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またしても新たなる能力頂きました!

 その夜はリクエストに応えて、分厚いステーキをがっつり焼いたよ。

 ハスフェルが出してくれた赤ワインで即席ステーキソースを作り、付け合わせには、早速作ったばかりのフライドポテトを出した。二人にはカリカリに焼いたフランスパン、俺はご飯を出し、一緒に豪華な夕食を楽しんだ。

 サクラとアクアに手伝ってもらって、汚れた食器を片付ける。

 それから、作ってもらったチョコ用の鞍と手綱を見せてもらった。



「へえ、鞍の下にクッションを敷くってのは良い考えだよな。確かにこれなら、出っ張った背骨に鞍が当たらないよ」

 両端が膨らんだ独特な形のクッションを背中に乗せてその上に鞍を乗せるのだ。固定の仕方は、マックスやシリウスと変わらない。

 手綱は、顔の部分をぐるっと包むみたいに回した革のベルトに繋がっている。一見すると、馬銜(はみ)を噛んでいるように見えるが、そうでは無い。

 そのすぐ下に、この子が従魔である証の首輪が付けられていて、頭から伸びたベルトが首輪がずり落ちないようにしている。そのまま後ろに伸びて手綱としてクーヘンが掴むようになっているのだ。

「良かったな。素敵な鞍を作ってもらえて」

 嬉しそうにしているチョコの鼻先を撫でてやりながらそう話しかけると、チョコは喉を鳴らした。

「ええ、ご主人はそのままではとても乗りづらそうにしていましたからね。良い物を作ってもらえて嬉しいです」

「そっか。確かに乗りにくそうだったもんな」

 俺が笑ってそう言うと、ハスフェルが驚いたように俺を見ているのに気付いた。

「ケン、ちょっと待て。お前……チョコと話が出来るのか?」

 一瞬、何を言われているのか分からなかったが、当然だったので俺は頷いた。

「ああ、分かるぞ。だって、テイムした従魔は言葉が分かるようになるんだろう?」

 答えながら、俺も首を傾げた。


 あれ? 確かテイムした従魔の言葉が分かるのって、その主人だけだって、最初の頃にシャムエル様が言ってなかったっけ?

 記憶を辿ってみて、確かにそう聞いた事を思い出した。だから、人前であんまり従魔と話すのは良くないって聞いたんだよ。確か。


 思わずハスフェルと顔を見合わせる。

「確かにそうだな。だけど、チョコの言葉は分かるよ?」

「もしかして、テイムした時一緒にいたら言葉が通じるのか? そんな話は聞いた事が無いがな?」

 二人揃って首を傾げ、俺はクーヘンが連れているスライムのドロップを見つめた。

「ええと、俺の言葉って分かるか? ドロップ」

 足元にいるアクアやサクラが間違って返事をしないように、俺はわざわざ名前を呼んでドロップに話しかけた。

「うん分かるよ。いつもサクラやアクアに色々教えてもらってるんだよ。ありがとうね!」

 ビヨンと伸び上がったドロップにそんな事を言われて、俺はクーヘンを見た。

「なあ、ちょっと聞くけど、俺が連れている従魔達の言葉って……」

「いえ、全然全くこれっぽっちも分かりません。ケンが普通に従魔達に話し掛けているのは何度も見ましたが、それに対する従魔達の返事は私には聞こえていませんよ」

 そう言って必死で首を振るクーヘンを見て、俺とハスフェルは無言で、右肩にいてあからさまに俺達から視線を逸らすシャムエル様を見た。


 うん、これは絶対何かやらかしてるな。

 あとで徹底的に問い詰めてやる。


「あの、どうしたんですか?」

 急に俺達が二人揃って黙ったもんだから、クーヘンが不思議そうにしている。

「ああ、分かったよ。恐らくケンは感応力の高い特殊能力者なんだろうな。俺も今まで会った事は無いが、従魔達と自由に話が出来る能力者がごく稀にいると聞いた事がある。さすがは樹海の民だな」

 あ、ハスフェルの奴、何とか無理矢理話をまとめたな。

「おお、そうだったんですね。さすがは樹海の民。素晴らしい能力ではありませんか。ケン、もしも私の従魔達で気付いた事がありましたら、何でも構いませんからどうか教えてください。私はまだ、この子達と上手く話が出来ないみたいですので」

「え? 話はちゃんと通じてるみたいだし、こいつらみんな、クーヘンの事が大好きだぞ?」

 自信無さげなその様子が気になって、思わずそう聞いてしまった。


 だって、出会った時の様子からして、ドロップはクーヘンの事がとても大好きなのは見れば分かるし、モモンガのフラールやミニラプトルのピノだって、クーヘンの側から片時も離れないのを見れば、彼が自分の主人だって分かってるし、ちゃんと懐いているのが分かるよ。

「まあ、私の言葉は通じていますし、何となくこいつらの言いたい事は分かりますが、今話しているみたいな明確な言葉で会話出来る訳では無いです。いつか、人と話すようにこいつらと話せれば良いなと思ってます」

「会話出来るかどうかって話は多分、テイマーと魔獣使いの差だな。よし、クーヘンは明日、洞窟へ行くまでの間、もしくは洞窟内でもう一匹ジェムモンスターをテイムしてみろ。そうすればお前は従魔の数が五匹になる。教会で紋章を刻んでもらえば、お前は立派な魔獣使いになる訳だからな。この件は、お前が魔獣使いになってからもう一度検証してみよう」

