お疲れ様とお遊びタイム!
「本日はスライムトランポリン体験会にご参加いただき、ありがとうございました。間も無く体験会は終了のお時間となります」
もう一回の休憩を挟んで、のんびりと見張りをしていたスライムトランポリンの体験会だったが、どうやら日暮れ前には終了となったようで、倉庫内に終了を知らせるアナウンスの声が響いた。
それを聞いて、あちこちからはもっと遊びたいといった笑い声とブーイングと共に、歓声と拍手が沸き起こった。
「続きまして皆様にお知らせいたします。大好評をいただきましたスライムトランポリンですが、このあと一月の五日より四日間。お祭り終了までの間、この倉庫街にて開催する事が決定いたしました。お手持ちのチケットはそのままお使いいただけますので、当日まで無くしませぬよう大切に保管してください。開催までの間、各ギルドに臨時のチケット販売ブースを設置いたします。当日は混雑が予想されますので、事前購入をお勧めいたします」
そのアナウンスが聞こえた直後、先ほどの比ではない大歓声と拍手に広い倉庫は包まれ、その後に何故か皆が手を取り合って、手拍子に合わせて踊り始めた。
それを見て、俺も座った高い椅子の上で笑いながら一緒になって手を叩いていたのだった。
いやあ、商人ギルドの対応力と企画力、半端ねえっす。
お祭り騒ぎも落ち着き、何とか並んでいた人達にはギリギリまでスライムトランポリンを楽しんでもらって最後のお客さんを送迎馬車に乗せた後、またしてもスタッフさん達から大歓声と拍手をいただいた。
「お疲れ様でした! あの、ちょっとだけ我々もスライムトランポリンで遊ばせていただいてもよろしいでしょうか!」
見張り台の椅子から降りた俺に駆け寄って来た目を輝かせたスタッフさんの言葉に、堪える間も無く吹き出したよ。まあこれも予想通りの反応だけどね。
「どうだ? まだ大丈夫か?」
近くにいたスライムトランポリンに手を当ててそう聞いてやる。
「まだまだ遊びたいで〜〜〜す! どんどん来てくださ〜〜い!」
「我々にも〜〜遊ぶ権利を〜〜〜!」
「どんと来〜〜〜〜い!」
「どんと来〜〜〜〜い!」
嬉々としたスライム達の返事に、またしても吹き出す。
「あはは、お前らも楽しんでるんならいいよ。じゃあ上がってもらうよ」
笑って軽く叩いてやると、大きなスライムトランポリンが全体にたわむみたいにポヨンと揺れて波打つ。
「いいですよ。どれでもお好きなのにどうぞ。だけど一度にあまり大人数にならないようにね。注意はさっきと同じですから、突起のある服やアクセは駄目ですよ」
まあ、スタッフさんにそんな人はいないだろうけど、一応言っておく。
「了解です。では、よろしくお願いしま〜〜す!」
「よろしくお願いしま〜〜す!」
嬉々としてそう叫んだスタッフさん達が、あちこちに突撃していく。
「ねえ、ヴァイトンさん。従魔達も呼んでやってもいいですよね!」
以前お城の庭でギルドマスター達にスライムトランポリンを体験させた時には、俺の従魔達も一緒に遊んだので、それを知っているヴァイトンさんは、笑って頷いてくれた。
「マックス達を迎えに行ってくるよ!」
ちょうど近くにいたハスフェルに声をかけ、大急ぎで裏にあるお客さん用の厩舎へ駆け込んだ。
全員の従魔達を引き連れて戻って来ると、会場内には楽しそうなスタッフさん達の歓声や悲鳴と笑い声が響いていたよ。
そして満面の笑みで待ち構えているリナさん一家とランドルさんとハスフェル達。皆も従魔達と遊びたかったらしい。
従魔達をそれぞれのご主人のところへ返してやり、俺もスライムトランポリンに参加しようと会場を見回した。
すると何故か一つだけ、手前側にある大きなスライムトランポリンが空いていて、誰も使われている様子が無いのに気が付いた。
「ご主人、お待ちしてました〜〜〜〜! マックス達も一緒に、さあどうぞ!」
「さあどうぞ! ご主人!」
「早く早く〜〜〜!」
そのスライムトランポリンから張り切ったアクアやアルファ達の声が聞こえ、俺はもう笑いが止まらない。
「よし、じゃあいくぞ!」
鞍も手綱も外したままのマックスの背中によじ登って背中にまたがる。
「じゃあ行きますよ!」
張り切った掛け声の直後、一気に大ジャンプしたマックスが誰もいないスライムトランポリンへ飛び込んでいった。
「うひゃ〜〜!」
鞍無しのマックスの首に抱きついていた俺は、反動で吹っ飛ばされて背中からスライムトランポリンの上へ落ちた。
「ご主人を〜〜〜〜!」
「楽しませま〜〜〜す!」
そのまま相当な高さまで弾かれてまた悲鳴を上げる。
「ご主人! 遊びましょ!」
巨大化した猫族軍団が俺に向かって飛び掛かってくる。
爪無し猫パンチからの軽い猫キック、そしてハグ〜〜!
運動神経抜群の従魔達は、余裕で動きを制御しているけど、普通の運動神経の俺にはそんな高等技術はない。
右に左に転がりながら不意に高く飛び上がる。
ある意味、普通のトランポリンでは絶対にあり得ない動きに翻弄されて、俺はぶつかってきた大型犬サイズになったセーブルの背中に、笑いながら必死でしがみついていた。
「セーブルばっかりずる〜い!」
しばらくセーブルと一緒に転がっていると、いきなり後ろから飛びついて来て引き剥がされる。そのまま巨大化したティグのお腹に抱きついて、また高々とジャンプして悲鳴を上げたのだった。
いやあ、従魔達の運動神経も、半端ねえっす!