岩豚サンド最高〜〜!
「おお、これはいい匂いだなあ」
「本当だ。これはもしかして……」
リナさん夫婦とランドルさん、それからハスフェルとギイが揃ってリビングに入って来たところで、部屋中に立ちこめる香ばしい香りに足が止まる。
「おはよう。ああ、全員揃ったな。じゃあ食べるとしようか」
「おはよう。朝から何を焼いていたんだ?」
マイカップにコーヒーを注ぎながら、キッチンから戻って来た俺とアーケル君を見たハスフェル達が揃って不思議そうにしている。
「ふふふ、ひれ伏せ〜〜〜!」
笑ってそう言うと、俺は収納していた岩豚ミニステーキが山盛りになったお皿を取り出して見せた。
全員から歓声と拍手が沸き起こる。うん、追加を焼いて正解だったね。最初の量だったら、絶対に俺の口に入らなかったぞ。
「これをパンに挟んだら美味しいかと思ってさ」
俺の言葉に、またしても起こる拍手と歓声。
「あはは、まあ好きに食ってくれ。足りなければまた焼くからさ」
そう言いながら、全部で五皿あった岩豚ミニステーキをそれぞれの前辺りに置く。もちろん俺の目の前に一皿置いたよ。だって、シャムエル様がめっちゃキラキラした目で見つめているんだからさあ。
「じゃあ、岩豚サンド用のコッペパンと食パンを貰って、一応タマゴサンドも取っておくか。あとは適当に色々……ああ、良い事思い付いたからこれも取っておこう」
目玉焼きも一皿取り、マイカップにコーヒーとグラスには激うまジュースをミックスして入れてから席に戻る。
手早くコッペパンに岩豚を挟んだ岩豚サンドを作って別の小皿に載せる。
テーブルの横にいつもの敷布を敷いてから岩豚のミニステーキのお皿を丸ごとと、作った岩豚サンド、俺の分のお皿と飲み物をまとめて並べる。おお、なかなか豪快なお供えになったぞ。
「おはようございます。今朝は、パンに挟んだら美味しいかと思って岩豚を焼いてみました。少しですがどうぞ」
いつもの収めの手が現れて、俺の頭を何度も撫でてから岩豚のミニステーキを撫で回してお皿を持ち上げ、他のお皿も順番に撫でていく。
最後にマイカップも持ち上げてから消えていく収めの手を見送る。
「なんだか嬉しそうだったな。それで、どれがいいんだ?」
「えっと、ロールパンで岩豚サンドを一つ作ってください! 中身多めで! それから岩豚もそのまま一枚ください! それとタマゴサンドは……今日は半分にする! あとは適当にお願いします!」
おお、岩豚を食べたいためにタマゴサンドを半分にするのか。考えたな。
笑って差し出されたお皿に言われた物を並べてやる。一応半分に切ったタマゴサンドは大きい方を渡したよ。
「じゃあ、俺も食べるとするか」
目の前のお皿から自分のお皿に岩豚をまとめてガッツリと取り、マヨネーズを塗った食パンの上に二段重ねになるようにぎっしりと並べる。
「おお、これだけでも充分だけど、ここにさらに美味しくなるようにこれを追加するよ」
にんまりと笑った俺は、その上に目玉焼きを丸ごとのせてから、軽く醤油を目玉焼きに回しかけ、それからもう一枚の食パンを重ねた。マヨと醤油の組み合わせも美味しいんだよなあ。
「何それ! それは反則〜〜〜〜!」
振り返ったシャムエル様が、いきなりそう叫んで俺の腕をペシペシと叩く。
「ふふふ、良いだろう。岩豚サンド目玉焼きのせバージョンだよ」
焼いたのは四角いバラ肉なので、ちょうど食パンに隙間なくぎっしり並べられたんだよね。なので端っこまでぎっしり全面岩豚状態。最高じゃね?
「ねえ! それのオムレツバージョンを作ってください! お願いします!」
立ち上がったシャムエル様が、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら俺の手に尻尾を叩きつけてくる。いいぞもっとやれ。
「わかったわかった。作ってやるからちょっと落ち着け」
とか言いながらさりげなくもふもふ尻尾を撫でてやり、立ち上がって食パンとオムレツのできるだけ四角っぽいのを取ってくる。
期待に満ち満ちた目で見つめられつつ、手早くもうワンセット岩豚サンドのオムレツバージョンを作ってやる。こっちにはちょっとだけケチャップも塗ってやった。
「おお、これもめっちゃ美味そうじゃん。なあ、両方半分こしないか?」
半分に切った断面は、どちらもめっちゃ美味しそうだ。
「ああ良いね。じゃあ半分交換ね」
タマゴサンドを齧っていたシャムエル様がそう言ってくれたので、半分ずつ交換してから別のお皿に乗せて渡してやる。
「さて、今度こそいただきます!」
小さくそう呟いてから、まずは目玉焼き入り岩豚サンドに齧り付く。
「ううん、これは美味しい。最高なんで、これも今後は作り置きメニューに入れておこう。はあ、岩豚最高だな。煮て良し焼いて良し揚げて良し。もう万能選手じゃん」
ちょっと感動しつつ、俺もシャムエル様もその後は黙々と美味しい岩豚サンドを平らげたのだった。