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お試し準備は万端です!

「はあい、それでは出発しま〜〜す!」

 御者台に乗ったスタッフさんの声に、馬車に乗った人達からやる気のなさそうな返事や元気な返事が返る。

 何と馬車に乗っている人達はギルドのスタッフさん達だけではなく、明らかに一般人っぽい高齢者や女性、子連れのファミリーと思しき方々まで、種族年齢を問わず様々な人がいるので、どうやら色んな人達にお試しに参加してもらっているみたいだ。もしかしたらギルドのスタッフさんのご家族とかなのかも。

 さすがに従魔達をこの馬車に乗せる訳にはいかないだろうとの事で、俺達はいつものように従魔に乗って馬車の後ろをついてゆっくりと進んだ。

 事情を知らない街の人達は、一体何事だと言わんばかりに俺達とその前を進む営業用の馬車のようなものを見ては、不思議そうに首を傾げていた。



「へえ、これ自体も一種のデモンストレーションな訳か。やるなあ商人ギルド」

 周囲の人達の反応を見て思わずそう呟く。

 だって馬車と俺達が通った後には、必ずと言ってもいいくらいに、あれは何の行列だ。あれは何処へ向かっているんだと、数人で集まっては興味津々で話をしている。だけど誰も答えを知らないんだから正解が出るわけもなく、結局ギルド連合が何かやってるって興味だけが残る形でしか終われないのだ。

 これでギルドがスライムトランポリンの催しを正式に公表したら、間違いなく興味を持った大勢の人が殺到するだろう事が容易に想像できたよ。

「お試しが広告宣伝を兼ねるって、さすがは商人ギルドって気がするなあ。おお、一気に広くなったぞ」

 ようやく街を抜けたところで、苦笑いした俺はそう呟いて周りを見回した。

 聞いていたようにこの辺りは倉庫街になっているようで、道幅は広くて雪掻きもされているので、寒い事を除けば移動自体は快適だ。

 立ち並ぶ倉庫は大きくて扉もデカい。

 建物自体は街にあるのと同じような煉瓦造りや石造りなんだけど、明らかに街中の建物とはつくりが違う。壁が大きくて一階の天井の高さがハンパない。

 どちらかと言うと俺の記憶にある港近くの工業団地みたいな風景だよ。



 ちょっと懐かしい記憶に浸りつつ進んでいると、ようやく馬車が止まった。

 目の前にそびえ立つのは巨大な煉瓦造りの建物で、三角の屋根が幾つも並んで続いている。どうやら大きな一棟の建物を三角の屋根単位で区切って使っているみたいだ。長屋の倉庫版だな。

「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ!」

 案内役と書かれた腕章をつけたスタッフらしき人達が駆け寄ってきて、手早く馬車の扉を開けてお客さん達を倉庫へと案内していく。

「ちょっと待ってくれよ。まだスライムトランポリンの準備を全くしていないのに!」

 慌ててマックスの背中から飛び降りた俺は、そう言いながら馬車から降りて来たヴァイトンさんを振り返った。

「ああ、今からお客さん役の方達を別室に集めて、スライムトランポリンを利用するに当たっての説明や貴重品の取り扱いについて説明するんだ。その際に、この説明だけで分かるかどうかも判断して回答してもらったり意見を聞いたりしないといけないから、ある程度時間がかかるんだよ」

「ああ、成る程。お客さん役の人達に意見を聞いたりアンケートを取るわけだ」

 納得して、ヴァイトンさんの案内で別の入り口から倉庫の中へ入る。

「おお、暖かいですね」

 建物の中はふんわりと暖かくて思わず笑顔になる。

 暖房ガンガン、ってわけではないけど寒い外からここへ入ったらそれだけでも嬉しいよ。



「見てくれ。こんな感じで空き倉庫四棟丸々、壁を取り払って一つにしたんだ。これだけ広ければ大きなスライムトランポリンでも自由に使ってもらえるだろう?」

 ドヤ顔のヴァイトンさんの説明に、俺はもうポカンと口を開けて頭上を見ている事しか出来なかった。

 何しろ見上げた天井が高い! ちょっとした体育館なんかよりもはるかに高いぞ。あれ何階建レベルだ?

「じゃあ、適当に離れてレインボーとメタルの大きいの十個くらい用意して、あとは複数個の中サイズから小さめサイズを並べればいいな。おおい、スライム達をこっちへ寄越してくれるか」

 持っていた鞄からスライム達を手品のように出しつつ、ハスフェル達に呼びかける。

「はあい! 今行きま〜〜す!」

 全員のスライム達が、一斉に跳ね飛んで俺のところへ集まって来る。

 それを見て、集まって来てくれるスタッフさん達。どうやらチケットを集めてくれる担当の人達らしい。

 相談の結果、今回も全員のスライム達の言葉が分かる俺がメインでスライム達を管理して、ランドルさんとハスフェルとギイが冒険者ギルドから来た大柄な人達と一緒に警備を担当してくれる事になった。

 ちなみに草原エルフ三兄弟は、当然のようにお客さん役になってヴァイトンさんからチケットをもらっていた。

 リナさんとアルデアさんは手伝うと言ってくれたんだけど、アルデアさんは自分のスライム達とも言葉での詳しい意志の疎通は出来ないし、リナさんは小柄なので人混みの中で働いてもらうのは危ない気がしたので、気にせずお客さん役をしてもらうようにお願いしたよ。

 それからマックスをはじめとする従魔達は、ここで待ってもらうのはさすがにまずいだろうとの事で、後で一緒に遊ぶ約束をして、お客さん用の専用の厩舎でお留守番してもらう事になったよ。

 猫族軍団は一緒にスライムトランポリンをするつもりだったらしく、ちょっと拗ねていたので順番にしっかりおにぎりにしたり抱っこしたりしてやったよ。


 スライム達も大張り切りで、あっという間に全ての大きさのスライムトランポリンが準備が完了した。

「ご主人、準備万端です〜〜!」

「お任せくださ〜〜い!」

「お客さんはどこですか〜〜〜?」

 嬉々として大騒ぎしているスライム達の声を聞いて、俺はもう声を上げて大笑いしていた。

 さて、初のバイゼンでのスライムトランポリンお試し会、準備万端整いましたよ〜〜〜!

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