 ハスフェルの提案に、クーヘンは素直に頷いた。

「分かりました。では明日も頑張って何かテイムしてみる事にします」

 って事で、今夜の話はそこまでになった。

 しかし、ハスフェルはクーヘンを先に部屋に帰るように言って、自分は勝手に取り出した酒瓶を片手に一人で飲み始めた。

「分かりました。それじゃあ私は先に休ませてもらいます。おやすみなさい」

 勝手に飲んでいるハスフェルを見て、クーヘンは笑ってそう言うと従魔達と一緒に部屋へ戻って行った。




 その後ろ姿を見送り、扉が閉まってからしばらくの間、部屋に沈黙が落ちる。

「それでシャムエル。お前、一体何をやらかしたんだ?」


 おお、ハスフェルの声が怖いです。


 俺の肩から机の上に一瞬で移動したシャムエル様は、笑って俺を見た。

「多分、一番最初にケンを作った時に、マックスやニニちゃんと話が出来るように、高位の感応力を与えたんだよね。別にあっても邪魔にならないと思っていたからね。多分、その影響がちょっと強すぎたんだと思うな。別に構わないでしょう? さっきハスフェルが言ってくれた、ごく稀にいる感応力の高い人ってのは良い考えだと思うから、それで押し通そう!」


 ……シャムエル様、何故にそこでドヤ顔?


「だからお前は大雑把だと言うんだ。感応力の高い奴がこんなに鈍感な訳無いだろうが。こいつはクーヘンのあれだけ分かりやすい尾行にも全く気付かなかったんだぞ」

「あはは、それを言われると返す言葉が無いよ」

 笑って誤魔化したが、ハスフェルは笑ってくれなかった。

「もう、いっそ樹海の民だからで押し通す方がマシだな」

 諦めたようなハスフェルの言葉に、シャムエル様は突然顔を上げて手を挙げた。

「ねえ、良い事思い付いた!」

「……言ってみろ」

 すごく嫌そうな声のハスフェルを無視して、シャムエル様は嬉々として俺を見た。

「ケンに、念話の能力を授けてあげるよ。それなら、魔獣使いである彼が従魔達と自由に話が出来ても別に不思議じゃ無いと思うな」

 その言葉に、目を見開いたハスフェルは顔を上げた。

「お前にしては良い考えだな。ならこうしよう。今までケンが念話で話せたのはごく限られた限定的な人だけで、あまり役に立たない能力だと思っていたから気にもしていなかった。だけど、同じテイマーであるクーヘンに初めて出会って、ケンの念話の能力は人が相手だと限定的だが、テイムされた従魔と自由に話が出来る事が分かった。これでどうだ?」

「その意見採用!」

 シャムエル様がそう言ってハスフェルと頷き合った。

「って事だから、ちょっとじっとしていてね」

 突然俺の右肩に現れたシャムエル様は、笑ってそう言い、俺の頬を叩いた。


 俺の事なのに完全に俺を無視して、どうやら俺の新たな能力が決まったようです。


「じっとしていてね。ええと、念話の能力を授ける。希望する人と何処にいても会話が出来る能力なり。決して悪事に使う事なかれ」

 いつもの神様っぽい声でシャムエル様がそう言う。

 それを聞いた瞬間、俺の全身に震えが走った。

 だけどそれは一瞬の事で、もう気が付いた時は普段どおりだった。

「どう?」

「さあ、どうって聞かれても……」

 何か変わった自覚は全く無かったので正直に答えると、いきなり頭の中に声が聞こえた。

『聞こえるか?』

「うわあ、なんか聞こえたぞ!」

 思わず声に出してそう叫ぶと、ハスフェルがいきなり吹き出した。

「せっかく念話の練習をさせてやるつもりで話し掛けたのに、声に出して答える奴があるか」

「ええ、いきなりそんなこと言われても、どうやるんだよ」

「俺の事を考えながら話し掛けてみろよ」

 笑いながら簡単にそう言われて、なんだか悔しくなった俺は、彼に背を向けて少し考えた。


『ええと、飲み過ぎるなよ』

『おお、ちゃんと聞こえたぞ。すごいじゃないか。もう使いこなしている』

 笑みを含んだハスフェルの声が頭の中に聞こえて、俺は頷いた。

『ええと、じゃあシャムエル様は? 聞こえてますか?』

 何と無く感覚的に分かった気がしたので、今度は左側を向いてシャムエル様を見ないようにして話し掛けてみた。

『うん、聞こえるよ。上手くいったみたいだね。あ、今みたいに順番に一緒に考えながら話をすれば、三人同時に話せるからね』

『ああ聞こえてるぞ。良いな。これでケンとも内緒の話がし放題だぞ』

 またハスフェルの声が聞こえて感心した。


「成る程。何となくだけど感覚的に分かったような気がする。まあこれも慣れだと思うから頑張ってやってみるよ。あ、これって距離は?」

 今度は声に出してシャムエル様に尋ねる。

「うん、距離は関係無いよ。それこそ世界の端と端にいても通じるからね。私とも繋がるから、いつでも話し掛けてね」

 嬉しそうなその言葉に、俺は笑ってシャムエル様をそっと撫でた。

「ありがとうございます。大事に使います。これは凄く有難い能力だと思うよ」

「良いって良いって。私には造作も無い事だからね」

 せっかくたまには素直に感謝するのも良いかと思って言ってみたのに、鼻息荒くそんな事を言われてしまったよ。はい、胸を張ったシャムエル様の、本日二度目のドヤ顔いただきました!

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― 新着の感想 ―
念話能力いいですね、シャムエル様不在時でも念話でつなげられるようになりましたね。
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