがりついて打ちひしがれているアーケル君の背中を叩いて笑っている。

 もちろん、人気投票三位だって初参加なんだから大健闘だって。と思いつつドヤ顔になる俺だったよ。

 そう、俺達愉快な仲間達パート2が何と、前回見た時の五位から大幅ランクアップして二位にまで順位を上げていて、アーケル君達の草原エルフ一家が四位から三位に順位を上げていたのだ。

「成る程、ヴァイトンさんやエーベルバッハがさんが言っていたみたいに、後半は人気投票の順位が反映されやすくなるってのはこういう意味か。そりゃあ観光客の人達なんかで、投票権を持っているけど誰に投票したらいいのか分からないって人がいたら、何となくベストテン入りしている中から選んで投票したりしそうだもんな。俺だったら間違いなくする。しかも一位じゃあなくて二位以下で自分が気に入ったのに入れる」

 小さくそう呟いて笑った俺は、ハスフェル達と手を打ち合い、皆で揃っておまとめ投票の受付をしている本部へ向かい、それぞれ持っている大量の投票券を自分のチームへ投票したのだった。

 ちなみに前回と違って今回は、全員がそれぞれ自分のチームに全部ぶっ込んでいたよ。そうだよな、最後の最後でぎりぎり僅差で負け! とかになったら悔しいもんな。



 投票を終えた後、ムービングログは一旦収納しておき、人混みを掻き分けるようにしてゆっくりと他の雪像も見てから会場を後にした。

 道沿いの店や屋台を見ては良さそうなものがあればまとめ買いしつつ、のんびりと歩きながら隣を歩くハスフェルを見上げた。

「さて、この後はどうする?」

 今日はもう用事が済んでしまったので戻っても良いかと思ったんだけど、反対側にいたアーケル君に笑いながら腕を掴まれた。

「ほら、こっちへ行きましょう。こっちの通りは、別名お菓子通り。この前岩豚の焼き肉パーティーをした時に出してくださったケーキは、この通りにあるバイゼン一と評判の店のケーキです。焼き菓子もすっごく美味しいので、是非見に行きましょう!」

「おお、それは凄いな。じゃあ見に行くか」

 気軽な気持ちでそう答えた瞬間、目の前に収めの手が現れてものすごいハイテンションで拍手をしたもんだから、咄嗟の事に堪えきれずに吹き出したけど、これは俺は悪くないよな。

 何とか咳き込んだ事にして誤魔化し、深呼吸をして息を整えたよ。

 本当に、収めの手ってもっと神聖なものなんじゃあないのか? もう俺の中では、単なる食いしん坊のお使いレベルなんだけどなあ……。



「おお、通りに入っただけで、すでに甘い香りが漂っているなあ」

 漂う甘い香りに思わずそう呟く。ここがお菓子通りと呼ばれるのも当然だ。角を曲がって通りに入った途端に押し寄せてくるこれ以上ないくらいの甘い香り。

 見るとあまり道幅は広くはない通りの左右には、見事なくらいに甘いものを売る店が連なっていた。

 時折果物屋さんとかジュースやコーヒーを売っているカフェがあるのも、何というか正しい店の並び方って気がする。

「この通りのカフェは、どこも提供しているのは飲み物のみで、飲み物を頼むとお皿とカトラリーを貸してくれるんですよ。なのでお客さんはそれぞれ好きなケーキや焼き菓子を店で買って来て、好きなお店で食べられるんですよ。ね、いいでしょう?」

 へえ、持ち込みで好きなドリンクと一緒に店で食べられるのか。それはまた凄いシステムだなあ。

 だけどお菓子やケーキを作る側もそっちだけに集中出来るし、カフェ側もドリンクだけの方が経費はかからないだろう。意外に双方にとって良いのかも。いわゆるwin-winの関係だな。

 妙な事で感心しつつ、通りに入って店を見て回る。

「へえ、ケーキ屋だけじゃあなくて、いろんな店があるんだな」

 通りに入ったところから右を見ると、ケーキ屋さん、クレープ屋さん、飴細工屋さん、ケーキ屋さん、ケーキ屋さん、パン屋さん、果物屋さん、お団子屋さんみたいなのまである。そしてまたカフェ、カフェ、パン屋さん、ケーキ屋さん……左も似たようなもの。要するに見える限り道の先まで延々と甘いものを売る店が連なっていたのだ。

「もしかして、バイゼンの人達って甘いもの好き? それにしたって、いくら何でも甘いものの店が多すぎる気がする」

 ハンプールにも確かにお菓子屋さんはあったけど、ここまでじゃあない。バイゼンの総人口がどれくらいなのかは知らないけど、いくら何でも人口比率でいってもこれは多すぎる気がする。もしかしてしょっちゅう店が潰れて、また新しい店が出店しているとかか?

 若干引きつつそう尋ねると、笑ったアーケル君が遠くに見える山を指差した。

「ここは元々鉱山で働く鉱夫の街ですからね。当然重労働なので、少量でも元気になる甘いものは好まれましたね。それもあって、王都よりも菓子店の数が多いなんて言われる事があるくらいに多いですねえ」

「ええ、マジ?」

「ええ。マジです。しかもこれがまた、どの店も美味しいんですよねえ。じゃあ俺達のおすすめの店を案内しますから、午後のお茶にしましょうか」

「ふおお〜〜〜〜! 何、素敵な所へ勝手に行ってるんだよ! 私を置いて行くなんて、そんなの許しませ〜〜〜〜ん!」

 歓喜の雄叫びと共に、唐突にシャムエル様が俺の右肩に現れて座る。

『おいおい、神様のお仕事はどうしたんだよ』

 吹き出しそうになったのを今度は必死で腹筋を総動員して堪えた俺は、一つ深呼吸をしてから念話で話しかけた。

『ああ、今はシュレムにお願いして来たからしばらく大丈夫だよ。シルヴァ達が知らせてくれたんだよね。ケンがすっっごく素敵なところへ行っているって。ふわあ、どれも美味しそう。ねえねえ、どこで買うの?』

 ダイヤモンドみたいにキラッキラに目を輝かせてそんな事を聞かれて、色々突っ込むのを諦めた俺は一つため息を吐いて通りを見た。

「じゃあ、シャムエル様が好きな店を言ってくれよ。ご希望のお菓子を好きなだけ買ってやるからさ」

 サクラ達が入った鞄を持ち直した俺は、笑ってシャムエル様を突っついて、まずは一番手前にあったケーキ屋さんを覗き込んだのだった。

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