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フランマの抜け毛収穫タイム!

「はあ、美味しかった!」

 すき焼きの定番、締めのうどんまで綺麗に平らげた俺は、大満足のため息と共に後半になって出てきた吟醸酒をグイッと飲み干した。

 途中で冷えたビールが飲みたくなって自分で取り出して飲んでいたら、ハスフェルがにっこり笑ってこの吟醸酒を出してきてくれたんだよ。確かに、後で飲むって言っていたよな。

 濃い味付けのすき焼きに、この爽やかな軽い風味の吟醸酒は意外な事に相性抜群で、ついついぐいぐい飲んじゃったよ。

 一応これは、以前豆腐懐石料理の店で購入した『ドワーフ潰し』ほどには酒精は強くはない。とは言っても吟醸酒だから、まあそれなりに強いお酒だよ。

 後でフランマにブラシをする約束をしている以上、うっかり酔い潰れるわけにはいかないので一応加減して飲んでいるよ……ああ、勿体無い。

 食後はしばらくそんな感じでダラダラと飲みつつ、ふと思い出した。

「そう言えばあの豆腐懐石のお店で、樽で西京漬けを頼んでいたよな。もうそろそろ出来上がってるんじゃね? よし、一度聞きに行ってみよう。じゃあ明日は街へ出掛けるか」

「街へ行くんですか?」

 俺の呟きが聞こえたらしいランドルさんの言葉に頷く。

「おう、以前行った豆腐懐石のお店であの西京漬けを樽でお願いしていたのがそろそろ出来上がっているんじゃあないかと思ってさ。一度聞いて来ようかと思って」

「ああ、あそこの料理は本当に美味しかったですからねえ。久し振りに故郷の味に出会えて俺も嬉しかったですよ」

 嬉しそうに目を細めるランドルさんの言葉に、俺もうんうんと頷くのだった。

 あの西京漬けがあれば、この世界では貴重な魚料理が、いつでも食べられるものな。

「それなら俺も行きたいですね。あの吟醸酒は本当に美味しかったので、もう少し買っておきたいですよ」

「じゃあ一緒に行きましょう。そう言えば、乾燥湯葉が無いか聞いてみよう。それと、あの酒饅頭も売ってくれれば良いのになあ」

 のんびりとそんな事を呟きつつ、ランドルさんと最後の一杯を乾杯してから飲み干したのだった。




「それじゃあおやすみ」

「おやすみなさい」

 ピッカピカになった従魔達と一緒に、それぞれの部屋に戻って行く。

「じゃあ俺達も戻ろうか」

 側にいたニニに抱きついてそう言いながらもふもふを満喫する。

 ご機嫌なニニの鳴らす喉の音を聞きながら、俺は寝そうになるのを何とか必死で我慢したよ。

「よし、戻ろう!」

 目を覚ます意味も込めて大きな声でそう言って、とにかく全員を引き連れて部屋に戻った。

「おかえりなさ〜〜い!」

 ダンスホールからそのまま先に部屋に戻っていたフランマが、そそくさと俺のところへ駆け寄ってくる。

「お待たせ。それじゃあブラシをしようか」

 腕を伸ばして、とりあえずふわふわなフランマを思いっきり撫で回してやる。



 さっき収納しておいた濡れタオルをもう一回水場で綺麗にして、まずはしっかりと濡れタオルで拭いてやる。

「ええ、案外汚れているぞ。白いタオルにちょっと色がついたぞ」

 全体的に、白いタオルが何となくベージュっぽくなった気がする。

「ええ、ちゃんと水浴びしているんだけどなあ」

 焦ったみたいに自分の体を舐め始めるフランマを、俺は苦笑いして止めてやる。

「良いって。今から綺麗にするんだからさ」

 乾いたタオルで豪快に擦ってやり、水気が取れたところでブラッシング開始。今のフランマは大型犬サイズになってるから丁度良い大きさだ。

 まずはちょっと硬めのブラシで背中側を中心に抜け毛をガッツリと収穫する。

「おお、これまたすごく抜けるぞ〜〜」

 これまた笑えるくらいに毛が抜ける。だんだん面白くなってきて両手でブラシを持ってガシガシと擦ってやったよ。

「ううん、ご主人、気持ち良いです〜〜〜〜!」

 いつも以上に膨れている尻尾をパタパタと振り回しながら、フランマが無言で悶えている。

「おう、これが終わったら次はお腹側をするぞ」

 柔らかいブラシに持ち替え、背中側から横っ腹にかけても少し強めにブラシをかけてやる。

「おお、抜ける抜ける。フランマも早くも換毛期か?」

 笑って抜け毛を足下に落としながら、ガシガシとブラシをかけて抜け毛を収穫していく。

 スライム達に、片付けるのをちょっと待ってくれってお願いしたから、足元はもうピンク色の絨毯、いや、一面ピンクの海になっていて、まるでピンク色の雲の上にいるみたいだ。



「よし! 次は胸からお腹側をするから、横向きになって寝転がってくれるか」

 ぽんぽんと背中を叩いてそう言い、言われた通りに寝転がったフランマのお腹側に座る。

「じゃあ始めますよ〜〜痛かったら言ってくださいね〜〜〜」

 上側の前脚を持ち上げて胸元からブラッシング開始だ。

 取り出したのはやや目の荒い梳き櫛(すきぐし)。これで胸元の辺りを中心に、まずは全体に絡まっている毛を軽く解してやる。

 ニニもそうなんだけど、フランマも毛が長くて柔らかいから、特にこの辺りの毛が絡まって毛玉になりやすいんだよな。まだニニは俺が寝る時に手で撫でたり軽く()いたりしているからマシなんだけど、フランマはやった事が無いもんな。多分めっちゃ毛玉が出来ている気がする。

 そう思ってやや目の荒い梳き櫛にして正解だった。

 予想通り、いや予想以上に胸の辺りにめっちゃ毛玉が出来ていたよ。しかも絡まり具合があまりにも酷くてもう解れなくなっていて、一部はナイフで切ったりもした。

 ううん、ごめんよ。もっと早く気がついてやれば良かった。

 だけどフランマは気持ちが良かったらしく、すっかりご機嫌でお腹を上向きにして、完全にへそ天状態で脱力して転がっている。良いのかそんな事で。野性味は何処へ行った? 

 だけどまあ、これは俺を信頼してくれている証でもあるだろう。苦笑いして、またせっせと毛玉を解していった。



「よし、これで毛玉が無くなったぞ。じゃあ、あとは柔らかいブラシでお腹側を全体にブラッシング〜〜〜!」

 野性味ゼロなへそ天状態で寝転がってくれているので、遠慮無く胸からお腹周りを優しくブラッシングしてやる。もちろん、ここもすごい量の抜け毛が収穫されたよ。

 そして最後は体よりも大きいくらいの、フランマのチャームポイントのもふもふな尻尾だ。

 濡れタオルと乾拭きの後、梳き櫛と柔らかめのブラシで全体をブラッシング。こちらも笑えるくらいに大量の長い抜け毛が収穫された。

 ううん、世界を抜け毛で埋め尽くす計画の主犯は二二だけど、もしかしてフランマってそれに次ぐ位置かも……。

 周りに広がるピンクの抜け毛の海を見て、もう笑いが止まらない俺だったよ。

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