焼肉タイムの終了とデザートの登場!
「いやあ、ここまで見事に食い尽くされると最早感動するレベルだなあ」
山ほど出してあった岩豚の肉各種やハイランドチキンやグラスランドチキンの肉まで、もうカケラも残さずに綺麗に無くなっている。
一応二回、肉全種類を大量に追加を出したよ。
串刺しの塊肉は、そりゃあもうギリギリまでアーケル君達が豪快に削ってくれて、これまた完食。それからビールをはじめワインの空瓶もすごい量になっているから、こちらも楽しんでもらえたみたいだ。
「ええと、お肉はもう良いですか〜〜?」
「はあい! ご馳走様でした〜〜〜!」
若干酔っ払った元気な声が返ってくる。
「あはは、ご満足いただけて何より。ええと、デザートに果物とケーキを用意しているんだけど、さすがに多いかな?」
「そんな事ありません!」
即座に返ってくる草原エルフ三兄弟とランドルさんの答え。それを聞いて職人さん達やギルドマスター達も笑いながら手を上げて、大丈夫です! とか言ってるし。
ううん、別に良いけど、やっぱりこの世界の人は食べる量がおかしい気がするぞ……。
「じゃあ、デザートはこれだな」
笑ったハスフェルとギイが机の上に取り出してくれたのは、複数の何やら巨大な木箱だ。一つずつに十字に紐掛けがされていて片手でも持てるようになっているんだけど、どう見てもサイズがおかしい。
普通、俺の感覚でデコレーションケーキって言えばせいぜいが片手を広げたくらいのサイズ。多分直径にすれば20センチも無いくらいだと思うんだけど……多分直径30センチ超え。しかも、それを複数。
「おいおい、どれだけデカいのを買って来たんだよ」
呆れたような俺の言葉に、ハスフェルとギイが揃って振り返る。
「いや、一番大きなサイズを頼んだら、これが出て来たんだよな。それで、せっかく用意してくれたんだからと思ってありったけ買って来たんだ」
「ちなみに全部で三種類あって、それぞれ五個ずつあるぞ」
「カットケーキを買ってくる感覚で、デコレーションケーキをまとめ買いしてるんじゃねえよ!」
ドヤ顔で宣言するギイに思わず真顔でそう突っ込んだけど、俺は悪くないよな?
「うわあ、これはすごい!」
「うわあ、これってもしかして……」
「おお、デコレーションケーキに種類がある!」
草原エルフ三兄弟が、そりゃあもうキラッキラに目を輝かせながら木箱から取り出して並べられたデコレーションケーキを見つめている。
もちろんリナさんとアルデアさん、それからランドルさんも同じくキラッキラ状態だし、ギルドマスター達や職人さん達もケーキを見るなり大はしゃぎして、揃って拍手なんかしているよ。
「さてと、じゃあ切るけど……これを八等分して、一人一切れ食える?」
「もちろんいただきます!」
リナさん一家とランドルさん、ギルドマスターに職人さん達の答えが綺麗に重なる。ハスフェルとギイも笑って手なんか上げてるし。
「分かった。じゃあどれが食いたい? 希望者に合わせて切るからさ」
そう言いながら長めのナイフを取り出し鍋に水を入れてお湯を沸かし始める。生クリームのケーキを切る時は、ナイフを温めながら切るのが良いんだよな。
ちなみに並んでいるデコレーションケーキは右から真っ白な生クリームと真っ赤なイチゴがぎっしりと飾られた正統派デコレーションケーキ。
冷静に考えてこの時期のバイゼンに新鮮なイチゴは無いはずだから、時間遅延の収納袋で春からわざわざ保管していたか、あるいは温室みたいな物を作って時期をずらして無理矢理イチゴを栽培しているって事だよな。
どちらもそれなりに資金が必要なので、多分シンプルなデコレーションケーキだけどそれなりの値段だと思う。
二個目は多分、生チョコケーキ。いわば生クリームの中にチョコを混ぜてある薄茶色の生チョコクリームのデコレーションケーキ。飾りはイチゴとメロンと栗の甘露煮。これもなかなかに華やかな色合いだ。
三つ目はツヤッツヤのチョコレートコーティングがされた真っ黒な大人のデコレーションケーキ。これには刻んだイチゴだけじゃあなくて、紫色のブルーベリーと粒々の真っ赤な果物が山盛りに乗せられている。あの赤いのって何だっけあれ……ああ、確かラズベリーだ。
果物の名前を思い出したところで、お湯が沸いたので一旦火を止める。
「で、どれにしますか?」
皆、ケーキを前にそれはそれは真剣に考えているけど、誰も答えない。
「じゃあ、とりあえず一つずつは切るから、その間に決めてくれよな」
笑いながらそう言うと、ナイフを温めた俺はまずは一つ目の生クリームのデコレーションケーキを八等分にカットし始めたのだった。