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お土産の大量購入!

「おお! これはまさしく松花堂弁当! ああ、まさかここで出会えるなんて」

 目の前に置かれた平たい木箱の蓋を開けた俺は、密かな感動に打ち震えていた。

 そう。木箱の中は、木の板で十字に区切られそれぞれのマス目にお皿が入っていて豆腐料理がそれぞれ綺麗に盛り付けられている、いわゆる松花堂弁当だったのだ。

「はああ、この煮物の美しい事!」

 やや深めのお椀に綺麗に盛り付けられた根菜と、具がたっぷりと入ったがんもどき。たっぷりのお出汁がたまらない。ああ、良い香りだ。

 生麩の田楽や俺の大好きな西京焼き、ツヤツヤのご飯もある。

 ぐつぐつと煮立ち始めた鍋に薄切り肉を入れた俺は、その場で手を合わせてシルヴァ達にお祈りした。

「昼は豆腐懐石のお店に来ています。このままお届けするので、どうぞ楽しんでください。俺が作る素人料理とは桁が違う、プロの料理をどうぞ」

 小さくそう呟くと、現れた収めの手が俺の頭をそっと撫でてから料理を順番に撫でて弁当箱ごと持ち上げる振りをした。それから豆乳鍋と追加の具材もそっと撫でてから消えていった。



 収めの手を見送ってから、俺はもうどの料理も一口食べては大感激していた。

 はあ、美味しいもの食べるって、本当に幸せだなあ……。

 豆乳鍋には、当然のごとくたっぷりの豆腐と湯葉も入っていて、これも脳内の欲しい物リストにソッコー記入された。



「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」

 久々のちょっと激しめ味見ダンスを踊ったシャムエル様は、いつものお皿を取り出してブンブンと振り回している。

「全種類ください! あ、豆乳鍋はこっちにね」

「はいはい、ちょっと待てくれよな」

 苦笑いした俺はいつもの小皿に松花堂弁当を一通り綺麗になるように取り分けてやり、別の小鉢には豆乳鍋の具を一通り入れてやる。お肉は丸ごと一枚入れてやったよ。それからいつもの盃に入れたのは、お勧めされて頼んだ米の酒だ。

「ふおお〜〜〜〜〜! これは美味しい! お酒も美味しい! 豆腐料理最高〜〜〜〜!」

 大はしゃぎで取り分けた料理を食べているシャムエル様を見て、祭壇にいなくても良いのかって突っ込みをグッと飲み込み、小さく笑った俺も食事を再開した。

 合間に米の酒をいただき、まろやかな豆乳味のお肉と野菜をまとめて口に入れる。

 春のそよ風、と名付けられたこのお酒は、酒精はやや軽めでとても香りが良く飲みやすい。いくらでもいけちゃうよ。だけど軽めとは言っても吟醸酒。案外危険そうなので、一応セーブしながら飲む事にする。

「いやあ美味い。これは食事と一緒にいただくのにいいお酒だなあ。よし、これも是非買って帰ろう」

 思わずそう呟くと、豆乳鍋のお肉をスタッフさんに追加で頼んでいたハスフェルとギイが、それなら自分達も買うぞアピールをしていた。そうだよな。酒好きなお前らが、これを買わない理由はないよな。



 それぞれに大満足の食事を終えたあと、今日の食事代を誰が払うか相談の結果リナさんとアルデアさんが払ってくれる事になった。まとめ買いするんだから、たまには俺が一緒に払うって言ったんだけど、お祭り期間中は奢られてくださいと、真顔で駄目出しされてしまった。ご馳走様です!



「あの、前回来た時に西京漬けを樽でお願いしていたんですけど、もう出来ていますか?」

 ちょうどレジの所に、前回注文した時に受け付けてくれたスタッフさんがいたので声を掛けると、にっこりと笑って頷いた。

「はい。それでしたらまさに本日、製造元からこちらに届きまして、先程冒険者ギルドへ連絡を入れたところですので、入れ違いになりましたね。かなり大きな樽ですので、配達もいたしますが?」

「いえ、収納の能力持ちなので、そのままいただきます!」

 目を輝かせた俺の言葉にスタッフさんはにっこりと笑って、別の男性スタッフに樽ごと持って来るように指示を出してくれた。

 なのでついでとばかりにお願いして、乾燥湯葉やさっき頂いた春のそよ風の吟醸酒。それから豆腐も持ち帰り出来るものはご迷惑にならない範囲で大量にお願いしたよ。

 その結果、乾燥湯葉、生湯葉、生麩、お店で作っているがんもどき、厚揚げ豆腐、油揚げ、木綿豆腐と絹ごし豆腐、豆乳、そしてざる豆腐までたっぷりと持ち帰りする事が出来た。いやあ、豆腐料理最高!

 今度から豆腐関係が欲しい時は、ここへ来よう。高級料亭のお豆腐はどれもめっちゃ美味しいよ。

 もちろん、ハスフェル達はドワーフ潰しをはじめ、今日いただいた春のそよ風だけでなく、スタッフさんおすすめの吟醸酒を大量に仕入れていた。うん、あの量は既にお持ち帰りなんて量じゃあない。完全に仕入れだ。

 まあ、俺も人の事は言えないけどね。



 店を後にした俺達は、のんびりとムービングログを転がしながらあちこち好きに見て周り、美味しそうな屋台を見つけてはまとめ買いなんかもしながら雪像を展示している広場へ向かっていた。

 何しろ豆腐懐石料理の店や屋台でも大量買いしたおかげで、またしても大量の投票券をもらってしまったので、各自自分のところへ投票するためだ。

「そう言えば人気投票の順位ってどうなっているんだろうな?」

 俺の呟きに即座に草原エルフ三兄弟が答える。

「俺達、草原エルフ一家が四位で、ケンさん達の愉快な仲間達パート2が、確か五位でしたよねえ」

「そうそう。俺達が四位で、ケンさん達が五位!」

「ああ、そうだったよなあ。俺達が四位で、ケンさん達が五位だったよなあ」

「五位五位と何度も言うな〜〜! 見てろよ! 絶対に逆転してやる」

 俺が持っている大量の投票券を思い出してほくそ笑みつつ、会場に入った。

 何となく無言でアーケルくん達と張り合いつつ、まずは順位が書かれている大きな掲示板へ向かうのだった。

 さて、後半の順位や如何に?

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― 新着の感想 ―
そういえばムービングログ、雪道でも走れるのね、滑らないのかな?
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