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出来上がった胸当ての引き渡し

「ああ、ケンさん。丁度良かった。今、そっちの城へ、連絡の為の人をやろうかって話をしていたところなんだよ」

 ドワーフギルドに到着して中に入ったところで、俺達に気付いたエーベルバッハさんがカウンターの中から駆け出して来てくれた。

 見ると、カウンターの中には防具担当のギュンターさんとディートヘルムさんの姿が見える。

「ああ、もしかしてもう仕上がりましたか? 実を言うと、そろそろなんじゃあないかと思って、出来具合を聞きに来たところなんです」

 笑顔の俺の言葉に、二人が揃ってドヤ顔になる。

「お待たせいたしました! 今度こそ仕上がりましたよ」

 嬉しくなって小さく拍手すると、またしてもドヤ顔になる二人。

「それなら、奥の部屋を使うといい、念の為、最終確認の試着は必要だろうからな」

 エーベルバッハさんの言葉に揃って頷き、そのまま二人が大きな包みを抱えて奥の部屋へ向かう。

 ハスフェル達は、従魔達と一緒にここで待っていてくれるみたいなので、マックスの手綱をハスフェルに渡して、俺は大急ぎで二人の後を追いかけた。



「じゃあ、すまないが今着ている防具を脱いでもらえるか」

 頷いた俺は、大急ぎで胸当てを外して机の上へ一旦置いておく。籠手や脛当てはそのままでも大丈夫だ。もちろん今身につけているそれらは、ここで新しく作ってもらった方の籠手や脛当てだよ。それから、服の下にはミスリルとオリハルコン製の鎖帷子も着ている。

「はいどうぞ。これが仕上がった胸当てです」

 目の前の包みから取り出されたのは、濃い焦茶色をした艶消しの胸当てで、今まで身につけていた革製の胸当てよりも見るからに防御力は高そうだ。

 しかも、全体に大きめで、覆っている部分も以前のものよりも大きい。って事は、守ってくれている箇所が広いって事だよな。

「それから、ケンさんは肩に従魔が留まれるように止まり木を取り付けているだろう。一応これはそのまま使い回せるようにしてあるよ」

 机の上に置いてあった胸当てから、ギュンターさんがそう言って簡単にファルコの為の止まり木を取り外してくれた。

「へえ、あれって取り外せるようになっているんだ」

 自分で外した事が無かったので、密かに感心しつつ眺めていると、手早く新しい方の胸当ての肩に止まり木を取り付けてくれた。

「よし、これでいい。それじゃあ大丈夫だとは思うが、初めから自分で身につけてみてもらえるか」

 そのまま渡された胸当てを、俺は手にとってまずはじっくりと眺めてみる。

「おお、案外軽いんですね。これはいい」

 何となくもっと重いと思っていたんだけど、受け取った新しい胸当ては、今まで身につけていた革製の胸当てとほとんど変わらない重さだ。いや、大きくなっていることを考えるともっと軽いって事だよな?

「軽い防具は有難いよなあ。特にセンティピートの素材で作る胸当ては、金属の胸当て以上の防御力を誇るのに、重さは革製の胸当てと同等かそれより軽いくらいだから、最高だぞ」

「まあ、昆虫素材の防具の最大の利点が、金属製と同等かそれ以上の防御力なのに軽いって事だよ。特に、ケンさんのような前線で戦う剣士は、防具の軽さはそのまま動きの素早さに直結するからなあ」

 ギュンターさんとディートヘルムさんの言葉に、俺も大きく頷く。

「確かにそうですね。俺は氷の術は使えますが戦う時はほぼ剣か槍のどちらかですからね。軽くて防御力が高いのは、本当に有り難いですよ」

 俺の言葉に、また嬉しそうにドヤ顔になる二人。おっさん二人仲良しか!



 改めてよく見ると、胸当ての周囲の飾りの鋲は丸みを帯びていて、これも銀色の艶消しになっている。

「全体に艶消しなのは、もしかして光を反射したりしないように?」

 何となくイメージでもっとツヤピカだと思っていたのでちょっと意外だったんだけど、冷静に考えたら確かにこっちの方が良いだろう。例えば森の中なんかで獲物を待ち伏せするなら、キラキラ光る防具は絶対に駄目だもんな。

「ああ、光の反射は極力しない仕様になっているぞ。まあ、狩人以外はそこまで気にする必要は無いかもしれんが、安全面を考えるとこっちの方が良いからな。派手な方が良ければ、時間を貰えば磨きをかけてピカピカにする事も出来るぞ」

「いやいや、俺的にはこっちの方が断然良いですって。そんな無駄に光らせないでください。それでなくとも従魔達のおかげで目立っているのに、これ以上目立たせてどうするつもりですか!」

 俺の必死の訴えに、揃って吹き出して大爆笑になる二人だったよ。



「ええと、ここを外すんだったよな」

 胸当てに付いている小さな金具を外し、まずは前後にかぱっと開く。

「それで、ここから腕はここで頭をここに通す。最後に金具を締めれば終了っと」

 いつもの手順で素早く身につけて行く。

 金具の位置もほとんど変わらないので、全然違和感が無いよ。

「おお、ちょっと今までのよりもしっかりとした感じですね。だけど全然窮屈感が無い。これは素晴らしいです」

 ぐるっと首を回し、腕や肩も大きく回したり上げたりしてみるが、どこにも違和感が無く自然に動かせる。

 二人から少し離れて、ヘラクレスオオカブトの剣を抜いて構えるポーズを取ってみるが、もちろんどこにも違和感も痛みも無し。

「ああ、本当に素晴らしいです。すっごく自然に体が動きますよ」

 剣を鞘に収めてからも、槍を取り出したり短剣を取り出したりして構えてみたけど、もちろんこちらもばっちりだ。

 満面の笑みの二人と手を叩き合い、受け取りの書類にサインをしてから、そのまま部屋を後にした。

 もちろん、新しい防具を皆にお披露目する為だよ。



「お待たせ! ほら、見てくれ。もう完璧な仕上がりだよ!」

 部屋から出てきた俺を見て、ハスフェル達だけでなく、受け付けの周りにいた他のスタッフさんやお客さん達までが何故か揃って拍手してくれた。

 苦笑いしつつ改めてお礼を言ってドワーフギルドを後にしたのだった。

「じゃあ、少し早いがあの豆腐懐石の店へ行ってみるか。なんでもギルドで聞いた最新情報だが、冬場限定で料理の種類は決まっているが、昼限定の食事も出しているらしいぞ」

「しかも夜と違って、昼は予約無しでも大丈夫なんだってさ」

 笑ったハスフェルとギイの言葉に、俺の目が輝く。

 あの店のランチ限定メニューだって? しかも期間限定! そんなの、絶対食べたいに決まってるよ。

 よし、決めた。あの店のメニューを冬の間に全部制覇するぞ〜!

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