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昼食を食べに行くぞ!

「街の中は綺麗に雪かきしてくれているから、歩きやすくて良いなあ」

 人が多くて危ないので、マックスの手綱を持って石畳の道をゆっくりと歩きながら、そう呟いて周りを見回す。

 綺麗に雪かきされている広い道沿いのあちこちには、当然だが集められた雪の山が出来ている。それに改めてよく見ると、若い冒険者らしい人達が、建物の庭の雪かきや、私道とおぼしき細い道の雪かきをしている光景を何度も見た。

「そうか。冬の雪かきは、雪のせいでジェムモンスター狩りに行けない若い駆け出しの冒険者達のメインの仕事だって言ってたなあ」

 資金に余裕のある上位冒険者ならいざ知らず、日銭を稼いでやりくりしている下位の冒険者達からすれば、雪で外に出られなければ金欠状態確定なわけで、そんな時に安定して出る雪かきの仕事は、体力に自信のある冒険者達には有り難い仕事だろう。重労働には違いないけど、少なくとも狩りに行くよりは安全だよな。しかも屋根の雪はほぼ勝手に落っこちてきてくれる仕様だから、危険な屋根の雪下ろしはしなくて良い。

 せっせと雪を運ぶ若い冒険者に頑張れよと内心でエールを送りつつ、目的地の豆腐懐石料理店への道を目指して歩いた。



「おお、ここだよ。この外国にある和風っぽい家」

 純和風ではなく、何となく全体が和風っぽい感じに仕立ててあるので、外観は海外で作られた和風っぽい戸建ての家って感じだよ。

 丁度団体が出てきたところだったので、慌てて門の前から下がって道を譲る。

 話をしながら出てきたその人達は、すれ違いざまに、噂の魔獣使いを見たって言って大喜びで歓声を上げていたから、どうやら街の人じゃあなくて観光客だったみたいだ。

「あ、気にせずマックス達を連れて来ちゃったけど、大丈夫かな? 確か以前来た時は、邪魔にならないようにってギルドの厩舎に預けていたよな」

 俺がそう言うと、アーケル君やハスフェル達も、あ! って感じに目を見開いたり口を開けたりした後、揃って店を見た。

 建物横に自転車置き場くらいの細長いスペースがあって、今は奥に馬が二頭繋がれている。

 それを見てから、ハスフェルと顔を見合わせて無言で揃って首を振った。

「ここから一番近いのは、さっきのドワーフギルドか。仕方が無い。戻って従魔達を預けてからもう一度来よう。どう考えても従魔達にここで待ってもらうのは無理だな」

 うん。あの狭さで既に馬が二頭いるところへ俺達全員が連れている従魔を入れるのはいくら小さくなってもらったとしても物理的に無理。って事で、顔を見合わせてため息を吐いた俺達は、空きっ腹を抱えて足早にドワーフギルドへ戻ったのだった。



「じゃあ、悪いけど昼飯食ってくるからここで待っててくれよな」

 改めて行ったドワーフギルドの受付で厩舎を借りる手続きをして、裏庭にある広い厩舎に従魔達に入ってもらった。

「はい、では皆と一緒にここで待っていますね」

 ちょっと残念そうにそう言って俺に甘えてくるマックスを何度も撫でてやり、ギルドの外へ出ててから全員がムービングログを収納袋から取り出して飛び乗った。

 まあ、街の中で従魔達を気にせず乗れる貴重な機会だもんな。

 すると、それを見た観光客と思しき人達が集まって来て、これはどこで売っているんだと何人もから真顔で聞かれた。なので、ここか商人ギルドのどちらかで聞くと良いよと丸投げしておいた。

 当然、ドワーフギルドへ駆け込むその人達。だけどきっと、値段を聞いたらドン引くと思うけどね。何しろ俺の感覚だと、これ一台が外国製のスポーツカーくらいの価格なんだからさ。



「では、改めて行くとするか」

 皆で揃って苦笑いして頷き合い、ムービングログをゆっくりと動かした。

 普段とは別の意味で大注目を集めつつ、ようやく今日の目的地である豆腐懐石料理の店に到着した。

「ああ、遠い道のりだった。では早速!」

 大きく開いた門から、ムービングログを収納した俺達は並んで店へ入っていった。

「ようこそいらっしゃいませ」

 見覚えのある、着物もどきな服を着たスタッフさんが出迎えてくれる。

「ではこちらへどうぞ」

 綺麗な暖簾を潜って店内へ入り、前回とはまた違った部屋に案内された。

「お昼は限定メニューのみとなっておりますが、よろしいでしょうか」

「もちろんです!」

 満面の笑みの俺の返事に、にっこりと笑ったスタッフさんが飲み物のお品書きを広げて渡してくれた。

 成る程、飲み物は別料金なわけか。

「俺は米の酒が良いんだけど、さすがにこの時間からドワーフ潰しは勘弁して欲しい」

「それでしたら、こちらがお勧めですね」

 笑顔で教えてくれた別の米の酒をお願いした。全員がそれを頼み、一礼したスタッフさんが下がってしばらくすると、しずしずと料理が運ばれて来た。

 俺はもう、それを見た瞬間に声を上げそうになるのを必死で我慢したよ。

 何しろ、目の前に置かれたのは一辺が40センチ以上は余裕である平たくて正方形の蓋付きの木箱。要するに弁当箱だな。それから小さめの簡易コンロに乗せられた一人用鍋だった。

 今回は引き上げ湯葉ではなく豆乳鍋のようで、白いスープに普通に野菜が既にぎっしりと入っていて、別のお皿に薄切り肉がガッツリ一人前並べられていた。

 ううん、あの大きさの弁当にさらに肉がこれだけある鍋が付くか。

 やっぱりこの世界の人達って皆大食いなのかもって、密かに考えた俺だったよ。

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